時任修一院長の独自取材記事

ハロー歯科クリニック

(鹿児島市／荒田八幡駅)

最終更新日：2021/10/12

鹿児島市下荒田の住宅街にあり、今年で開業21年目を迎える「ハロー歯科クリニック」。時任修一院長は「健康を守り育てる歯科医療」を信条に、地域住民の歯と口腔内の健康を見守る。特徴的なのは口臭の外来に注力していること。病気が原因で起こる口臭だけでなく、健康な人にも起きる生理的な口臭にも対応している。口臭は精神的な問題に発展することもあり、時任院長は「私のできることは可能な限りして差し上げたい」と言葉に力を込める。趣味は大学時代から始めたというバイオリン演奏。仲間とともに定期的に演奏会を開くほどで、公私ともに充実している様子がうかがえた。穏やかでどんな質問にもわかりやすく丁寧に話してくれる時任院長に、診療方針や患者への思いなどを聞いた。

（取材日2021年3月24日）

生理的口臭にも丁寧に対応。精神的ケアも大切に
虫歯予防には唾液測定。原因を見極め適切にアドバイス
歯は健康の入り口。治療を通して全身の健康をサポート

生理的口臭にも丁寧に対応。精神的ケアも大切に

歯科医師をめざしたきっかけを教えてください。

小さい時、歯医者さんが嫌いだったんですよ。当時は「痛みの少ない治療」という考え方はあまりなかったので痛くて泣き叫ぶ子が多く、私もその1人（笑）。高校生になるまで歯科医院に行けませんでした。しかし、大学受験にあたって考える中で、歯科治療がいかに怖いものかわかっているからこそ、私と同じような人に適切なアプローチができるのではないかと思い、歯学部を選んだんです。歯科医師になり、治療が怖いとおっしゃる患者さんには「私もそうだったんですよ」とお話ししています。また、私自身は何をされるかわからないから怖かったのではないかと思うので、診療の際は「風をかけますね」「麻酔をしますよ」など、次に何をするのかきちんとお伝えするよう心がけていますね。

口臭のケアに力を注いでいらっしゃるそうですね。

開業した頃、私の同級生が「口臭が気になる」と相談に来たんです。当時、口臭は歯周病や虫歯がある人だけの症状と考えられていたのですが、病気がなくても口臭の症状は出るんですよね。朝起きた時、おなかが空いた時、緊張している時など、誰でも大なり小なり口臭はあるもの。気になり始めるとナーバスになって、「人と会うのが不安だ」「会話しにくい」と深く思い悩む方もいらっしゃいます。そこで、私は口臭の専門家である本田俊一先生のもとで学んで、口臭の外来を始めました。歯周病などによる病的口臭だけでなく、健康な人にも発生する生理的口臭の相談にも応じています。

具体的には、どのような対応を行っているのですか？

まず、生活調査票に1週間の食事や口臭の状態などを書いていただきます。歯周病が原因で口臭のある方は、ご自分でずっと臭いを嗅いでいるので気にならない方が多いのですが、生理的口臭の方は口臭があるときとないときがあるんです。初診では、生活調査票をもとに口臭測定や精密検査、診断、カウンセリングなどを行います。時間は2～3時間。生活習慣などを踏まえてお一人お一人アドバイスをさせていただきます。また、口臭の改善に関してポイントとなるのは唾液です。口腔内が乾燥すると口臭が出やすくなりますので、よく噛んで唾液を出すよう心がけること。唾液の主成分となる水分の補給も大切です。お茶やコーヒー、紅茶だと利尿作用がありますから、お水が理想的ですね。現在、新型コロナウイルス感染症流行のため新規受付は停止し、相談のみ受けつけていますが、再開する際は当院ホームページなどでお知らせする予定です。

