患者を苦しみから解き放つ
ペインクリニックと緩和ケアとは
千里ペインクリニック
(豊中市/少路駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
ペイン、つまり痛みに対して治療やケアを専門に行う「ペインクリニック」、がん患者などの苦痛を和らげる「緩和ケア」。ともに症状や治療からくる痛みや苦しみ、心理的不安などから患者を解放し、生活をサポートするというその役割や効果に、近年世間の注目が集まっている。とはいえ、どのようなことをするのか、どのような改善が期待できるのか、あまり知らないという人が多いのではないだろうか。今回は、痛みの治療と緩和ケアを専門に北摂の地で意欲的な活動を続ける「千里ペインクリニック」を訪問。松永美佳子理事長にペインクリニックと緩和ケアの初歩的な知識や同院での取り組みなどについて詳しく聞いてみた。
(取材日2018年4月12日)
目次
患者の立場に立って、その苦しみを心身両面からサポートすること
- Qペインクリニックとは何ですか?
-
A
外科や内科などの壁を越えて、すべての痛みに関して診断と治療を行うことを専門とする診療科です。実際には、腰や首のヘルニアや狭窄症などの脊椎疾患、あるいは変形性頸椎症や腰椎症など背骨の変形による痛みが約6割で、帯状疱疹(ほうしん)や頭痛・肩こり、変形性膝関節症などによる痛みが約3割です。検査や診断を行って投薬するところまでは整形外科とほとんど同じですが、整形外科のように手術を行わず、保存的にアプローチしていくところがペインクリニックの特徴です。手術をしないで治る方はもちろんですが、何らかの理由で手術が受けられない方、手術まで激しい痛みを緩和したい方、手術後に痛みが残った方なども対象となります。
- Q具体的には、どのような治療やケアを行うのでしょうか?
-
A
代表的なのは神経ブロック療法という方法で、注射薬を用いるのが一般的です。薬によって血流を改善して神経の損傷を治し、神経が治れば痛みが緩和されるというメカニズムです。疾患の種類や場所によっては脊髄近くに注射するなど専門的な技術が要求されますので、当院では優秀なエックス線の透視装置やエコー装置を用い、より安全かつ正確に行うことを心がけています。もう一つのポイントとして、痛みというものには精神的な要因がかなり関係してきますから、やはりメンタルを大切にするということですね。これらにリハビリテーションを加え、患者さんのQOL(生活の質)を少しでも上げていくことが課題です。
- Q緩和ケアについて教えてください。
-
A
一般的にはがん患者さんを対象に、その苦痛を取り除いていくことを意味します。「緩和ケアは末期に受けるもので、これを言われたら最後」という誤解があるようですが、決してそのようなことはありません。抗がん剤治療や手術、放射線治療など、初期の治療中から取り入れて体調を整えることで、がんそのものの苦しみ、抗がん剤の副作用など治療に対する苦しみを緩和することができますし、治療がより有効に行える可能性が高まります。また、相談の窓口が増えることで患者さん本人やご家族の精神的負担がかなり軽減できることもポイントです。生きる意欲を高め、大切な命を守るためにも、早い段階からぜひご相談いただければと思います。
- Qこちらでは訪問診療による緩和ケアも行っていますね。
-
A
患者さんのご自宅で緩和ケアを提供することを当院では「在宅ホスピス」と呼び、2004年から2016年までの12年間で1000人以上のがん患者さんの訪問を行いました。訪問範囲はクリニックの半径5km圏内が原則ですが、この北摂地域はご高齢の方の独居や老老介護世帯が多く、今は病院も長期入院をさせない方針ですから、がんという病気を抱えたままご自宅に帰ってきている方がたくさんおられます。そうした方に安心して自分らしい生活を維持していただくことを目的に、心身両面からサポートするのが私たちの訪問診療です。当院では担当医師と看護師がチームを組み、医師が週1回、看護師が週3回という訪問回数を基本にしています。
- Qクリニック併設の入居施設について教えてください。
-
A
当院の2階と3階には、ペインクリニックや緩和ケア、介護などを希望される方を対象とした入居施設「アマニカス」を併設しています。18室あるすべてが個室で、当院の専門的な医療と看護を24時間・365日体制で受けられます。皆さん、元気なうちは訪問診療でもいいのですが、次第に寝込むようになってがんが急変したり、苦痛が伴ったりしだすと、ご高齢同士の介護ではとても対応できません。そうした方に入居していただければ、訪問診療と同じスタッフが同じ治療方針のもとで医療や看護を提供することができますし、症状が落ち着けばご自宅に戻り、また訪問診療を続けることも可能です。当院が初めての方からのご相談も受けつけています。