武田 淳也 理事長の独自取材記事
整形外科 スポーツ・栄養クリニック 福岡
(福岡市中央区/薬院駅)
最終更新日:2024/02/09
西鉄天神大牟田線薬院駅から徒歩2分、城南線沿いの城東橋交差点のすぐ近くに「整形外科 スポーツ・栄養クリニック 福岡」がある。MRIや、超音波画像診断装置を備え、幅広い整形外科領域の治療が可能で、中でもピラティスのメソッドを取り入れたリハビリテーションが特徴的だ。日本ではマット上での運動の印象の強いピラティスだが、アメリカでは専用器具を使ったモーターコントロール(運動制御)トレーニングとして普及している。武田淳也理事長は「モーターコントロールを向上し体幹バランスを整えて正しい姿勢や体の動かし方を身につけることは、機能改善に向けた有用なアプローチ」と強調する。今回のインタビューでは、福岡と東京の地から新たなリハビリテーションの普及・イノベーションに取り組む武田理事長に話を聞いた。
(取材日2020年9月9日)
ピラティスのメソッドを取り入れたリハビリを提供
開院にあたり、薬院という場所を選んだ理由を教えてください。
当院は2005年に、整形外科を主標榜科とするクリニックとして開院しました。最初は私と妻、そして2人のスタッフでスタート。ここ薬院は、西鉄と地下鉄七隈線がクロスする交通の要衝です。当院は病院と比べても遜色のない充実した検査機器を備え、また特徴的なリハビリを行うため、遠方からの患者さんも通院しやすいというのが、場所選びの決め手となりました。現在では県外から近隣の方まで幅広い世代の方に来院いただいています。また東京の代官山にもクリニックを開き、多くの方にピラティスのメソッドを取り入れたリハビリを提供しています。
ピラティスとはどのようなものですか?
もともとピラティスは、負傷者のリハビリとして開発されたメソッドがベースになっています。そのため例えばアメリカにおいては、整形外科で提供するリハビリの一環として活用されています。当院にも専用器具があり、それらを使って体の動きをサポートしながら行うものも多く、理学療法士・作業療法士を中心として、当院では一般的な理学療法と組み合わせて提供しています。患者さんの体の動きを専用器具で補うため負担が少なく、また個々に応じてカスタマイズしたプログラムで、効率的に正しい姿勢と体の動かし方を身につけていくことができます。理学療法士や作業療法士の国家資格を持ち、ピラティスの専門知識を身につけたスタッフがマンツーマンで指導するため、医学的な見地から適切な運動療法を受けることが可能です。
正しい姿勢や体の動かし方を身につけることには、どういったメリットがありますか?
私たちが姿勢や体の動かし方を大切にしているのには理由があります。車に例えると、腰痛や関節痛は急発進・急停車などで一部に過度な力がかかってしまい、部品がすり減ったり壊れたりした状態。エンジンのパワーアップに相当する筋力トレーニング、サスペンションを良くするストレッチだけでは根本的な解決にはつながりません。原因を取り除くためには、過度な力や負担をかけない適切な車の運転技術を身につけることが重要です。それが正しい姿勢であり、正しい体の動かし方を身につけるということです。ピラティスの根本はコントロロジー(コントロール学)にあり、自分自身の体の姿勢や動きをはじめとするボディー、そしてマインド、スピリットを上手にコントロールする技術を学べるのです。
充実した検査機器とリハビリで幅広い症状に対応
ピラティスのメソッドを取り入れたリハビリは、どんなときに行いますか?
