矢野 哲郎 院長の独自取材記事
矢野内科クリニック
(松山市/道後温泉駅)
最終更新日:2025/01/24

松山市郊外にあり、湯山や祝谷など奥道後地域のホームドクターを務める「矢野内科クリニック」の矢野哲郎院長。患者層は子どもから100歳を超す高齢者までと幅広い。院長は内科・消化器科のスペシャリストとして、生活習慣病改善などを通じ、地域の暮らしの質の向上にも尽力。患者のニーズに応えることを常に心がけ、その一環として、経鼻胃内視鏡やAI搭載インフルエンザ検査機器、訪問診療用の小型の超音波検査装置や内視鏡など多彩な先進機器を導入している。訪問診療では看取りまで担い、家族や看護・介護職らと本人の意思を共有する“アドバンスケアプランニング”にも取り組む。「地域に尽くすということが私の原点です」とほほ笑む矢野院長。取材で語ってもらった診療方針や訪問診療への思いなどからも、医師としての強い責任感が垣間見えた。
(取材日2019年6月17日/再取材日2024年10月18日)
人を診る、ホームドクターをめざし開業
開業の経緯を教えてください。

地元の愛媛大学医学部を卒業後、勤務医として西条中央病院や松山市民病院の内科、消化器科に勤めてきましたが、基幹病院は患者さんの数が多く、自分の専門とする疾患の患者さんを中心に診ることになります。そうなると、どうしても疾患にアプローチする目線になってしまう。でも、同じ疾患でも人により症状は違いますし、適した治療方法も異なります。次第に「もっと人を診たい。人を全体的に診ることに時間をかけたい」と考えるようになり、開業に至りました。めざすのは、患者さん一人ひとりの生活に寄り添う地域のホームドクターです。
診察にあたり、大切にしていることは?
常に「患者さんのためになるか」という視点で考え、患者さんに害を与えないことを念頭に置いています。特に、たくさんの薬を服用することで、かえって体調が悪くなってしまうポリファーマシーには注意を払い、適切な処方を勧めています。また、受診することで不安を助長することのないよう、話をよく聞き安心していただくことも大切にしています。検査を受けすぎて神経質になったり、検査結果を気にして不安になったりする方もいらっしゃいますから、一つ一つ丁寧に説明をして、ご納得いただく。やみくもに検査をするのではなく、タイミングや必要性を見極めて、一人ひとりに適切な対応をしていく。やはりクリニックは、安心していただける場所でなくてはなりませんからね。
どのような患者さんが多いですか?

2002年の開院時と比べ、糖尿病の方が顕著に増えています。糖尿病には大きく分けて1型と2型があり、2型糖尿病が圧倒的に多いのですが、その原因はカロリーの取りすぎや運動不足、肥満などといわれます。だから糖尿病は生活習慣病の一つに挙げられるわけなのですが、生活習慣が悪いからと叱ったり、強く指摘したりすると、患者さんは落ち込んでしまいますよね。治したくて受診したのに落ち込むのでは精神面にも良くないですから、私は「褒めて伸ばす」タイプになろうと。どうしても注意すべき場面はありますが、良いところを見つけ、そこを伸ばしていい方向に持っていけるようにしています。何より治療に前向きになってもらうことが一番です。
先端の検査機器を導入し、患者の心身の負担軽減を
生活習慣病の患者さんに対しては、どのようなアドバイスをされていますか?

患者さんには「生活の中でできることをしてくださいね」とお話しします。階段を使うとか、できるだけ歩くとか。暮らしに無理なく取り入れられる動きです。ただし、歩くことで膝を痛めてしまう恐れもあるので、患者さん全体をしっかりと診て、膝が悪い方は先に膝の治療をしてから運動を勧めるようにしています。この地域は農家さんも多く、農作業は体を動かすものなので、運動はもう十分にできていることになります。生活習慣病には、このように皆さんの生活背景を理解した上でのアドバイスが求められます。開業医になり、患者さんの職業やどんなライフスタイルを送っているかなどはより考えるようになりましたね。
発熱の外来も開設されていると聞きました。
新型コロナウイルスの流行を受けて、発熱の外来を開始しました。皆さんに安心して受診していただけるよう、発熱患者さんと一般の患者さんで、診療時間、待合、診察室を分けています。なお、発熱の外来は電話による予約制となります。お電話いただければ、柔軟に対応できる場合もありますので、電話予約にご協力をお願いいたします。また、当院はスマホから、受診前にご記入いただけるAIウェブ問診も取り入れています。ウェブ問診には、当院のホームページからアクセスできます。特に発熱の外来を受診される方は、事前にウェブ問診にご回答くださると診療をスムーズに受けていただけますので、ぜひご活用ください。
検査機器を数多く導入されているそうですね。

