鷺山 和幸 院長の独自取材記事
さぎやま泌尿器クリニック
(福岡市中央区/西鉄福岡(天神)駅)
最終更新日:2023/06/16
天神南にある「さぎやま泌尿器クリニック」は、福岡県済生会福岡総合病院に隣接。鷺山和幸院長は、外科勤務を経て泌尿器科へ焦点を絞り、先端の医療を学び続け実践してきた泌尿器科のスペシャリスト。現在でも先端医療の研究に関わるなど、温和な風貌の奥に医療への鋭い視線を持ち続けるドクターだ。人生のステージによって変化する男性の泌尿器疾患やホルモンの影響などに対し、専門的知見で診療。柔軟な姿勢で、患者のライフスタイルをなるべく損ねない治療を提案している。男性が気をつけるべき症状と、年代別の治療対応について、鷺山院長に詳しく解説してもらった。
(取材日2020年6月22日)
外科から泌尿器へ焦点を絞り、手腕を磨き続けた
泌尿器へ照準を絞られたのはなぜですか?
外科で4年勤務していた頃は若さもありがむしゃらに頑張っていたんですが、自分の立ち位置がわからない感じがあったんですね。それで、泌尿器科は外科の部門の一つであること、また勤務先でお世話になった院長からの勧めもあったことから、専門的に泌尿器を学ぼうと進路を定め直しました。医療はどんどん新しくなりますから、博士課程を修了した後はUCLAへ進んで1年間勉強し、その後も、ほかの国へどんどん出て新しい知識を学んできました。前立腺がんの手術が日本でほとんど行われていなかった頃に、アメリカで当時手術を開発されていたドクターに直接教えてもらいに出向き、その知識と技術を持ち帰ったりもして、専門性を高めていったんです。
豊富なご経験を、この天神にあるクリニックで生かしていらっしゃるのですね。
済生会福岡総合病院の隣というメリットも大きいですね。院内にエックス線などを置くと、設備の管理が大変になりますが、ここなら大きな機械を使った検査はお隣にお願いできる。私の専門はもともと膀胱がんと前立腺がんだったので、自分でできる検査はこちらで行いながら、お隣との連携を生かせると考えました。天神なら患者さまも訪れやすく、検査時の移動の負担も抑えながら本格的な診療を受けていただけると思います。当院のコンセプトは、前立腺(がん・肥大症)、性感染症、男性の更年期(LOH症候群)の3つです。原三信病院や大学病院、一昨年から保険適用になった重粒子の治療を行う九州国際重粒子線がん治療センター佐賀ハイマットとも連携していますので、当院で診察した後、専門的な検査や治療が必要と判断した場合は、症状に適した病院をご紹介して迅速に対応しています。
男性の更年期に対する治療にも力を入れているそうですね。
若い頃は、手術で何がなんでも治してやる、という気概を持ってがむしゃらに働いていたんですが、それだけでどうにかなるわけはありませんでした。実は一度、働きすぎでバーンアウトしたことがあるんです。その時に気分の落ち込みがあってドクターに診てもらったら男性の更年期だった。その経験が、人生について考えるきっかけをくれました。診療の経験と、自分自身の人生の経験を経て、ただ治療をするだけで終わるのではない、現在のような、男性の生き方に重きを置いた診療へとシフトしていったんです。
男性の人生にある3つのステージを支え、守る
男性の生き方に重きを置いた診療とは?
