副田 敦裕 院長の独自取材記事
世田谷子どもクリニック
(世田谷区/上町駅)
最終更新日:2024/06/24

開業から10年の節目を迎えた「世田谷子どもクリニック」。大学病院や総合病院の小児科で研鑽を積んだ副田敦裕院長が、地域に根差したかかりつけ医をめざしているクリニックだ。一般小児科のほか、夜尿症治療や舌下免疫療法をはじめとするアレルギー診療、けいれん性疾患や発達障害の相談・治療、言語聴覚士による言語指導を4本柱として診療を展開する。特に夜尿症治療に力を入れており、「夜尿症に悩む子どもは決して珍しくないこと、治療で改善が望める疾患であることを広く知ってほしい」と副田先生。温かみのある院内で、診療の特徴や、受診する親子への思いを聞いた。
(取材日2024年3月21日)
一般の外来に加え、4つの専門の外来を開設
待合室が広くて、キッズスペースで遊びながら待っているお子さんもいらっしゃるそうですね。

入り口に続くキッズスペース付きの待合室と、靴を脱いで上がっていただく待合室が隣接しています。できるだけ広いスペースでお待ちいただきたいですね。待ち時間も親子の会話の時間になるような場所として、おもちゃや絵本、本を置いています。病院に対する漠然とした不安や、苦手な注射への怖さなどを少しでも緩和できればうれしいです。待合室では夢中で遊んでいたのに、診察の順番が来て呼ばれた途端泣いたり、嫌がったりする子も少なくありません。そんなときも、焦らず、急かさず見守るのが当院のスタンス。お子さんの心の準備ができるのを待って、遊びの延長のような気持ちで診察に入るのが理想です。スタッフも、お子さんに合わせて優しく声がけをしてくれていますよ。ぬいぐるみと手をつないで診察を受ける子もいます。
どんな主訴での受診が多いのでしょう。
当院では、一般診療に加え、夜尿症の治療、舌下免疫療法も含めたアレルギーの診療、熱性けいれんやてんかんなどのけいれん性疾患の治療、発達関連の相談・治療、言語聴覚士による言語指導の4つの専門の外来を開設しています。ですから、風邪や腹痛といった一般的な症状から、各種専門の外来に該当する症状まで、さまざまな主訴のお子さんがいらっしゃいますよ。基本的には近隣のお子さんが中心ですが、小学校に上がってもおねしょが続いている、てんかん発作などのけいれんの症状がある、といったお子さんは遠方から受診されることもあります。
専門の外来について詳しく教えてください。

アレルギー治療は、喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎が主な疾患です。スギ花粉やダニによるアレルギー性鼻炎の場合は、舌下免疫療法で根本的な体質の改善をめざすことができます。アトピー性皮膚炎や食物アレルギーについては、炎症のある肌からアレルゲンが侵入するのを防ぐため、乳幼児期からの肌ケアを推奨しています。肌が赤くなっているのを見かけたら、できるだけ早く治療して、保湿剤などを使って正常な肌の状態を保ちましょう。必要に応じて、食物アレルギーの発症予防に適した離乳食開始のタイミングなどもアドバイスします。けいれん性疾患は熱性けいれんやてんかんなどの相談・診断を行っています。院内で脳波の検査を行い、けいれんの原因やタイプの判断、重大な病気の有無などを診断します。また、発達に関する相談も行っています。何度もけいれんを起こす場合や発達の問題がある場合などは、近隣の先生方からのご紹介で受診される方も多いですね。
夜尿症は改善が望める疾患。家族で悩まず気軽に受診を
夜尿症の診療には、特に注力されていると聞きました。

