全国のドクター9,289人の想いを取材
クリニック・病院 158,664件の情報を掲載(2024年4月16日現在)

  1. TOP
  2. 愛知県
  3. 小牧市
  4. 岩倉駅
  5. 医療法人啓生会 小木南クリニック
  6. 野村 知秀 院長

野村 知秀 院長の独自取材記事

小木南クリニック

(小牧市/岩倉駅)

最終更新日:2021/10/12

野村知秀院長 小木南クリニック main

小牧市南西部に位置する「小木南クリニック」は2003年開設の腎臓病・糖尿病治療を得意とする診療所で、病床数36床の人工透析施設を擁す。小牧市民病院で10年にわたり腎臓病・糖尿病治療に従事した野村知秀院長が「こんな施設で治療を受けたい」とつくった建物は、窓が多くとても明るい雰囲気だ。来院する透析患者は高齢化が進んでいるため、無料の送迎サービス提供や、通院できなくなった場合は隣の「小木こどもファミリークリニック」での入院も可能にした。腎臓病・糖尿病はその発症から末期腎不全までをトータルケア。ただし、腎不全で透析導入前から同院にかかり血糖コントロールを続けた患者で、透析導入に至った人はゼロだという。そんな野村院長の診療方針や、クリニック構成に込めた思いなどを聞いた。

(取材日2017年10月19日)

1年の10分の1を過ごす透析施設を、少しでも快適に

先生はなぜ医師になったのですか? また最初は麻酔科に入局された理由は何ですか?

野村知秀院長 小木南クリニック1

父が開業医だったことが理由です。医師の息子というのは何となくそれが当たり前で、他の職業が思いつかないんですね。小さな時から父の背中を見ていて、患者さんのために働く姿に自然と自分を重ね合わせていたんだと思います。4人兄弟のうち兄と私の2人が医師になりました。医学部を卒業して名古屋市立大学の麻酔科に入局したのは、総合的にいろいろなことがやりたかったからです。名市大の麻酔科は、ICU(集中治療室)が主で、高次救急医療と全身管理を専門に受け持ちます。かなり重症の患者さんを診て、高度な全身管理のノウハウが身に付きました。この経験は、今もたいへん役に立っています。

麻酔科から腎臓内科へ転換し、このクリニックを開くまでの経緯を教えてください。

麻酔科に5〜6年勤務した後、当時既に、兄が名古屋市内で透析専門のクリニックを開業していて、興味を持ったのです。腎不全に陥ってしまった患者さんも、人工透析によって何十年も生きることができる。すごいと思いました。人工臓器はいまだにこの「腎臓」しかありません。週3回、4時間、ここへ来て寝ていなければならない、食事は制限され、水も自由に飲めない。生活の質は普通の人に比べれば確かに落ちてしまいますが、定期的に検査を受けることで他の病気があっても早期発見・早期治療ができ、長生きする人も多いかもしれません。それで小牧市民病院の腎臓内科で10年間勤めた後、「小牧クリニック」という透析専門のクリニックにて5年間勤務して、「自分が治療を受けたくなるような施設をつくろう」とこのクリニックを開業しました。

ご自分が治療を受けたくなるようなクリニックとはどんなクリニックだったのですか?

野村知秀院長 小木南クリニック2

まず一番大事にしたのは「快適さ」です。なぜなら、患者さんは1年の10分の1をここで過ごすのです。もちろんできることには限度がありますが、可能な限り、明るくてゆったりした空間をめざしました。次に送迎サービスですね。運転士を雇って、費用は当院持ちで、患者さんのご自宅まで送迎しています。透析患者さんの高齢化が進んでいて、通院できない人が増えているのです。一方で家族の介護力も低くなっています。働いていたり、子どもの世話をしていたり、老々介護だったり。患者さんは比較的近くにお住まいの方が多いので時間はそれほどかかりませんし、送り迎えが難しいという場合にも便利かと思います。

通院できなくなる透析患者のために

最初は眼科もあったそうですね。

野村知秀院長 小木南クリニック3

小木南クリニックは、もともとは透析が主体のクリニックでした。眼科は最初から週に一度、眼科の先生に来ていただいて開いていました。糖尿病の三大合併症に「糖尿病性網膜症」があり、放っておけば失明に至るため、糖尿病の患者さんは注意が必要なのですが、なかなか眼科を受診することがない。ここに併設しておけば血糖コントロールとともにケアできると考えたのです。別に、ご縁あって小児科を開設したいという先生が現れ、眼科診療日以外の日に同じ場所で小児科の外来を開いたのですが、そちらの患者さんが増えたため眼科を閉じました。小児科はさらに拡大し、3年ほど前、隣に小木こどもファミリークリニックを開業しました。1階には一般の小児科と発達の外来、小児デイケアという発達障害のお子さんを放課後に預かる施設、病児保育施設があります。2階は介護保険サービスの通所リハビリを行うデイケアセンター、3階は療養病床主体の入院施設です。

どのような経緯で入院施設をつくったのですか?

