北川 友朗 院長の独自取材記事
きたがわ医院
(堺市西区/上野芝駅)
最終更新日:2024/07/31

JR阪和線・上野芝駅から車で約5分の距離にある「きたがわ医院」は、開業以来20年「全身を診てくれるかかりつけ医」として地元住民に親しまれてきた。院長の北川友朗先生は「少しでも異常を感じたら来てほしい」と、敷居を低くし、誰もが来院しやすい環境づくりを心がけている。専門の消化器、外科に限らず内科、小児科と幅広く診療し、広々としたリハビリテーション室も備えている。また、予防にも注力してきた同院では全体患者数のうち約5%が90歳代で、元気に歩いて通院するのだそう。地域医療として地元に尽くしてきた北川院長に、診療方針やこだわり、今後の展望について話を聞いた。
(取材日2019年4月16日)
多様な科目に対応し、総体的に診るクリニック
いつ頃から医師を志されたのですか?

「人の助けになりたい」という思いから、医療の道に進もうと思い始めたのが中学生のときです。父は獣医で、開院はしていませんでしたが、ペットを連れて訪ねて来られた近所の方たちの力になってあげていました。そんな姿を見てきた影響もあったように思います。外科を選んだのはオールマイティーな医師になりたかったからです。内科だと手術はできないけど、外科は手術もできることもあり、外科を選びました。大阪医科大学を卒業後、研修医・勤務医時代は、朝6時に出勤し、帰るのは夜中というハードな日々でした。市中病院では専門以外にも胸の手術や頭の手術、整形外科領域の骨折手術などにも携わり、夜中の救急科外来では内科疾患の診療も行っていました。昔の外科の医師は、頭のてっぺんから足先まで診れないと務まらなかったのですね(笑)。
開業には地元を選ばれたのですね。
学位取得後、大学から淡路島の救急病院へ赴いていたのですが、父が入退院を繰り返していたため、自宅併設のクリニックの開業を考えるようになりました。将来的には過疎地やへき地など、医師が少ない地域での診療を希望していたので、父のことがなければここでの開業はなかったかもしれません。設計にあたっては、患者さんが安心して入って来られるように、入り口はガラス張り、窓も大きくと気を配りました。地元なので同級生のご両親もよく通ってくださっており、私とほぼ同じ年代、そのジュニア世代からお孫さん世代まで診させていただいています。開業当時からさまざまな科の症状を診療してきましたので、患者さんからは総体的に診てくれるクリニックとして認識していただいていると思います。
高齢の患者さんが多いと聞きました。

高齢になると内臓疾患だけでなく、腰・肩・足など整形外科的な痛みを抱える方が多数を占めますし、高脂血症・高血圧・糖尿病という三大生活習慣病も多いですから、食事と運動療法はセットで必要です。私は年配の方にも肉を食べるように勧めます。ご年配の夫婦ですと、どうしても梅干しとお茶漬けだけで済ませてしまわれることも多いですよね。予防として高齢の方にお伝えしているのは、とにかく「転ばないことと、肺炎にかからないこと」です。転倒して入院し寝たきりになると免疫力が落ちて肺炎を起こしやすくなります。そして数ヵ月ほどで亡くなられる方もおられます。ですから、転倒防止のための筋力維持にもつながり、免疫力を高める散歩も取り入れていただいています。
家族関係から環境の変化まで、その人を知ることが大事
印象深かったことなどはありますか?

私が開業した頃この近辺では、内視鏡の検査を受けたことのない方が多くいらっしゃいました。また、そうした検査を実施できる診療所も少なかった時代でしたが、私は開業当初から胃の内視鏡検査を取り入れていました。病院時代は1日に胃カメラ10~15件・大腸内視鏡検査2~5件というペースで携わってきましたのでご安心いただきたいですね。当院ではクチコミで広がり、検査を希望される方が増えてきました。中には、がんの早期発見・早期治療につながることも考えられるので、ぜひ定期的に検査を受けていただきたいですね。
診療ではどういったことに気をつけておられるのですか?
「お父さんはどんな人?」「お母さんはどんな感じ?」「子どもさんはどう?」と、その人のバックボーンや生活環境を知るように努めています。家族関係を知らずして適切な診療に至るのは難しいからです。例えば血圧が高いから食事指導をという場合、お子さんが中高生だと塩分控えめってなかなかできないんです。その年齢のお子さんは味が濃い食事を好みますからね。また、ご夫婦だけの場合は、たいていご主人の好みが優先です。だから「ご主人にも伝えてね」と、味を薄くしてもらうことをわかってもらわないといけない。その辺りのことを踏まえた上で食生活・運動習慣のアドバイスを行うよう心がけています。
あらゆる角度から患者さんを診られるのですね。

具合が悪いとか、体調不良の原因が環境の変化にあったり、職場環境にあったりと、精神面から変調を来している場合も多いですからね。胃が痛む、頭が痛いと体に表れている症状を訴えて来院される方の中には、心療内科の治療が必要な方もおられるでしょう。心に重石を抱えて話しに来られるんですね。だからじっくり伺って、薬を処方し様子を見ながら、必要と判断すれば専門の医師にご紹介します。こうして長く開業医を務める中で、私自身コミュニケーションへの考え方は変わってきました。その方の仕事の状況やご家庭などの環境を知ることによって初めて、全身の健康状態を診ることができると思っているので、じっくり時間をかけてコミュニケーションを取るよう心がけています。
一番の望みは地域のみんなが元気になること
リハビリ室も備えられていますね。

ここでリハビリをしながら、顔なじみの方たちと話すことも楽しみの一つになるのではないでしょうか。ウォーターベッドや牽引、干渉波、エアマッサージ機など、リハビリ機器も充実しており、ひざや腰の痛み、手足のしびれなどの症状がある方が機能回復のために通ってくださっています。お子さんや若い方も、スポーツによるけがや外傷でいらっしゃっていますよ。
お忙しい毎日ですが休日はゆっくりできますか?
趣味の美術鑑賞に妻と出かけてのんびり過ごします。30年ほど前までは、沖縄などの美しい海でスキューバーダイビングを楽しみました。開業後はしばらくは時間外の救急を受けつけていたのと、今も訪問診療を行っていますのでバカンスとは縁遠くなりましたね。訪問診療では、昼間ご家族が仕事でおられない場合は、診察を終えた夜の8時くらいからお伺いすることもあります。ケアマネジャーや訪問看護ステーションとの連携も進み、以前より自分の時間が持てるようになりましたので、時々温泉で一息つけるようになりました。
今後の展望を聞かせてください。

90歳以上の方もたくさんいらっしゃっており、長年通われる患者さんたちですから、私にとっても感慨深いです。70歳後半から80歳代の方はよく「もう年寄りだから」と口にされますが、「まだまだ若いですよ。90歳以上の方も、元気にご自分の足で歩いて通院されていますよ」とお伝えすると、驚かれますが希望になるようです。楽しみを見つけて頑張ってほしいですね。私の一番の望みは地域のみんなが元気になってくれることなのです。高齢の人は、すぐに高熱などの症状が出ないこともあり、気づいたときには深刻な状態になってしまっていることもあります。少しでも普段と違うと感じたら、来院してほしいですね。