森本哲郎 院長の独自取材記事
海岸歯科室
(千葉市美浜区/稲毛海岸駅)
最終更新日:2021/10/12

7人のドクターを含む総勢34人のスタッフが、症状・年代を問わずに幅広い診療にあたる「海岸歯科室」。京葉線稲毛海岸駅から徒歩3分、大型スーパーの目と鼻の先に位置する。院長は東京歯科大学で学んだ森本哲郎先生。浅草で育った森本院長は、この地の将来性に魅力を感じて1991年に同院を開業した。以降、20年以上の歳月をかけて規模や設備を拡大しながら、地域住民の健康を支えてきた。「地域から虫歯をなくす」というビジョンを実現するため、子ども専用の分院を設立するなどの夢と行動力を持ったドクターだ。そんな森本院長に治療に対する思いや、歯科医師をめざしたきっかけなど話を伺った。
(取材日2015年5月29日)
医療は“人対人”。心を大切に「世界一優しい歯科医院」をめざす
この街に開業した経緯を教えてください。

私は、浅草の出身で、千葉は総武線が通る場所ということ以外はあまり知りませんでしたし、訪れたこともない場所でした。最初の接点は、東京歯科大学への入学。ちょうど私が入学する前の年に移転した、稲毛キャンパスに6年間通いました。その後、勤務医を経て、開業しました。実は、私の父や祖父も歯科医師で、地元浅草で開業しています。本来なら家を継ぐという選択肢もあったのでしょうが、浅草の町もだんだん人口が減るだろうという不安もあり、父と相談したんです。その時に「もうちょっと冒険しろ」と言葉をもらい、自分の力で勝負しようと決意しました。そんな父の後押しもあり、将来を見据え、出身大学と連携しやすいこの街に自分のクリニックを立ち上げることにしました。
20代で開業したということですが、不安はありませんでしたか?
当初は全然ありませんでした。あまり深く考えていなかったんですよ(笑)。正直言うと、あの時は志があったわけではなく、だんだんと出て来たんです。実際に「これではまずいな」と思ったのは、開業して3年が経った頃でしたね。開業当初は、治療の技術ばかりを勉強していて、歯科医師としてどういうレベルに達しているかということを重視していたんです。でも「医療で技術を提供するのは当たり前のことだ」と結婚し、子どもが生まれてから気付きました。医療は「人対人」。本当に大切なのは心なんだと気付いてからは、患者さんも増え始めました。
具体的にはどんなことを変えていったのですか?

患者さんが望んでいることをすべて把握し、望みに応えていく努力をするようになりました。例えば、患者さんが望んでもいないのに歯を削られてしまうことがないよう、当院では無駄に歯を削ったり痛みのある治療をしません。患者さんが想像する治療後の姿を実現しないといけないと思ってやってきました。その結果、「こんなに親切にしてもらったのは初めて」、「親身に話をきいてもらったことはなかった」という言葉を患者さんから聞けるようになったんです。こういう一つ一つの体験が積み重なり、医療とは人対人だと確信できるようになりました。人ではなく治療を重視してしまうと、自分の技術を売りにし、患者さんが望んでいないのにレベルの高い治療をしたほうがいいと考えてしまう。ニーズに応えるとは、人にも物にも優しくすることにつながる。なので、私は「世界一優しい歯科医院」をめざしたいと思っています。
地域から虫歯をなくすには、小さい頃からスタートすることが必要
子ども専用の分院「こどもの歯医者さん」を作った理由を教えてください。

