小笹 貴夫 理事長の独自取材記事
おざさ医院
(茅ヶ崎市/辻堂駅)
最終更新日:2025/07/07

茅ヶ崎市菱沼、住宅と畑が混在するのんびりとした空気が流れているエリアにある「おざさ医院」。かわいらしいイラストが描かれた看板が目印で、院内は家庭的で温かな雰囲気が漂う。小笹貴夫(おざさ・たかお)理事長は2000年の開業時から地域に根差した医療と介護・福祉・健康事業で地域の人々を支えてきた人物で、柔和な笑顔と明るい人柄が多くの患者から愛されている。「病は気から」の「気」の部分にもアプローチするのも医療人として大切な役割、と語る小笹理事長に話を聞いた。
(取材日2024年12月25日)
幸せな毎日を送るための支援としての医療を展開
ご開業のきっかけを教えてください。

医学部を卒業後、研究者の道を志しオックスフォード大学へ留学し、その後大学に勤務しました。大学病院で先端医療の研究を続けていたのですが、当院の近くで福祉・介護施設を運営していた父から「仕事を手伝ってほしい」と頼まれたのがきっかけです。私は4人兄弟の末っ子で兄弟全員が医師。私も40歳を機に自分の人生は自分で決めようと開業を決意しました。地主さんとのご縁もあり、土地に呼ばれたかのように2000年12月に「おざさ医院」を開業、2003年には「医療法人社団オーエフシー おざさ医院」と改称し、介護事業も手がけるようになりました。医院での診療を続ける上で介護の必要性を強く感じ、事業展開の方向性を決めました。また、病を診るのではなく人を診る医療の重要性を痛感し、健康な状態から未病の段階、病気の段階、患者さんを取り巻く家族に至る幅広いサポートや、セルフケア・セルフメディケーションの啓発にも取り組んでいます。
幅広く健康を維持するということに関わっておられますね。
当院に通われている患者さん方は、生活習慣に起因する高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の方がほとんど。生活習慣病の患者さんは基本的に何らかのお薬を飲んでいらっしゃいますが、多くの方は本音では薬なんか飲みたくないと思っておられると思います。薬なしで健康が維持できればそんなに良いことはありませんよね。でも基本的に医師が関わるのは、何らかの症状が出たり、病気になったりしてから。一方で、私は未病の方へのアプローチにも取り組んでおります。健康の維持には、その方その方の生活に応じたアドバイスも大切な要になっていると思います。また、幸せとは、ということを考えた時、やはりそこには健康があるでしょう。患者さんだけでなく、地域の方々にもそうした意識で、ご自身の健康と向き合っていただければありがたいですね。
健康を維持するために必要なことは何でしょうか?

一例としてがんのお話をしましょう。がんの原因は遺伝子の異常といわれていることは皆さんご存じでしょう。ではなぜ遺伝子は異常を起こすのか。突然変異といわれていますが、突然とはどういうことなのでしょう。近年、その突然変異から起こる多くのがんの起因となるのが生活習慣だといわれています。では生活習慣を改善していければ、がんの予防につながるはずです。実際海外ではがん対策として、生活習慣を見直そうという動きが盛んです。それでは、具体的にどうやって改善すればよいのか。そこに私たちのような医療者が関わっていきながら、その「どうやって」の知識を広く地域の皆さんに伝えるべく、当院ではさまざまな取り組みをしています。
健康には考え方・生き方も大切
ものの考え方にもアプローチされていると聞きました。

