春田 亘史 院長の独自取材記事
ハルタ眼科
(大阪市西成区/花園町駅)
最終更新日:2024/08/09

大阪メトロ四つ橋線・花園町駅2番出口から西へ徒歩約3分、アクセスが便利な場所に「ハルタ眼科」がある。昭和40年代からこのエリアで診療を続ける診療所で、地域に根差した眼科診療を提供している。2代目院長を務める春田亘史(ひろし)先生は、大阪大学医学部を卒業後、大阪労災病院、大阪大学医学部附属病院、大阪鉄道病院などで経験を積んだ後、同院を引き継いだ。日本眼科学会認定眼科専門医の資格を持ち、専門性の高い診療も行う春田院長が、同院で実践する地域密着型の眼科診療とは? そして、昔ながらの下町情緒が残る地域で何を大切に受け継ぎ、どのような新しい取り組みをめざしているのか? 春田院長に語ってもらった。
(取材日2024年7月29日)
きちんと理解・納得してもらうことが大切
歴史の長い眼科医院ですね。

診療所の場所は多少変わっていますが、昭和40年代からこの辺りで祖父が診療していました。父も眼科医でしたが、父の診療所は福島区にあったので、この診療所の院長としては、私が2代目ですね。祖父、父とも眼科医という環境で育ちましたが、子どもの頃から眼科医をめざしていたわけではなく、一つの契機になったのが、高校生の頃に起こった阪神・淡路大震災です。祖父がやっていた芦屋の分院が壊れたりして、自分も手伝わなければいけないという気持ちになったことを覚えています。
先生のご経歴を教えてください。
大阪大学医学部を卒業して大阪大学医学部附属病院で研修を受けた後、勤務したのが大阪労災病院です。眼科の手術に力を入れている病院で、白内障の手術をはじめ多くの経験を積むことができ、とても勉強になりました。その後は、大阪大学大学院に移り、学生時代から免疫疾患に興味があったことから炎症性疾患の研究に従事しました。大阪大学は炎症性疾患の研究に力を入れており、私もマウスを使った治療効果の判定などに取り組んだのです。大学院修了後は、再び勤務医として大阪鉄道病院で診療に携わり、上司の先生に手取り足取り指導していただきました。
こちらでは2012年から診療を行ってらっしゃるんですね。

当院は私が継ぐことになっていたので、こちらで診るようになったのですが、祖父が高齢になり、父の病気もあって2014年に急きょ院長を引き継ぐことになったのです。その際に、患者さんがより受診しやすい診療所をめざそうと考えてリニューアルを行いました。たくさんの患者さんがおられ、診療を休止することはかなり難しかったのですが、4ヵ月間だけ期間をいただいて、靴のまま入ることができ、車いすでも利用しやすいバリアフリー設計の診療所に建て替えました。
どのような患者さんが来られますか?
眼科はもともとご高齢の患者さんが多い診療科なのですが、この辺りはかなり高齢化が進んでいることもあって、お年を召した患者さんが多いですね。独居の高齢者や他のエリアから移ってきて、行政のサポートを受けながら生活しておられる方もたくさんいらっしゃいます。そうした患者さんと接する際に心がけているのは、丁寧に診させていただき、納得いただけるように説明することです。例えば、認知症の患者さんなら、ご本人だけでなくご家族や付き添いの方にも症状や治療について理解していただけるよう、わかりやすい説明が欠かせません。場合によっては介護職の方からご家族に連絡していただき、後日、説明のためにご家族のみ来院いただくことも可能です。混み合ってくると、丁寧な対応が難しくなるときもありますが、決して流れ作業的な診療にならないように注意しています。
先進的な診療と親しみやすい雰囲気
どのような主訴の方が多いのですか?

