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松永 美佳子 理事長の独自取材記事

千里ペインクリニック

(豊中市/少路駅)

最終更新日:2019/08/28

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大阪モノレール線・少路駅を出て西へ向かうとすぐ右手に、南欧風の外観、色とりどりの草花であふれた「千里ペインクリニック」が見える。痛みの治療に特化したペインクリニックと、訪問診療でのがん緩和ケアという2つの柱をもつ同クリニックでは、患者の痛みを軽減し「自分らしい生活」を送ってもらうことを目標に、独自性の高い取り組みを展開してきた。麻酔科の医師である松永美佳子理事長は、2004年に千里中央駅近くで開業し、2011年、少路に移転した。ペインクリニックと在宅での緩和ケアがまだ珍しかった時期から、理想の医療を実現すべく北摂を走り回り患者や家族と向き合い続けてきた。凛とした姿勢と爽やかな笑顔が印象的な理事長に、診療理念や理想とするがん緩和ケアについて聞いた。
(取材日2017年9月12日)

外来と訪問診療で、さまざまな痛みに寄り添う

明るい色合いの外観に、たくさんの草花が咲き誇るエントランスがとても印象的ですね。

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2011年に少路に移転し、この建物で診療を始めて、もうすぐ丸6年になります。私は1991年に大阪大学を卒業した後、府内の関連病院で勤務していました。がん緩和ケアを担当する機会が多かったのですが、当時の緩和ケアは病院内で、末期のがん患者さんに対してのみ行われるケアでした。何人もの患者さんを病院で看取るうちに次第に疑問を感じるようになり、「患者さんは自宅で過ごしていただき、医師やスタッフが訪問診療で緩和ケアをすれば、よりご自分らしく過ごせるのではないか」と強く思うようになったのです。そこで2004年に千里中央駅の近くに開業し、さらに私たちが理想とする緩和ケアに必要なスペースを確保するために、2011年にこちらへ移転しました。

診療内容について教えてください。

患者さんのご自宅に訪問して行う訪問診療での緩和ケアと、ペインクリニックが2つの大きな柱です。「ペイン」は英語で「痛み」という意味です。ペインクリニックでは、さまざまな病気から起こる痛みの原因を明らかにして、痛みを軽減する治療をしています。当クリニックでは、開業当初からこの2つを診療の柱にしていますが、どちらにおいても患者さんの痛みやつらさをしっかりと受け止め、解決方法を提案していきたいと考えています。

では、ペインクリニックの診療内容を教えてください。

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ペインクリニック科には、脊椎疾患による腰や下肢の痛み、首や上肢の痛み、肩こり、頭痛、五十肩、膝関節の痛み、また、圧迫骨折や帯状疱疹による痛みでお困りの患者さんなどが受診されています。ご高齢の患者さんが比較的多いのですが、最近では、椎間板ヘルニアや、現代病ともいえる頭痛や肩こりで受診される若い世代も結構増えていますね。診察では、お話をしっかりお聞きしながら検査で痛みの原因を明らかにして、痛みに関わっている神経の周りや神経内に、局所麻酔薬を注入していきます。この方法は神経ブロック療法と呼ばれています。神経ブロック療法では痛みの伝達を抑えるだけでなく、神経の血流をよくして自然治癒力を高めることができます。また、痛みには心理的な要素も非常に大きいので、患者さんが置かれた状況や感じている痛みを私たちが理解して、気持ちに寄り添いながら診療することが大事だと考えています。

早期からのがん緩和ケアで自分らしい生活を

現在行われているがん緩和ケアについて、ご紹介ください。

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“がん緩和ケア”というと、“がんの末期に、治療法がなくなったときに行うケア”とイメージされがちで、残念に感じています。がん緩和ケアとは、がん治療のどの段階においても必要な医療のことです。例えば、診断に伴う精神的な苦痛、がんによる痛み、抗がん剤や放射線治療による副作用、術後の人工肛門の管理。このような、がんと診断された直後から生じる痛みや苦痛、問題を軽減する目的で適切な治療やケアを行うのが、本来のがん緩和ケアです。特に、ご自宅で過ごしているがん患者さんでは、日々の生活に即したこまやかなサポートがあることで、より自分らしい毎日を過ごせるようになります。開業した当初は、亡くなる直前のご相談がほとんどでしたが、最近では、治療と並行して何年もがん緩和ケアを受ける方もおられます。また、30~50代の若い方からご相談いただくようにもなりました。