男性の一生には、学生時代を含めた青春期と、働き盛り、そして老年期の3つのステージがあって、それぞれに大切なポイントが変化します。青春期には性感染症などの啓発と治療をして、将来ちゃんと子どもをつくって働けるように整えること。働き盛りの人はがんの早期発見と、メタボリック症候群にならないような指導、性生活や筋力・体力が落ちてきたときの男性ホルモン療法など、体や精神の状態に合わせた治療を施すこと。定年の時期を過ぎても元気でいたい人が多いので、70歳を過ぎても男性ホルモンの値が下がってつらいという人には男性ホルモンを注射などで補充します。75歳を過ぎてからのがんは対応が変わりますから、よく相談しながら方針を決めるようにしています。
性感染症の結果を即日で出しているそうですね。
始めたのは厚生労働省の研究班から依頼があったからですが、性感染症は、患者さまご自身が不安や戸惑いを抱えて受診されますので、一刻も早く結果を出してあげたいという気持ちも強いですね。インターネットで、HIVや梅毒が広がっているなどニュースが流れるので、それで「まさか」と気づく方もおられます。性感染症は何より予防第一ですが、もしもの場合は必ずパートナーと一緒に治療しなければいけません。お母さんに感染するとおなかの赤ちゃんにも影響します。感染症は、とにかく早い治療が重要なので、当院では血液採取して30分ほどで結果を出し、もしHIVならすぐに治療に入れるよう専門の機関にホットラインでつなぎます。院内の感染症対策も徹底していますから、安心して検査にいらしてください。
前立腺がんや男性更年期について教えてください。
この2つは、どちらも男性ホルモンが大きく関係している病気です。前立腺がんは男性ホルモンを減らすことでがんの縮小を図ります。逆に、男性更年期は男性ホルモンが減って起きる病気ですから、ホルモンを補充するんですね。男性にも更年期があることを知らない人も多く、治療をするクリニックも多くないので、ご自身で病気に気づかないことも少なくありません。当院に来られる方も、ご自身よりは奥さまやパートナーが気づいて受診を勧められたり、メンタルクリニックのドクターから紹介されたりすることが多いですね。男性更年期は、太りやすくなったり、気分が落ち込んだり、イライラする、夜眠れないといった症状が顕著です。筋力が落ちたり、性機能がうまくいかなくなることもあります。そういった症状に心当たりがあれば、一度検査をしてみるといいでしょう。
自分らしい生き方を損ねない治療を選択
前立腺がんに対しては、どのような治療があるのですか?
前立腺がんは、若い世代なら手術で対応することも多いのですが、手術をすると勃起不全が起きるケースが少なからずあります。だから私は、その患者さまが何を大切にして生きたいかをよく話し合うことにしています。価値観はそれぞれで、性生活が大切な人もいれば、尿漏れが気になるという人もいる。前立腺がんはほかのがんと比べると付き合っていく期間が長く、手術後10年も経過してから再発したりするので、発症した年齢によっても選択肢が変わります。治療というのは良い面だけじゃなく、薬の副作用や手術後の合併症といったネガティブな面も必ずあるわけです。それもお伝えしながら、ご高齢の方の場合は、がんが広がっていなければ経過を観察するPSA監視療法というものもご提案します。最終的には、患者さまの望む生き方を踏まえた上で、患者さまご自身に治療の方向を選択していただいています。
患者さまの意思を尊重していらっしゃるのですね。
医師としての知見はありますが、私は患者さま自身ではありませんから、「どうしたいか」を必ずお尋ねします。今は、重粒子線治療という新しい治療方法が保険適用になったりして、選択肢は昔に比べて広がっていますね。私は九州国際重粒子線がん治療センターと頻繁に交流を続けていますし、多くの手術経験、また40年以上のホルモン治療の経験がありますので、それぞれの治療法について詳しくご説明もできます。そしてまた、治療後の定期検診は、患者さまが安心だと思えるまでサポートしていくつもりです。今も、80代90代で、術後20年、30年ずっと通って来られている方もいらっしゃるんですよ。もう定期検診をしなくても良い時期になっても、私の顔を見ると安心するからと、年に2回必ず来られることも。聞き慣れたラジオの音楽のような心が落ち着く存在になっているのかもしれませんね。うれしいことです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
私自身は女性の泌尿器の手術にも多く携わりましたので、女性の方も安心しておいでください。また健診などで血尿を指摘された方には膀胱がんの心配もあります。男性は50歳を過ぎたら、年に1回はPSAという前立腺がんの検査を受けることをお勧めします。また、精神面が不安定になったり、性欲や体力が落ちたりした時は、男性ホルモンの検査も受けられると良いでしょう。どちらも血液一滴で済む検査です。また、結婚前に2人そろって受けられるブライダルチェックと呼ばれる検査もご用意しています。ご自身のためにも、ご家族のためにも、まずは定期的なチェックを受ける習慣をつけて、安心な毎日をお過ごしいただきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは男性更年期に対する初回検査料/1万円程度、ブライダルチェック(STD検査)/3500円~1万5000円