生活習慣改善も大切
小学生の「夜尿症」は早めに相談
世田谷子どもクリニック
(世田谷区/上町駅)
最終更新日:2024/07/05


- 保険診療
5、6歳を過ぎても月に数回以上のおねしょが続く場合、「夜尿症」という疾患に該当する。しかし「そのうち自然にしなくなるだろう」との思いや期待から、夜尿症の相談で初めて受診する年齢が10歳前後になる場合も多くなっている。気にしていないそぶりをしながらも、みんなの前では夜尿があることを気づかれないかと気にして悩んでいる子どもたちは多い。この状況を残念に思う「世田谷子どもクリニック」の副田敦裕院長は、「夜尿症の原因はさまざまで、早めの受診をお勧めします」とアドバイスする。専門家の指導のもとで生活習慣を改善することを基本としながら治療を行っていく。夜尿症の原因とそれに適した治療、さらに最近の新しい夜尿症治療の話題も含めて、副田院長に詳しく聞いた。
(取材日2024年3月21日)
目次
夜間の尿量やぼうこうの機能、便秘など夜尿症の原因は多様。症状に合わせた治療で症状の改善をめざす
- Q夜尿症とおねしょは違うものですか?
-
A
▲夜尿の原因を見極め、一人ひとりに合わせた治療法を提案する
寝ている間に無意識に排尿する「おねしょ」は、年齢とともに少なくなりますが、小学1年生になっても月数回のおねしょが認められる場合を「夜尿症」と呼んでいます。意外かもしれませんが6、7歳の1割に認められる頻度の高い疾患とされています。ご家庭のしつけとは関係なく原因はさまざまです。夜間の尿量を減らすホルモンの分泌が少ない場合、尿をためる機能が弱い場合などの原因のほか、便秘が影響することもあります。またアレルギー性鼻炎による鼻詰まりなどで睡眠の質が悪くなることが誘引になることもあります。小学生でおねしょが続くお子さんは、原因をしっかりとらえてお子さんの状態を総合的に診て治療を始めることが大切です。
- Q夜尿症ではどのような治療が受けられますか?
-
A
▲夜尿症は治療で改善が望める疾患。気になることは医師に相談を
当院では2021年に作成された日本夜尿症学会の診療ガイドラインを基本として、より専門性を生かした治療を行っています。まずは生活習慣の改善が治療の基本で、夕方からの水分・塩分量を控える、寝る前には必ずトイレに行くなどの習慣づけを行います。その後も夜尿症が続く場合は、薬物療法や、濡れた尿に反応するアラームをおむつや下着につける方法などで改善をめざします。アラームはトイレに起こすためでなく、睡眠中でも無意識の中で尿をためる力を高めるのが目的のものです。お子さんの夜尿症の特徴に合わせて治療を選択していきます。
- Q治療にはどれくらい時間がかかりますか?
-
A
▲膀胱検査に使用する超音波膀胱画像診断装置
完全に夜尿がなくなるまでは、1~2年と時間をかけて治療を行っていくので、根気強く治療に取り組むことが大切です。焦らずに治療を続けていただきたいですね。ただお友達とのお泊まりや合宿などで対策が必要な場合は、一時的に使用するお薬やパンツの工夫などもあるのでご相談ください。「そのうち治るのでは」と、小学5、6年生になるまで受診を待たれるご家族も多いのですが、お子さんは平気に見えても実は悩まれていることがほとんど。治療に2年以上を要することもあるので、なるべく早くに相談受診されることをお勧めします。
- Q治療中に家庭で気をつけることは何でしょうか?
-
A
▲子どもの自尊心を守るためにも、早めの受診が大切だ
治療には時間がかかりますから、症状が続くからと焦ったり子どもを叱ったりするのは禁物です。それより少しずつ良くなっているところを見つけてあげてください。お子さんも変化を実感できれば、やる気も湧いてくると思います。また食事などの生活習慣の改善にご家族のサポートは重要です。ただ治療の主役はあくまでお子さんなので、治療を続ける意欲を持たせることも大切です。またお子さんが寝ているとき無理にトイレに起こすのは避けましょう。夜間の尿量を減らすホルモンの出が悪くなる原因になり、またトイレに行けても本人が夢うつつの状態での排尿では、トイレで夜尿をしていることになり、かえって夜尿が長引く原因になることがあります。