新たな検査機器の情報にアンテナを張り、患者さんの負担を軽減できそうなものがあれば、積極的に取り入れてきました。先進の経鼻内視鏡のほか、血液検査に関しても、血球測定に加え炎症や感染症の早期診断に有用なCRPを測定する機器を導入し、あらゆる可能性にスピーディーに対応できるよう備えています。最近だと、AI搭載のインフルエンザ検査機器を採用しましたね。問診情報などを入力し、機器で喉を撮影するとAIが微細な所見や症状を迅速に検出してくれるんです。綿棒を使って粘膜を採取する必要はありませんし、発熱の外来でも活躍してくれます。また、当院は訪問診療にも注力しており、患者さん宅に持っていける小型の超音波検査装置や胃内視鏡も新しく取り入れました。小型の内視鏡は胃ろう交換後の状態確認などに用いるもの。カテーテルを入れる腹部の穴から挿入しますので、口から入れる内視鏡検査のような負担を感じることはありませんよ。
終末期医療・ケアに尽力。患者が望む最期を実現したい
訪問診療に取り組まれているのはなぜでしょう。

この辺りはもともと、交通が不便な土地柄ではありましたが、最近はバスの本数も減るなど、以前に増して医療機関を受診しづらい環境になってきました。ご高齢の方は、車の運転ができなくなったり、足腰が弱くなったりすると通院がたいへん難しくなります。そこをカバーするため、ご高齢の方がご家族に送ってもらいやすい土曜は午前・午後ともに診療したり、当院を乗合送迎サービスの停留所として登録したり、と工夫するとともに、かかりつけにしてくださっていた患者さんが通院困難になった場合などにご希望に応じて訪問診療を行い、看取りまでサポートしているのです。また、遠くに引っ越すため当院に通えなくなった患者さんには、訪問診療の先生を紹介したり、引っ越し先のエリアで信頼の置ける先生につないだりと、できる限りのフォローをしております。
看取りまで担われているのですね。
ええ。住み慣れた自宅で最期を迎えたいと思っている患者さんがいるならば、その思いをかなえて差し上げたいという思いがあります。例えば、入院が長引いて、やっと退院できたと思ったら容態が急変してしまったとしましょう。そんなとき、ご本人はそのまま自宅で最期を、と望んでいたとしても、ご家族が病院に戻してしまって、そのまま亡くなるというケースもあります。こういった行き違いは、私たち医療者が患者さんの意思をしっかりとご家族にお伝えしていれば防ぐことができるかもしれません。私自身の経験を振り返っても、もっとうまくできていれば……という心残りが過去にあります。だからこそ、一人ひとりの思いに寄り添い、患者さんが望む最期をかなえる看取りを実現することを強く意識しているんです。
読者にメッセージをお願いします。

開業22年目を迎え、「地域に尽くす」という私の原点を改めて強く意識するようになりました。皆さんに少しでも有益な医療を提供するために、医療技術や機器、知識を常にアップデートしていかねばと思っているところです。超高齢社会の中で必要性を感じているのは、やはり、患者さんが望む人生の最期を迎えるためのサポートですね。終末期の方を診るにあたっては、医療者だけでなく、ご家族や介護担当者などご本人に関わる人々とともに、人生会議とも呼ばれる“アドバンスケアプランニング”を行い、その方がどこで、どんなふうに最期を迎えることを望んでいるのかを共有・尊重した上で、治療を提供しています。そのようにして患者さんの看取りまでしっかりと務めることが、医師としての使命だと感じています。そして、お子さんからご高齢の方まで「まずは矢野内科クリニックに行ってみよう」と思っていただける。そんな存在でありたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック(大腸内視鏡検査を含まない場合)/3万5000円
人間ドック(大腸内視鏡検査含む場合)/4万5000円
※すべて税込みです。
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