川崎 浩司 院長の独自取材記事
用賀クリニック
(世田谷区/用賀駅)
最終更新日:2025/07/29

田園都市線用賀駅より徒歩1分と、アクセス至便な立地の「用賀クリニック」。ここは、1997年の開院以来、日本小児科学会小児科専門医である川崎浩司院長の温かい人柄と適切な診療によって、長年にわたり地域に親しまれてきたクリニックだ。待合室にはキャラクターのおもちゃや、絵本が並び、「子どもたちの不安な気持ちを和らげたい」という心遣いが伝わってくる。次々と来院する患者に、にこやかに対応する川崎院長から、患者との印象深いエピソードのほか、子どもたちや子育て中の親たちへの思いの一端を聞いた。
(取材日2012年8月1日/情報更新日2025年7月17日)
約20年、小児科の専門家として地域医療に貢献
開院の経緯を教えてください。

埼玉医科大学を卒業後、埼玉大学の総合医療センターの小児科で研修を受けました。専門は呼吸器ですが、一般小児診療のほかにも新生児を担当し、不妊治療を受けていた方の多胎出産による未熟児の対応で緊迫した日々を過ごしていたのを思い出します。帝王切開で、わずか400グラムで生まれた赤ちゃんが無事に退院し、数年後に元気に来院する姿には感動を覚えました。また、時には重症で障害が残るという厳しいケースも。その時、どんな場合でもご家族にお子さんの状況や治療方法をご理解いただけるよう、丁寧に説明するのが医師としての責任だと心に刻みました。その後、さまざまな症例について研鑽し、1997年に生まれ育った用賀に戻り当院を開業したのです。
医師になられたきっかけは?
父が小児科医師なので、その影響はあります。加えて、人と付き合うのが好きで、人を相手にする仕事なら自分に向いているし、何か人の役に立つ仕事がしたいと考えたことも理由です。父は以前から用賀で開院していて「一緒に診療をしないか」という誘いをもらったのをきっかけに、大学病院から戻りました。しかし、「親子で診療すると、ぶつかることになるのではないか」と知人からアドバイスを受けた父が思い直し、私一人で当院をスタートさせることになったんです。まだ30代半ばでしたから、少し距離を置きながらも父を頼りにしてきました。経験が豊富で、考えていることの量がまったく違うので、必要なときにはアドバイスを求めていましたよ。その父は頑張って診療を続けていましたが、ついに14年前、医院を閉じました。
こちらの地域の患者さんの特徴はありますか?

お母さんたちは非常によく勉強していらして、感心します。例えば「こんな症状があるからこの病気なのでは?」と細かな質問もよく受けますよ。また、インターネットで見たからと、非常にまれな疾患を疑って来られる方もいますね。診察して、まずは重症か、緊急性がないかを判断し投薬を中心に治療します。毎日熱心に来られたり、すぐに熱が下がらないとまた来られたり。そんなに焦ることはないとお話ししても、不安に思うお母さんの気持ちもよくわかりますので、できるだけ詳しく病状を説明し、お子さんには「頑張って薬を飲もうね。水分はちゃんと取ろうね。何かあったらお母さんに言うんだよ」と声をかけています。
子どもの成長を見守ることがやりがい
患者さんはお子さんが多いのでしょうか?

最近は、小児科だけでなく内科の患者さんも増えています。開院以来かかりつけにしてくださっている方も珍しくありません。お子さんはやはり流行性疾患で来る方が多く、夏風邪、アレルギー性の疾患、気管支喘息、冬はインフルエンザです。父の医院に通っていた高齢の患者さんがこちらに来るようになったこともあって、高血圧、糖尿病など、生活習慣病のご相談も増えています。「お父さんはお元気?」「なんだか、お父さんに似てきたね」と、なじみの患者さんにはよく声をかけられるので、父に対する患者さんの親近感が伝わってきてうれしいですね。私も父を見習って患者さんとじっくり向き合って、信頼関係を築いていくのは目標の一つです。
治療で心がけていることを教えてください。
病気は早期発見・治療が大事です。親御さんは、お子さんがいつもと違う状態であることに気づいて、早めに連れてきていただけると早い回復が見込めると思います。そのため、親御さんへの指導には力を入れ、気管支喘息と風邪の咳の違いや、治療薬と予防薬の違いなど、わかりやすく説明するよう努めています。開業医の重要な役割は、大きな病気をいち早く見つけること。本当に大変なことか、そうでないのかを見極めるのは私の責任です。早期に発見し、当院で対応できない場合は、すぐに適切な病院を紹介します。例えば、ちょっと風邪をひいて調子が悪いといわれるお子さんを診察した際、心臓に雑音が聞こえたとします。その時、明らかにおかしいと感じ、すぐに病院を紹介したら、非常に珍しい症例ですぐに手術。幸い大事には至らなかった、というケースもあり得ますからね。
どんな時にやりがいを感じますか?

