和座 一弘 院長の独自取材記事
医療法人社団弘知会 わざクリニック
(松戸市/馬橋駅)
最終更新日:2024/06/21
小児科・内科・胃腸内科を診療科目に掲げる「わざクリニック」は、地域密着型のクリニック。和座一弘院長は家庭医療学を体系立てて研究し、さらに専門性を高めるためにアメリカに留学した経験を持つ。特に健康についてはじめに相談する医療機関として、家庭医療学をプライマリケアの観点から深く学んできた。帰国後は後進の育成にも携わりながら、松戸市の地域医療に貢献。子どもから高齢者まで幅広い年代を対象に、患者目線で自由度の高い診療を心がけている。「信頼できるかかりつけ医を見つけてほしい」と笑顔で話す和座院長に、これまでの経験やかかりつけ医ならではの工夫などさまざまな話を聞いた。
(取材日2024年5月17日)
最初に患者をナビゲート。窓口としてのプライマリケア
先生は長年家庭医療学に注目されていたそうですね。
はい。そもそも私が医師をめざしたのは小学生の頃、当時は医学部在学中で後に整形外科の医師となった叔父がきっかけです。親戚から体や健康のことについて相談を受け、頼られる姿に憧れて、私も「町のお医者さん」になりたいと思ったんです。その思いがさらに強まったのは、学部時代の学園祭で聞いた高名な日野原重明先生の講演でした。講演を聴いたのは1980年代のはじめ、日野原先生が70代の頃ですが、「21世紀は地域の中で患者に近い存在としての診療を行う、プライマリケアの時代になる」と情熱的におっしゃっていたんです。その後100歳を越えても現役の医師として駆け抜けられた先生が発する言葉には重みがありましたし、「そのとおりだ」と感じました。
その後は、どのような経験を積まれたのでしょうか?
自治医科大学の地域医療学部門に研修医として入りました。当時は、まだ総合診療なんて言葉すらない時代。大学の個別の教室として家庭医療学をカリキュラムに組んでいたのは、自治医科大学ぐらいだったのではないでしょうか。若い私の気持ちに応えてくださる先生が多くて、本当に実りのある修業時代を過ごすことができました。その後、家庭医療学をさらに深く学ぶためにアメリカへ留学しました。帰国後は若い医師の指導にあたりましたが、大いに刺激をもらえた経験でした。家庭医療学について学べる大学がまだ多くはなかった時代に、それを専門とする医師をめざして自治医科大学に来てくれた若い医師たちです。だからこそ、高いモチベーションを持っていたのだろうと思います。夜遅くまで、本当にいろいろな医療談義を交わし合ったものでした。今、そこで学んだ彼らは全国各地で活躍してくれていますよ。
そして2001年に、馬橋で開業されたのですね。
いずれどこかの地域に根差して診療をしたいと思っていました。そんな中でこの町とご縁がありました。少し心配もあったのですけどね。総合的に何でも診ていく在り方は、へき地医療などでは重視されるのですが、近隣にさまざまな分野を究めた医師が多くいる都市において、患者さんにその良さをわかってもらえるのだろうかと懸念していたんです。私自身としては、専門分化が進むほど「むしろ最初に患者さんをナビゲートするような、窓口としてのプライマリケアが必要だろう」という考えは揺らいでいませんでしたが、患者さんから受け入れてもらえるかどうかはわかりませんでした。開業してみると、「子どもも大人も一緒に診られる」という比較的自由な診療スタイルは地域の皆さんに受け入れていただけたのです。後はもう、地域医療に邁進するだけでした。
誰もが通いやすい、患者目線の受診環境
「比較的自由な診療スタイル」とは、具体的にはどのようなものですか?
お子さんの風邪などの診療のために、親子連れで医療機関に行くこともありますよね。その時に親御さんに健康上の不安があったら、そのまま相談できることなどが挙げられます。小児科も内科も一緒に診られるので、忙しい親御さんには利便性が良いのではないでしょうか。また同じ建物の5階では病児保育を行っています。病気のお子さんに少しでも楽しく過ごしてもらい、親御さんには安心して仕事に向かってもらうための場です。高齢者に目を向けますと、認知症や終末期といったテーマがありますよね。私は松戸市の認知症サポート医でもありますし、ターミナルケアも行っています。まさに年齢を問わず、ご家族の悩みを一手に引き受けているんです。
患者さんが安心して受診するために、工夫していることはありますか?