虫歯予防には唾液測定。原因を見極め適切にアドバイス

虫歯予防や治療についてはどのようなお考えで行われていますか。

虫歯は甘い物をたくさん食べるからできるわけではなく、口腔内の細菌の種類や量、飲食の頻度や時間、唾液の性質や量などさまざまな要因によって発症します。お子さんの虫歯で気をつけていただきたいのは、虫歯菌を移さないこと。親と同じスプーンで食べさせるなどしたときに、口の中に虫歯菌が入ってしまいます。3～4歳までに感染しなければ、将来、虫歯にも歯周病にもなりにくくなる可能性が期待できますので、これは親から子へのとても素晴らしいプレゼントだと思うんですよ。予防には唾液測定が有用です。口腔内の細菌の種類や量、唾液の性質や量などから虫歯になりやすいかどうかがわかるため、適切なアドバイスが可能になります。治療については、歯は削れば削るほど寿命が短くなりますので、できるだけ削らないよう心がけています。

歯周病の治療についてはいかがでしょうか。

歯周病で怖いのは出血です。炎症を起こした歯茎の潰瘍面から出血するのですが、そうすると口の中にいる歯周病菌や虫歯菌が血管に直接入って全身を巡り、認知症や糖尿病などさまざまな病気の要因になることがあるのです。逆にいうと、口の中をきれいにしておけば、ひいてはほかの病気の予防や改善につながるとも考えられます。「メタボリックドミノ」という言葉がありますが、これは生活習慣病がドミノのようにいろいろな病気につながっていくことを示し、ドミノが倒れなければ健康を維持できるという考え方です。ドミノの最上流は虫歯や歯周病と捉え、健康の入り口である口腔をしっかり守って、全身の健康につなげていきたいと考えています。

診療時に心がけていることを教えてください。

可能な限りの感染症対策をすることですね。今では当たり前のことですが、当院では開業した20年ほど前から、口の中に入る物、例えば歯を削るタービンやドリルは患者さんごとに滅菌、手袋も患者さんごとに交換しています。私は大学卒業後、口腔外科講座に入局し、手術をしていたこともあり、感染症がいかに恐ろしいものかわかっていたんです。「自分がされたくない治療はしたくない」という気持ちで、高圧蒸気滅菌器や口腔外バキュームなども備えてしっかり対策を講じています。もちろん新型コロナウイルスについてもきちんと考慮して、環境を整えています。

歯は健康の入り口。治療を通して全身の健康をサポート

口腔のセルフケアのポイントを教えていただけますか。

歯磨きは、その方のお口の状態や目的によっても違いますが、口臭を気にされる方は、朝起きた時と寝る前に磨くのがお勧めです。細菌は就寝中に増えて朝一番が最も多くなりますので、寝る前に磨いて細菌を少なくして、起床時に就寝中に増えた細菌を取り除くのが効率的です。朝は歯を磨かずにご飯を食べると細菌が体の中に入ってしまいますから、朝食前のほうがいいですね。虫歯予防にはフッ素が有用です。フッ素の入った歯磨き粉を使う場合は、フッ素を口の中に長くとどめるためにゆすぎは1回が理想。泡立ちが気になる方は低発泡の歯磨き粉がお勧めです。日中はキシリトールが配合されたガムを噛みましょう。唾液には口の中をきれいにする自浄作用があります。食後の口腔内は酸性になり、歯が溶けやすい状態になるのですが、ガムを噛むと唾液がたくさん出て中性に戻りやすくなるので、虫歯予防につながります。

日々お忙しいと思いますが、休日はどのように過ごされていますか。

バイオリン演奏が趣味で、休みになるとバイオリンを弾いています。大学のサークルではまってしまいまして、大学時代はバイオリンに夢中でした。卒業後は、大学時代の有志で作ったオーケストラで演奏会を開いたり、近年では、カルテット（弦楽四重奏団）を結成して学校や子ども食堂で演奏したりしています。オーケストラの演奏会は入場無料にしてどなたでも来てくださいというスタンスで、自分たちが演奏したい曲を聴いていただいています。練習では指揮者の方に怒られることもありますが（笑）、それでもやはり楽しいですね。

今後の展望をお願いします。

先ほどもお話ししたように、口の健康は全身の健康と深く関わっていて、口は健康の入り口といえます。私の目標は、口の中を通して患者さんの全身の健康をサポートすること。そのために、歯周病治療、根管治療、分子栄養学など、あらゆる分野の勉強をしています。最近は新型コロナウイルスの影響で勉強会になかなか行けないのが残念ですが、リモート参加で学び続けています。これからも精進して、皆さんの健康のお役に立てるよう努めてまいります。