目が見えづらい、目が痛いといって来院される方が多く、多いのは白内障、緑内障、糖尿病網膜症の患者さんですね。緑内障、糖尿病網膜症などは自覚症状が乏しい病気で、医療機関への受診が遅れてしまうと、来られた際にはかなり病気が進行している可能性もあります。軽度だったとしても、病名を告げられるとショックを受ける方もいると思いますので、診療結果の説明には細心の注意を払うようにしています。
設備機器が充実していますね。
緑内障の診断などに使う視野検査計については、先進的なものを導入しています。緑内障や加齢黄斑変性の検査に用いる眼底をチェックするための設備も導入していますが、5年ほど経過しており、新しいものを導入したいと考えているところです。また最近では、視力検査はモニターを見ながら行うところが多くなっていますが、昔ながらの5メートル離れた位置から見る方式を採用しているのが当院のこだわりです。モニターでの視力検査は、大人の場合はさほど問題はないのですが、姿勢が安定しないお子さんやご高齢の方などは検査結果の信頼性が低くなる可能性があるからです。一方、週に2回、眼鏡作成技能士に来てもらっており、私と相談しながら患者さんへの眼鏡の提案をしています。眼鏡は案外調整が難しく、患者さんに合った眼鏡を提供するために眼鏡作成技能士の意見がとても役立ちます。
レーザー治療の機器も導入しているのですね。

糖尿病網膜症や網膜に穴が開いてしまう網膜裂孔、ご高齢の方の転倒や外傷による網膜の損傷などの治療に用いています。最近は緑内障の治療でもレーザーを使えるようになってきたので、今後は当院でも取り入れたいですね。レーザーと聞くと、「痛いのでは」と思われるかもしれませんが、事前に点眼による麻酔を行うので、痛みの心配はほとんどないでしょう。
ベテランのスタッフさんが多いと聞きました。
最も長いスタッフは父の代から勤めてもらっており、勤続25年になります。ご高齢の患者さんの場合、あまり若いスタッフよりは、ある程度ご自身の年齢に近いスタッフのほうが気楽に話しやすいようですね。また、長年眼科の診療に関わっているので、患者さんからの疑問や質問にもきちんと対応してもらえるので助かります。
一人ひとりの患者としっかり向き合う
校医も務めておられるそうですね。

近隣の中学校と小学校で学校医を務めており、工業高校の健康診断にも協力しています。眼科検診などを担当しており、地域の医師会から打診されて、地域貢献になるのではと考えて引き受けました。高校生の中には、小学校、中学校時代に不登校になって、あまり健康診断の経験がない生徒もいて、アドバイスなどを行うこともあります。当院に外国の方がよく来院されるように、学校にも外国籍の子どもが多く、口頭で説明するだけでなく、より伝わるように、できるだけ紙に書いてお持ち帰りいただけるようにしています。
休日はどのように過ごされますか?
時間も費用も限られているので(笑)、週末にはランニングをしています。走ると気持ちが良いので、多いときは数キロくらい走ります。手軽な健康法でもあります。また、中学・高校時代は野球をやっていたので、今でも野球をよく観ています。
今後の目標を聞かせてください。

地域密着型の眼科医院として、一人ひとりの患者さんとしっかり向き合いながら、当院でできる診療を一つ一つ提供していくという姿勢は変わりません。医療は日に日に進化しているので、患者さんに対して治療の選択肢を増やすという意味でも、新しい取り組みも欠かせませんね。緑内障のレーザー治療の導入を考えているのも、目薬による治療と手術だけでは不十分だと思うからです。毎日点眼するのは手間がかかるし、ご高齢の方は点眼を忘れてしまうことも考えられます。だからといって、負担が大きな手術を受けるのはやはりハードルが高いし、手術によって期待できることもまだ限定的ですからね。
読者や地域の方にメッセージをお願いします。
患者さんの中には、見えづらさを感じていたけれど、年齢のせいだと思っていたという方が少なくありません。目の調子は悪いけれど、眼科を受診するのは何となくハードルが高いと思っている方もいらっしゃるでしょう。当院では、そうした方々の受診時の不安が少なくなるよう体制を整えています。目のことで心配なことや、気になることがある場合は、どうぞ気軽にご相談にいらしてください。