火曜と金曜の午前中は、事前予約制で慢性疾患の患者さんのみを診ています。インフルエンザなどの感染症はお子さんからご高齢の方にうつることもありますし、そうでなくても新型コロナウイルス感染症流行を経て受診に不安を感じている方もいらっしゃいます。そこで慢性疾患の患者さんだけが受診できる時間帯をつくり、除菌を徹底した検査室を新たに設けました。もちろん、慢性疾患の患者さんであっても一般診療の時間帯に受診可能です。自由に選んでいただけますので、通いやすいと思われるほうをご利用ください。
生活の身近な場所で、患者目線の受診環境が整っていますね。
それが「かかりつけ医」の良さなのだと思います。私の役目は、病気の早期発見に努めて適切な医療につなげること。ちょっとしたことでも相談してもらえるような、いわばコンビニエンスクリニックをめざしています。「かかりつけ医」にできることは幅広いんですよ。例えば内視鏡検査。これは専門的な検査ではありますが、当院でも受診可能です。松戸市の内視鏡検査はダブルチェック体制で実施していますから、必ず専門家の確認が入ります。そのフィードバックがまた当院の検査の精度向上につながっていると思います。
かかりつけ医への相談が、病気の早期発見につながる
医師としての醍醐味は、どのような時に感じられますか?
人間の尊厳のようなものにふれられる時がそうですね。ターミナルケアでは「数日後に死を迎える」とご本人も周囲も、みんながわかっていることもあります。それでも冗談を言うなどして、家族や私たち医療者に気を遣ってくださる患者さんもいらっしゃるものです。そんな最期まで人間らしさを大切にされている方にお会いすると、心が大きく動きますね。また、医師会などを通して「仲間」と呼べる医師の皆さんにお会いできて、これも本当にうれしいことだと思っています。だからこそ、たまに当院を留守にしなければならない時には、周囲の先生に安心してお任せすることもできますし、より良い診療につながっていると思います。ベテランの先生方はもちろん、当院に学びに来た若い先生からこちらが良い刺激をもらうことも多々ありますね。
現在、力を入れている治療や施策があればお聞かせください。
松戸市医師会では、子宮頸がんワクチンのキャッチアップ接種に力を入れています。これは1997年4月2日から2008年4月1日生まれの女性が対象で、2025年3月までにHPVワクチンを公費で接種できるというものです。期限まであと1年もないのですが、該当する年代の方への周知が十分とはいえません。HPVウイルスの感染が原因で発症する子宮頸がんの予防効果が期待できるワクチンですから、ご自身の体を守るためにも、多くの方にキャッチアップ接種のことを知ってほしいですね。また、子宮頸がんワクチンは一時期副作用の問題が大きく取り上げられましたが、今はメリットのほうがリスクを上回るとされており、積極的勧奨が再開されています。
お忙しい日々の中、どのようにリフレッシュされていますか?
最近はゴルフを楽しんでいます。体も動かせるし、コースを回る間の会話も楽しみの一つです。実はサックス演奏もするのですが、最近は少しご無沙汰でして。そろそろ再開したいなと思っています。
最後に、患者へのメッセージをお願いします。
患者さんにはいろいろな悩みがあるだろうと思います。医師から聞きたいことも、本当はほんの少ししか聞けていないのかもしれません。だからこそ、皆さんには「かかりつけ医」を持ってほしいんです。何度も顔を合わせて信頼できて、ちょっとした悩みでも相談できるかかりつけ医。それが病気の早期発見と適切な治療につながるのだと思っています。当院でも、より専門的な治療が必要となった時のために、開業以来20年以上かけネットワークを築いてきました。まずはじめに相談する窓口として、当院を使いこなしていただければと思います。