生活習慣改善も大切
小学生の「夜尿症」は早めに相談
世田谷子どもクリニック
(世田谷区/上町駅)
最終更新日:2021/10/12
小学生でもおねしょが定期的に続く場合、「夜尿症」という症状に該当する。しかし「おねしょはそのうち治るだろう」との期待から、夜尿症の初診年齢が10歳前後になる場合も多くなっている。気にしていないそぶりをしながらも、みんなの前では言えない悩みを持つ子どもたち。この状況を残念に思う「世田谷子どもクリニック」の副田敦裕院長は、「夜尿症の原因はさまざまで、早めの受診をお勧めします」とアドバイスする。専門家の指導のもとで生活習慣を改善することが、基本の治療となるという。夜尿症の原因とそれに適した治療、さらに先進の夜尿症治療の情報を含めて、副田院長に詳しく聞いた。
(取材日2016年4月28日)
目次
尿の量やぼうこうの機能、家系的要因など夜尿症の原因は多様。それぞれに合わせた治療で症状の改善をめざす
- Q夜尿症とおねしょは違うものですか?
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A
寝ている間に無意識に排尿する「おねしょ」は、年齢とともにその頻度は少なくなります。しかし小学1年生になっても約1割程度のお子さんには月数回のおねしょが認められ、こうした状態を「夜尿症」と呼んでいます。夜尿症はさまざまな原因で起こり、ご家庭のしつけとは関係ありません。夜間につくられる尿を減らすホルモンの出が悪く夜間の尿量が多い、ぼうこうが小さいなどの原因のほか、便秘でぼうこうが圧迫される、アレルギー性鼻炎による鼻づまりで睡眠の質が悪いなどが原因になっていることもあります。小学生でおねしょが続くお子さんは、原因をしっかりとらえてお子さんの状態を総合的に診て治療を始めることが大切です。
- Q夜尿症ではどのような治療が受けられますか?
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A
原因に応じた治療法がありますが、まず基本となる生活習慣の改善から始まります。夕食の時刻を早めて規則正しい生活リズムをつくる、夕食後から寝るまでは水分を控える、食事は塩分を少なめにするなどです。その後も夜尿症が続く場合は、お薬での治療やアラーム療法などを行います。お薬は夜間の尿量を少なくするお薬や尿をためやすくするお薬などがあります。アラーム療法はお子さんのパンツにセンサーを付け、尿でパンツが湿ったらアラームを鳴らすもの。これはトイレに起こすためでなく、睡眠中でも無意識の中で尿をためる力を高めるのが目的です。お子さんの夜尿症の特徴に合わせて治療を選択していきます。
- Q治療にはどれくらい時間がかかりますか?
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A
時間がかかる場合が多いので、根気強く治療に取り組むことが大切です。焦らずに治療を続けていただきたいですね。ただお友だちとのお泊まりや合宿などで対策が必要な場合は、一時的に使用するお薬やパンツの工夫などもあるのでご相談ください。「そのうち治るのでは」と、小学5、6年生になるまで受診を待たれるご家族も多いのですが、お子さんは平気に見えても実は悩まれていることがほとんど。治療に数年を要することも考えると、なるべく早くに相談受診されることをお勧めします。
- Q治療中に家庭で気をつけることは何でしょうか?
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A
治療には時間がかかりますから、症状が続くからと焦ったり子どもを叱ったりするのは禁物です。効果が出ないことでご自身を責める必要もありません。それより少しずつ良くなっているところを見つけてあげてください。お子さんも変化を実感できれば、やる気もわいてくると思います。生活習慣の改善などでご家族のサポートは重要ですが、治療の主役はあくまでお子さんで、治療を続ける意欲を持つことが大切です。またお子さんが寝ているとき無理にトイレに起こすのは避けましょう。尿の量を減らすホルモンの出が悪くなる原因になり、またトイレに行けても本人が夢うつつの状態での排尿では、夜尿症の治療に影響を及ぼすこともあります。