痛みへのアプローチは多種多様
正しい知識と運動で膝と骨を守ろう
のみやま整形外科クリニック
(福岡市城南区/七隈駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
インターネットの普及により、さまざまな情報が手軽に入手できるようになった昨今、誤った情報でさえも正しい情報として浸透してしまうことが危惧されている。そんな中、日常にあふれている確証のない情報に惑わされないよう、正しい知識を伝えていきたいという「のみやま整形外科クリニック」の野見山宏院長。変形性膝関節症を専門とし、日々痛みを訴える患者と向き合い、熱心に治療に取り組むドクターだ。膝への注射も医師の経験で痛みに大きな違いが出ることや、痛みに対する治療法も多く、アプローチも多種多様だからこそ、気軽に相談できるクリニック選びが重要だという。今回、変形性膝関節症の初期症状をはじめ、ほかの疾患を疑うべきポイント、適切な予防法や正しい知識を得ることの必要性を語ってもらった。
(取材日2021年1月14日)
目次
変形性膝関節症の痛みも状態も人それぞれ。日常にあふれるさまざまな情報に惑わされないよう正しい知識を
- Q患者さんからよく受ける相談についてお聞かせください。
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A
膝痛と腰痛です。膝の痛み、中でも変形性膝関節症に関しては特徴的な初期症状があります。その多くは歩き始めに強い痛みを感じ、その後は軽減すること。ただ、それが安静時痛に変わった場合は要注意。動かしていないのに痛みが出たら、変形性膝関節症ではなく大腿骨内顆骨壊死症(だいたいこつないかこつえししょう)や、がんなど別の病気の可能性があります。安静時痛というのはさまざまな疾患の重要な鍵で、寝ている時に左肩が痛いと来院され、実は心筋梗塞や肺がんだったというケースもありました。今はインターネットでご自身の症状を検索される方も多いですが、確証のない情報もあふれていますので、専門機関を受診していただきたいですね。
- Qちょっとした痛みだと受診をためらう方も多いのでは?
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A
痛みの強さは人によって感じ方が違いますから、少しの痛みであっても大きな病気が潜んでいることがあります。足が動かせないと訴えて来られる方がいますが、痛くて動かせない場合はその痛む箇所、痛みが怖くて動かせない場合は関節が原因であることが多く、痛みはあまりないのに動かせない場合は脳梗塞などを疑わなければなりません。このように、痛みが少ないから大丈夫とは限らないので、強い痛みでなくても受診してください。私は総合病院にもいましたし、これまで診てきた症例数だけ、いろんな患者さんとも接してきました。それだけ病気や患者さんへの対応力は身についていると思っていますので、ご自身で判断されずにご相談ください。
- Qどんな痛みでも自己判断はやはりよくないのですね。
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A
今は簡単に情報を入手できる分、自己判断される方が多くいらっしゃいます。よく「ぎっくり腰ですか?」と聞かれる方がいますが、ぎっくり腰の定義はあやふやです。病名なら「急性腰痛症」です。このように、言葉だけが浸透している病気というのがたくさんあります。ほかにも「治る」という言葉。痛みが取れたら皆さん治ったとおっしゃいますが、例えば変形性関節症は根治しません。しかし、痛みが軽減することで通常の日常生活に戻ることはできます。また、早い段階で適切な靴選びなどの対処をすれば、進行を遅くすることも期待できるのですが、悪影響を及ぼすような極端に底がやわらかい靴を、膝に良いからと履いている方がいるのも事実です。
- Qでは、日常生活で予防できることはありますか?
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A
毎日歩くこと。これは変形性関節症しかり、生活習慣病や骨粗しょう症など全身に良い運動です。実は骨粗しょう症の治療が進んだのは国際宇宙ステーションの研究なんです。宇宙飛行士は昔、80代女性の約10倍のスピードで骨粗しょう症が進行していました。それを防ぐための研究がなされ、無重力空間では1日2時間ほどの運動が必要であるという結果が。それとともに、地球上では少なくとも1日30分程度の運動が必要であることもわかっています。重要なのは毎日やることですが、逆に痛めてしまうこともあるので、やり過ぎないこと。ご高齢の方たちの「1万歩歩いた」などの会話を耳にしますが、翌日に疲れが残らない程度に歩くことが大事です。
- Q足の痛みへの治療で特に注力されている治療法を教えてください。
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A
患者さんの年齢とライフスタイルを重視した治療法です。生活に支障が出ると、精神面にも影響しますからね。患者さんが困っていることを取り除いてあげられる治療法を選択することが、自分の役目だと思っています。ステロイドの使用も医師によってさまざまな見解がありますが、患者さんにとって必要であると判断した場合は使用します。なぜかというと、人工関節などの手術を希望されない方もいるからです。そうなると、手術せずにできるだけ快適に過ごせる方法を考えなければなりません。患者さんの生活向上を図るのが私の治療方針なので、患者さんの要望に合わせて、根本的な改善とは異なる別の方法を選択する場合もあります。