5、6歳を過ぎても月に数回以上のおねしょが見られる場合、夜尿症としての治療が望ましいでしょう。夜尿症のお子さんは、潜在的にはかなりの数がいると見られていて、7歳で10%程度、15歳以上でも1~2%の子どもに見られると言われているんですよ。ところが、「自然にしなくなるものだ」という思い込みから病気としての認識が薄いことや、お子さん自身、あるいは親御さんの羞恥心や自責心などで、相談の機会を逃している方も少なくありません。夜尿症の原因は、尿を膀胱にためる機能の弱さ、夜間の尿量を調整するホルモンが少ないことによる夜間尿量の増加などさまざまで、決してお子さんのせいでも親御さんのせいでもありません。夜尿症のお子さんは意外と多いこと、治療で改善が望める疾患であることをまずは広く知っていただきたいですね。
夜尿症はどのように診療するのですか。
当院では2021年に日本夜尿症学会から出された夜尿症診療ガイドラインを基本とし、さらに専門性を生かした診療を行っています。まずは、夜間の尿量や、膀胱に尿を溜める力を計測。原因が夜間の尿量を少なくするホルモンの少なさなのか、膀胱に尿をためる力の弱さなのかを見極め、普段の生活習慣と照らし合わせていきます。治療の基本は生活習慣の改善で、それだけで症状の改善が見込めるお子さんも多いです。夕方からの水分・塩分の摂取量に気をつけ、寝る前に必ずトイレへ行くことや、便秘を改善することも大切です。夜間に起こしてトイレへ行かせると、睡眠中にでるホルモンの分泌が悪くなり逆効果となることもあります。生活習慣の見直し後も夜尿が続く時は、薬物療法や、濡れた尿に反応するアラームを用いる方法もあります。お友達に夜尿のことを気づかれないかとひそかに悩んでいるお子さんもいらっしゃいますので、まずは一度ご相談ください。
言語聴覚士さんも言語指導を担当されているのですね。

そうです。週に1回、言葉の遅れのあるお子さんや、ダウン症のお子さん、多動ぎみやコミュニケーションを取るのが難しいなど発達に課題があるお子さんの療育を行っています。言語聴覚士は、話す、聞くといった機能の維持・向上を助けるエキスパート。嚥下などの口腔機能の改善や摂食指導なども行っています。保健所や療育施設などとも連携しながら、お子さんの状態に合わせてコミュニケーション能力を引き出すための訓練をしてくれています。
子どもの未来を楽しみに、今の成長を楽しもう
先生にとって、小児科の魅力とは何ですか。

子どもが成長する様子を見られることですね。私はNICU(新生児集中治療管理室)に10年以上勤め、新生児医療に深く関わりました。1000グラム未満で生まれてきた赤ちゃんがたくましく育っていく様子も、何度も見ています。発達が遅く、ハイハイが精一杯だった子がいつの間にか立って歩き、達者におしゃべりしたりいたずらしたり……。また、発達の遅れが見られるお子さんも、大変なことも多いかと思いますが、家族で支えて、少しずつ成長されていく様子も見せてもらっています。子どもの生きる力、成長力には、いつも感動させられます。過去に担当した子から、「おかげさまで大学に入れました」「就職して元気でやっています」なんてお便りをもらうこともあり、この仕事をしていて良かったなと思いますね。
診療の際に心がけていることを教えてください。
お子さんと、その親御さんのお話をしっかり伺うことです。当院のテーマは、「安心してできる子育て」をサポートすること。ただ病気を治すだけではなく、安心して育児に取り組める環境を支えるクリニックでありたいと思っています。例えば、赤ちゃんがゲップとともに嘔吐するのは極めて自然な現象ですが、初めての育児では「放っておいていいのかな」「本当に大丈夫なのかな」と心配になるでしょう。そうしたちょっとした心配事にも、親身に寄り添ってお話を聞き、必要なアドバイスをするのが当院の役割です。どうぞ、気兼ねなく相談にいらしてください。
最後に、読者にメッセージをお願いいたします。

親御さんには、お子さんが安心して楽しく生活できる環境や、心地良く過ごせる居場所をつくってあげてほしいです。まずは、お父さんお母さんがお子さんの成長を感じてあげることが大切。できていないことを注意するだけでなく、今できていることを喜び、できないことができるようになる日を楽しみに待ちましょう。小さなことでも、できたことを認めてもらえた、褒めてもらえたという達成感が次の成長につながります。育児に不安があるとき、悩みを抱えたときは、いつでも当院に頼ってください。私たちと一緒に、「あなたがいてくれて良かった」というメッセージをお子さんに伝え続けていきましょう。