当院のコンセプトは「この地域から虫歯をなくす」。これを実現するには子どもからスタートしないといけません。同時に、妊婦さんにも働きかけることが必要です。生まれたばかりの赤ちゃんは口の中は無菌ですが、お母さんと暮らすうちに菌が移っていくわけです。この認識をお母さんにも持っていただくことで、虫歯にかからない正しいケアをお子さんにしてあげることができます。分院の「こどもの歯医者さん」を作ってお子さんの治療に力を入れたり、妊婦さんをはじめとした大人の患者さんに虫歯ができる過程などをお話ししたりするのは、このためです。80歳までに歯を20本残す「8020運動」をこの地域に根付かせたいと思っています。
とりわけ力を入れている診療科目はありますか?
特化した診療科目はありません。基本的には「何でもできるクリニック」です。なぜなら、先ほども申し上げたように、患者さんのニーズにはできる限り応えなければなりませんから。「これはできません」とは言えないため、常に勉強し続けています。私の大学時代はインプラントを学ぶ制度ができていませんでしたが、大学卒業後にインプラントを学び、技術を身につけました。今ももちろんインプラントの患者さんも診ますし、当院には7人の歯科医師がおりますので幅広い症状に対応しています。
患者さんへの対応で、心がけていることはありますか?
患者さんを上から見下ろさずに、わかりやすい言葉に置き換えて説明するようにしています。歯科への不満は不十分なインフォームドコンセントから生じることが多い。歯科医師は、説明しているのに患者さんがわかってくれない、というのではなく、わかってもらえるまでとことん話すべきです。これは、歯科医師だけでなく、スタッフも同じです。どれだけ仕事ができても人間性がなかったらこの仕事に適さない。その結果、患者の期待以上の対応をしていかないといけません。当院が他と違うと感じていただけるのは、インフォームドコンセントを徹底しているからだと思うんです。
20年で院内や街の雰囲気も変わりましたか?

街の雰囲気はかなり変わりましたよ。20年前はまだ空地ばかりで、目の前のマンション群もなく、人口も今より少なかった。そんな昔から住んでいる方と新しく移り住んだ方が入り混じっているのが今のこの街。小児歯科で来ていた患者さんがママになって来院されることもありますよ。院内の変化と言えば、ユニット台を増やしたりカウンセリングルームやCTレントゲンを設置したりしてきましたね。スタッフの数も7人の歯科医師を含め34人となりました。内装はこの20年で色々変えましたね。色もオレンジから白に。理由は……特にないです(笑)。
感謝の気持ちを忘れずに、患者が行きたくなるクリニックへ
この二十数年で変わったことはありますか?

現在、3人の子どもに恵まれ、幸せな生活を送っています。休日は、下の子と一緒に遊ぶのが楽しみですね。基本的に私は怒らないんですよ。腹が立つことはありますが、そんな時は感情をコントロールするようにしています。常に感謝の気持ちを思い出せばいいんですよ。これは患者さんに対しても同じ。理不尽なことを言われても、当院を選んでくれたと思えば感謝の方が先に来ますよ。また、子育てをしたおかげで、子どもの気持ちになって接し、動じずに治療できるようになりました。泣きわめいても「子どもだから当たり前」と思えますね。
医師をめざしたきっかけを教えていただけますか?
高2まではサラリーマンになるつもりだったんですよ。でも、何がきっかけかなんとなく、自分の道は歯科医師しかないんじゃないか、と思うようになったんです。歯科医師である父の背中を見ていたからでしょうか。父は一言も同じ道に進めと言いませんでしたが。幼い頃、自宅と診療室が一緒でしたから、とにかくずっと見ていたんですよ。患者さんのところに行って、遊んでもらうこともありました。父がクリニックを閉めた今、数名の患者さんは当院で診療しています。父への信頼があるからこそ、私の技術はわからなくても、任せてくれるのだと思います。
今後の展望をお聞かせください。

20歳以上の7割ほどが歯周病を患っているのに、歯科の受診率は9%と言われています。多くの人がトラブルを抱えたまま放置しているんです。理由の一つは、歯の疾患がすぐに命にかかわらないということがあるでしょう。そして、行かなくてもいいなら行きたくない、となる。だからこそ、クリニック側が行きたくなるような場所にしないといけないんです。先日テレビで、ある飲食業界の社長が、事業を成功させる秘訣は親切で、どうしたら親切が顧客に伝わるかを考え、全社員に浸透するように教育しているとおっしゃっていました。ほこり1つない店内作りなど、雰囲気作りも徹底していました。こういう努力を歯科医院もやっていく必要があると思うんです。飲食店は「行きたいところ」だけれど、病院は「根本的に行きたくないところ」でしょう。なおさら変えないといけない。そして将来的には、「治療の雰囲気がまったくない歯科医院」を作りたいですね。子どもたちも怖くない、遊んでいる感覚になれる、そんなクリニックがいいです。患者さんの笑顔を見た時は、この仕事のやりがいを感じます。みなさん必ず緊張して来院するけれど、最後に「ここに来てよかった」とこの先もずっと思ってもらいたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療(1本)/30万円~、歯列矯正(相談・検査・診断・治療までの標準料金)/80万円