しかし、訪問診療でがんの緩和ケアを受けることは、まだ一般的ではなさそうです。

「まだがんの治療をしたいから、緩和ケアは受けたくない」と考えがちですが、病院での治療と自宅での緩和ケアを併用することで、体調を整えてストレスの少ない生活を送りやすくなります。また、自宅に医療スタッフが来るのが苦手だという方もいますが、治療早期から緩和ケアを始めれば、患者さんやご家族とスタッフとの間で、連携や信頼関係を丁寧に築くことができます。しかし、早期から自宅でがん緩和ケアを受けられることが知られていないことが大きな課題です。どこでどんな緩和ケアが受けられるのかという情報が得られにくいので、患者さんはご自身で希望するスタイルの緩和ケアを探さなければなりません。国でも今後、抗がん剤の通院治療や自宅での看取りがより推進されると思いますので、早くから緩和ケアを利用しやすいような制度を整えてほしいですね。

患者さんが自宅で過ごせない場合には、どうすればよいのでしょうか。

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確かにこの北摂でも高齢化や核家族化が進み、高齢者の1人暮らしや老々介護が非常に多いです。また最近では長期間の入院が難しいので、がんに限らず大きな病気を抱えて自宅で過ごす方が増えています。そのような状況で病状が悪化すると、十分な介護ができず介護破綻を起こしてしまいますが、入院先やホスピスをすぐに見つけることは容易ではありません。そこで現在の場所に移転してからは、クリニックの上階にある「アマニカス」でのケアも可能になっています。

クリニックの上階にある「アマニカス」について教えてください。

「アマニカス」は当院と提携しており、緊急時にはそちらに入居していただき、普段から訪問していた医師や看護師が引き続き担当して、専門的な治療や看護を行えるようにしています。また、ご家族が泊まることもできます。当クリニックの訪問診療を受けているがん患者さんだけでなく、病院から退院するとき、さまざまな理由で自宅に帰れないがん患者さんも「アマニカス」に入居されます。また、ペインクリニックを受診された患者さんの中で、圧迫骨折や急性腰痛症(ぎっくり腰)、帯状疱疹などの強い痛みを、1階のペインクリニック科で集中的に治療するために「アマニカス」に入居される方も多いですね。24時間体制で、看護師による看護・介護も行っています。

患者目線でオーダーメイドの医療を実現したい

新たな挑戦を続けてこられた原動力はどこにありますか。

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何よりも、私たちが理想とする緩和ケアを受けられた患者さんやご家族から、「良かった」と喜んでいただけることですね。がんという病気の特性から看取らせていただくことも多く、つらい瞬間もあります。ですが、最期まで患者さんご自身やご家族が納得される、その人らしい生き方をお手伝いできたときには、こちらも本当に良かったと思えるのです。

忙しい毎日ですが、息抜きになることはありますか。

「自分も職員も一瞬で異空間に入って気分転換できれば」という思いから、クリニックの地下に本格的な音楽室をつくり、プロの演奏家を招いて月に1回ジャズライブを開催しています。もう80回ほど続いているんですよ。本格的なライブハウス仕様ですので音響も抜群ですし、演奏者も一流です。職員や賃貸マンションの入居者、地域の方にも喜んでもらっていますし、私自身の大きな楽しみになっています。また、ボランティアの方々にもよく演奏会を開いていただいています。

これからの抱負をお聞かせください。

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がんの症状や副作用はさまざまですし、繊細でしかも変化のスピードが早いという特徴があります。「その人らしく生活できる緩和ケア」を実現するためには、早期からの開始や信頼関係の構築が必要ですし、何よりも普段も緊急時も連続性のある医療を提供したいと考えて、スタッフとともに取り組んできました。今や、3人に1人はがんになる時代ですから、治療とその人らしい生活の両立は欠かせません。医療側の都合を優先するのではなく、それぞれの患者さんの立場になって考えたオーダーメイドの医療や看護を提供できるプロの集団でありたいと思いますし、オーダーメイドの医療の良さを追求し続けていきたいと思いますね。

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