先ほど申し上げたように、透析患者さんが高齢化して通院できない人が増えてきており、そのような人たちのうち、送迎サービスでは間に合わなくなった場合の受け皿を作りたかったのです。介護老人保健施設や特別養護老人ホームにはなかなか入所できませんし、透析を受けながら一般の老人ホームに入ることは、サービス提供者の負担も大きくなるため難しく、行き場がないんですね。需要は高く、開院して1年ほどで満床になり、在院日数は年単位と長くなっています。一方ですぐ近くに特養があるので、そちらに移っていただいて送迎しているケースはあります。病床は他に、外来の患者さんの容態が思わしくないときに、2〜3日様子を見るために入院していただくこともあります。

透析患者さんは増えているのですか? なぜ高齢化しているのでしょう。

野村知秀院長 小木南クリニック4

透析患者さんの平均年齢は今、おそらく70歳前後だと思います。糖尿病以外の腎臓の病気から透析に至る人の数は、腎炎の管理がよくなったことで減りました。糖尿病性腎症で透析に至る人の割合も、糖尿病患者さんの受診率が上がったことで減ってはいるのですが、糖尿病の患者数自体は増えているために、依然として一定の人数が透析に至っています。糖尿病自体の発症が40〜50代、悪化して透析に至るまではある程度時間がかかるため、新規に透析を導入する年齢が60代後半、さらに透析によりお元気に生活できるため、高齢化していますね。

リハビリテーション施設はどんな方が利用しているのですか?

透析患者さんは「サルコペニア」という全身の筋肉が減っていく状態になるリスクが高いと言われています。これは年を取ると普通の人でも起こり得るのですが、腎臓の働きが低下することで、筋力低下が早いのです。そのため、適切なリハビリテーション指導で筋トレなどを行っていただくためにこちらのリハビリ施設を設けています。隣のデイケアに関しては、地域の介護サービス事業者としてリハビリを提供したり、入院患者さんのリハビリを行っています。職員が熱心で、地域での評判も良いですよ。

「通院をやめる」という糖尿病最大のリスクを回避する

透析に至る前の糖尿病患者さんも診ていらっしゃるんですよね。

野村知秀院長 小木南クリニック5

もちろんです。ただ、実は、当院で血糖管理している糖尿病患者さんで透析に至った人はいないんです。糖尿病を悪化させないために一番大事なことは、とにかく通院を続けること。やめてしまうことが一番のリスクです。透析に至ってしまった人の話を聞くと、「医師に怒られて嫌になってやめた」という人が結構多いものです。だから血糖値を検査して、どんなに結果が悪くても絶対に患者さんを責めたりしません。患者さんにもいろいろ事情があるので、それをよく聞いて「ではこうしましょう」「こうしてみて1ヵ月様子を見ましょう」と提案して一緒に乗り越えていきます。

小児科を併設した理由についてもお伺いします。

熱心な人に出会うと応援したくなってしまうんです。小木こどもファミリークリニックは一般の小児科の他、発達の外来に特に力を入れていて、先生が熱心に取り組んでいます。この辺りでは珍しい小児科デイケアも開設していて、発達障害のあるお子さんを1日10人くらい受け入れています。登録利用者は90人ほどいますね。他に病児保育も定員は4人と少ないですが、開設しています。医師をはじめ看護師、心理士、保育士などスタッフも優秀で、地域のニーズに多少なりともお応えできているかなと思います。

最後に、診療において大事にしていることを教えてください。

野村知秀院長 小木南クリニック6

無駄な検査は極力しないことと、トータルサポートを心がけています。また、透析の患者さんは週3回、糖尿病の患者さんは月1回は必ずいらっしゃいます。すっかり顔見知りになるので、いろいろな話をします。家庭の悩みだったりよもやま話だったり、なるべくちゃんと聞いてあげたいと思っていますね。

Access