コントロールできる可能性も
関節リウマチは早期治療がカギ
長澤クリニック
(川越市/本川越駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
日本国内だけで数十万人の患者がいると言われる関節リウマチ。「お年寄りがかかる病気」というイメージを持ちがちだが、実はその発症のピークは40代前後で女性に多いのが特徴だ。悪化すれば関節が変形してしまう怖い病気で、以前は有効な治療法もなかったため、一度かかれば寝たきりになることもあり、日常生活の質が著しく低下することは避けられなかった。しかし近年では治療技術が大きく進歩し、早い段階で治療すれば症状をコントロールして不自由のない生活を送れることもある。長年大学病院でリウマチ・膠原病治療の臨床と研究に携わり、2014年に「長澤クリニック」を開業。日本リウマチ学会リウマチ専門医でもある院長の長澤逸人先生に、現代の関節リウマチ治療について聞いた。
(取材日2016年11月30日)
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q関節リウマチとはどんな病気ですか?
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A
膠原病の一つで、手足の指や手首、足首、肘、膝などの関節に炎症が起こり、腫れや痛み、こわばりが生じる病気です。中には一過性のものもありますが、未治療のまま放っておくと、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に悪化する場合が多いですね。最初は痛みや腫れのみで済んでいたものが、悪化して骨の破壊が進むと関節が変形して上手く動かせなくなり、日常生活にも支障をきたし始めます。また関節の症状以外にも、発熱や倦怠感、体重の減少などの全身症状が見られたり、皮膚のしこりや潰瘍、胸部痛や息切れなどの心肺の症状が現れることもあります。
- Q最初はどんな症状が出るのでしょう?
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A
いきなり肘や膝など大きな関節が痛む場合もなくはないですが、最初は手や足を動かしにくいとか、節々が痛んだり腫れてくることが多いですね。また、「朝のこわばり」といわれていますが、特に起床直後から手が握りにくいとか腫れぼったい感じが続くと訴える方もいます。全身にだるさを感じたり、微熱や人によっては高熱が出る場合もあります。病気が進行すると骨が破壊され、関節変形による機能障害が起こります。昔は緩やかに進行する病気だと考えられていましたが、現在では発症から2年の間に悪くなるとわかってきました。一度変形してしまった関節は元には戻せないので、早期発見・早期治療が非常に大切なのです。
- Qどんな人がなりやすいのですか?
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A
日本には関節リウマチの患者さんが約60~100万人いるといわれています。その内訳を見ると女性が圧倒的に多く、男女比は1対4ぐらいです。初期症状が出てくるのは30~40代で、働き盛りの世代に多いのも特徴です。関節リウマチのはっきりした発症原因はまだわかっていません。ただ、遺伝的に「リウマチになりやすい素因」を持っている人に喫煙などの環境由来の危険因子が重なることにより、発症するのではないかと考えられています。現在、危険因子だとわかっているのは、まずは喫煙、それから口腔内の衛生環境で、歯周病などを起こしているとリウマチにもなりやすいと言われています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1看護師による事前問診
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院長の診察の前に、問診票をもとに看護師が事前問診を実施。症状が起き始めた時期や状態はもちろん、合併症として現れることがある口内炎や貧血、ドライアイの有無、これまでの検査歴やアレルギー症状についてなど、一つひとつ丁寧に聞いていく。小さな疑問や悩みごとなどがあるなら、ここで相談することも可能だ。問診票はクリニックのホームページからダウンロードできるので、あらかじめ記入しておけば、待ち時間を短縮できる。
- 2院長による診察
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問診票の内容と事前問診での話をもとに、日本リウマチ学会リウマチ専門医である院長が、より詳しく患者の話を聞いていく。実際に手指や手首などの関節を1つずつ圧迫(触診)して、痛みがあるか、腫れがあるかを確認する。診断・治療方針決定のために必要であれば、診察後に血液検査や尿検査、レントゲン撮影なども行う(採尿は診察前にすることも可能)。約1週間で血液検査の結果が出るので、その頃に2回目の診察となる。
- 3患者一人ひとりに合った治療方法を提案、実践へ
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必要ならエコー検査も行い、実際のデータをモニターで見せながら検査結果を説明する。関節リウマチの治療には薬物療法、リハビリテーション、外科的治療の3つがあるが、まずは適切な薬を使って腫れや痛みを除き、関節破壊の進行を抑え、日常生活に支障のない「寛解」状態を保持することが目標。飲み薬からはじめ、その効果と患者の希望双方を考慮した上で、点滴や皮下注射薬などを含め患者一人ひとりに合った治療法を選んでいく。
- 4継続的な通院が大切
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一つの治療法は、開始から3ヵ月ほどで効果判定を実施。患者から前回診察後の状態の変化を詳しく聞くとともに、血液検査やエコー検査、レントゲンなどで状態を確認。副作用が出ていないか、関節破壊の進行はないかなどをチェックし、薬の種類や分量などを調整していく。もちろん患者と相談しながら行われるので、「自分で打つタイプの皮下注射がいい」などの希望も叶えることが可能だ。無理なく治療を続けやすい環境になっている。
- 5関節リウマチ治療は早期開始と有効性・安全性が重要
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一度変形した関節は元には戻らないので、まず悪化する前に治療を始めることが何より大切。昔は「不治の病」と言われた関節リウマチだが、薬物治療の進歩により初期段階で適切な治療を行えば、日常生活に支障のない状態を保てる可能性もあるという。もう一つ大事なのは、薬の用法・用量を守ること。薬が強すぎると感染症を起こしやすくなるなどの副作用もあるので、定期検査では有効性・安全性をしっかりチェックする。