腰痛や関節痛の緩和のほか、生活習慣病の改善など、整形外科疾患に限らず幅広い目的で用います。近年では中高年女性に多い尿漏れ、頻尿に対するアプローチとしても注目されています。体幹バランスを整え、インナーマッスルを使うトレーニングが、骨盤底筋のコントロールに役立つと考えられるのです。加えてお年寄りやアスリートの方で、体の故障や治療に共通点があることにも着目。高齢になってくると、長年体を酷使してきたことが原因で、アスリートと同様に骨や関節にゆがみや痛みが発生しやすくなります。どちらも当院で行うリハビリにより、正しい姿勢と体の動かし方を身につけていただき、改善をめざしていきます。
リハビリの流れをお聞かせください。
まず整形外科の医師が診察し、症状や生活習慣などから問題の原因を総合的に診断します。必要に応じてエックス線検査、MRI検査も完備しているためこれらによる精密検査を行い、歩き方などを撮影した映像にて姿勢や体の動きの癖をチェック。加えて骨密度検査で骨の状態を確認し、骨折リスクを避けつつ運動療法を指導します。ピラティスの専門知識を持った理学療法士や作業療法士のスタッフがリハビリを行うのですが、リハビリの前後には全身の状態を詳細に評価し、経過をしっかりとチェックしていきます。また生活習慣病の方には体組成を分析する機器で測定したデータをもとに管理栄養士による栄養指導も実施し、院内にあるキッチンで開催している料理教室などで実践的なレクチャーも行います。
どんな方が受診されていますか?
近隣にお住まいのお子さんからお年寄り、あるいはアスリートの方に利用していただいています。東京のクリニックも同様の取り組みをしていますが、さらに徳島大学の西良浩一教授と協力し腰の術後のアスリートのリハビリとコンディショニングにも取り組んでいます。福岡では通院が困難になった患者さんの要望に応える形でデイケア施設を併設し、居宅介護支援を行う施設として、ケアマネジャーも在籍しています。デイケアにおいてもピラティスのメソッドを活用したリハビリを行い、根本的な症状の改善をめざしています。加えてMRIを備えており、骨関節領域のがんや半月板の断裂、脊椎の疾患などのより精密な診断が可能で、Cアーム型のエックス線TVシステムもあるため骨折時の整復にも対応。また骨粗しょう症の精密検診医療機関でもありますので、気になる方は一度ご相談ください。
健康寿命を延ばすため、ピラティスをもっと多くの人へ
ピラティスを学んだきっかけを教えてください。
大学病院では整形外科が専門でしたが、スポーツ医学と健康づくりに興味があり、出身大学のある福岡では保健福祉行政に携わったことも。その後、本格的にスポーツ医学を学ぶため、1999年にアメリカでその分野で世界的に知られる病院に臨床を中心に学ぶために留学しました。渡米して、最初に訪問した病院が、現地のアスリートのメディカルサポートをしている病院で、スポーツ医学とダンス医学を専門とする医師に師事しました。そこで偶然に出会ったのがピラティス。ダンサーやアスリートに向けてスポーツ障害の予防とパフォーマンス向上を目的に指導されているのを目にし、その素晴らしさを実感しました。それから何度もアメリカへと渡り、リハビリのためのピラティスの指導法を身につけ、当院の開設に至りました。
ピラティスの魅力とは何ですか?
整形外科に訪れるほとんどの方は手術が不要な、保存療法を提供すべき患者さんです。運動器の疾患の症状は骨などの構造の不具合と機能面の問題などによって生じます。構造を変える必要がある場合は手術で解決を図りますが、機能に障害がある場合は、内服薬や外用薬、電気や超音波を使った物理療法などの保存的な治療が一般的には知られていますが、実はこれらはあくまで補助的なもので、ベースとしてはやはり、リハビリで正しい姿勢と体の使い方を身につけることが重要です。ピラティスの専用器具を活用することで、年齢や体力に関係なくトレーニングができ、筋力や柔軟性が低下してくる中高年の方でも無理なく取り組めると思います。そして、ピラティスのメソッドを活用して体の動きを正しくコントロールできれば、機能改善ひいては再発防止にもつながります。
今後の目標は?
適切なリハビリの提供はもちろん、多くの方の健康寿命を延ばすためのサポートができればと思います。一方で、もう少しリハビリが必要だけれど医療保険制度の関係で受診できない、いわゆる「リハビリ難民」がいることも事実です。現在、そうした方にも気軽にリハビリを提供できる仕組みづくりにも当院の関連施設を通じて取り組んでいます。最近では生活習慣病やメタボリック症候群に、ロコモティブ症候群が影響していることがわかり、30・40代はもちろんのこと子どもの時からの健康づくりがさらに重要と言われています。当院では一般の方向けの「体の使い方」に関する講座も開いているので、健康寿命を延ばすためにもぜひ受講していただきたいと思います。