開院してからもう28年になりますので、小さかったお子さんが大きくなって来ると、毎回びっくりしますよ。小さい頃は体が弱かったのに、最近全然来ないなと思っていたら、僕より大きくなっていたり、成長して高校生になっても相談に来てくれたり。そんなふうに、お子さんたちの成長を見守れるのが、私にとってのやりがいです。この辺りを歩いていると「先生!」と声をかけられることもよくありますが、すっかり成長して見た目が変わっていて、僕のほうがわからないことも。でも、病院に来る必要がなく、健康で元気そうにニコニコしている姿は、なによりうれしいですね。
子どもが安心して通える医院をめざして
お子さんにはどう対応されているのですか?

子どもはちょっとしたことでも不安になりますので、なるべく怖がらせないよう、不安にさせないように気をつけて接しています。注射を終えたお子さんには、受付でシールをプレゼントしていますよ。受け取ってほっとしたような顔で帰っていく子もいれば、なかなか泣きやまない子もいます。子どもの個性が表れますよね。
待合室はおもちゃがいっぱいですね。
患者さんが読まなくなった本やおもちゃを持って来てくださるんです。知らない間にどんどん増えて、お子さんに喜んでもらっています。また、最近ではお父さんがお子さんを連れて来られるケースも増えてきました。でも、お父さんはお子さんと接する時間が少ない傾向にあるので、情報が少なく診断するのにちょっと苦労することも。忙しいお父さんも日頃からお子さんの様子をもっと観察できる時間が持てるといいと思いますね。ご家族みんなで風邪の治療や予防接種に来ることもあり、かかりつけ医として頼りにしてもらえている実感があります。
今後の展望を教えてください。

近年は5種混合ワクチンもでき、1日に同時摂取できる本数も緩和されてきたものの、予防接種の種類は多いので親御さんは本当に大変だと思います。予防のためにはワクチンは必要なものと考えていますので、なぜ必要なのかをわかりやすく説明することにもっと力を入れたいです。もし病気になっても早く見つけて、早く治してあげたいですね。特に小さいお子さんを持つ新米のお母さんは経験が少ないので、力になれたらと思っています。とにかく、予防と早期発見・治療に努めたいですね。また、コロナ禍も少し落ち着いたと思いますが、発熱の外来は継続しています。もし発熱症状があれば、まずご連絡いただければと思います。場合によって動線を分けて診察するなど、すべての患者さんが安心して受診できる体制を整えたいですね。そして、いずれは私も引退する日が来ると思いますので、その時に患者さんたちが困らないよう今の内から準備していきたいと考えています。
読者へメッセージをお願いします。
最近は、診療してもとりわけ異常は見つからないのに、漠然とした不調を訴えるお子さんが増えています。精神面に原因のあるケースもありますが、必ずしもそうとは言いきれない状況を多く見てきました。例えば思春期のお子さんに多い頭痛は、急速な成長に伴う背骨の発達によって、その側にある自律神経とのバランスの乱れに起因することがあるんです。その場合は、対症療法として頭痛薬を処方し、改善を図ることも。放っておくと血圧が低くなって起きられなくなるほか、頭痛がさらにひどくなることもありますから、病気を決めつけずにお子さんの状態をよく見て、まずは医師に相談することをお勧めします。何だか機嫌が悪い、何となく元気がない、痛そうにしている、歩き方が変など、普段と違うことがあったら、気軽に相談に来てください。診て何もなければ安心ですし、何かあっても早めに対応することができますからね。