昔から「病は気から」とよくいわれていますよね。「気」を良くする。つまりストレスを感じない、幸せであることが、病気にならないために大切なことではないでしょうか。私は幸せに生きる、幸せを感じる生き方や考え方もお伝えしています。まず意識していただきたいのが、人の良いところを見るということ。欠点や嫌なところばかり見つけると、相手もそうですが自分も嫌な気持ちになります。そして「言葉」。言葉というのは基本的に「勇気づけられるもの」です。ストレスをためないためには、自分の正直な思いを我慢せずに伝えることも大事なのですが、ストレートに伝えると時にトラブルになります。そこで伝え方のトレーニングが必要になってくるのです。伝える相手も不快にさせないような伝え方を身につけると、気分良く生きられると思います。
100歳を超えた患者も多いそうですね。
そうなんです。最高齢は105歳で、皆さんお元気ですよ。さすがに100歳を超えると何もかも自分でするのは難しくなります。周りの人、特にご家族には少なからず負担になります。診察の時はご家族がご一緒にいらっしゃいますので、私は必ずご家族のことも診るようにしています。そしてその際、ご家族や介護者の方がされていることがいかにすごいことか、私が申し上げるのもせんえつですが、認めてねぎらうようにしています。先ほど、自分の思いを正直にうまく伝えることが大事と言いましたが、認知症の方は、自分の思ったままを口に出されることも多いですよね。周囲の方のご苦労もさぞ多いことと思いますので、私はその方とそのご家族から学んだことをお伝えするようにしているんです。
先生はコミュニティーも大切にしておられますね。

人にはほっとできる場所、居場所が必要なのだと思います。地域の中で拠点のようなものがつくりたくて、クリニックの運営とは別に、個人的な取り組みとしてコミュニティースペースも開きました。学校でも家でも職場でもないところに居場所があってもいいでしょう。抱える事情を話さなくてもいい。そんな居心地の良い場所が地域にあったほうが、暮らしやすいのではないかと思っているんです。町内会のような地域の組織ももちろん必要です。でも、まったく違う視点から地域を支える居場所も良いものだと思うのです。自分の参加したコミュニティーを好きになってしまえたら良いと思います。そして1つではなく、複数のコミュニティーに参加できると良いですね。そんな人々が多くなっていくといいなと思っています。
自分の意思で幸せな毎日を選んで
院長がこうした考えに至られたきっかけは?

当院では100歳を超える患者さんが出てきました。数年前からは毎年どなたかの100歳をお祝いする機会があるほどです。他方で、残念ながら看取りの機会もあります。そうした機会にふれるたび、幸せな最期とは何なのかを考えるようになりました。本人はもちろん、残される周囲にも「あんな最期がいいわ」と言われるような方は、やはり日頃から幸せな毎日を過ごされている。一瞬、一瞬の幸せを大切にしていれば、たとえ急な病による突然死であっても受け入れられやすくなるのではと思うのです。死への恐怖心や生に対する執着などから解き放たれ、自然に任せる形で逝くためには、死に直面する前から自分の意思ですべてのことを選ぶことが重要だと考えています。選択肢は複数あり、正解も1つではありません。幸せにとって大切なのはご自身が自ら選択しているということに気づいたことからなんです。
患者さんと関わる上で心がけていることは?
患者さんに限らず、スタッフや家族を含めてすべての人との関わりの中で心がけているのは「NOは不要」ということです。例えば、体に差し障るからタバコをやめてほしい患者さんにも、「タバコはやめてください」と言うことはしないようにしています。ご自身からやめたくなるよう、気づきを得られるようにじっくりとお話しするようにしているのです。私たちは時折1つの問いに対して答えが1つだけしかないように錯覚していることがありますが、人生において実際答えは1つではありません。選択によって答えは変わってくるのです。だからこそ、各々のために必要なものを選択していただきたいと思っています。
読者に向けて、ひと言メッセージをお願いします。

幸せになりたい、幸せな最期を迎えたい、と願わない方はいらっしゃらないはず。それを実現できるかどうかは、ご自身の気づきにかかっていると私は思っています。自分自身の意思で人生を選択し、選び取った「今」の一瞬の幸せを噛みしめることができると、本当の意味で幸せな人生を送れるのではないでしょうか。健康も幸せも、皆さんお一人お一人の意思にかかっているのです。当院ではそうした皆さんのお手伝いをさせていただいています。一緒にあなた本来の人生を歩みましょう。