夜間尿意で目覚めてしまう
夜間頻尿について
ふじのもり腎泌尿器科クリニック
(京都市伏見区/墨染駅)
最終更新日:2025/04/23


- 保険診療
ぐっすりと眠りたいのに、夜間何度もトイレに行ってはいないだろうか? 現在、40歳以上の男女で約4500万人が夜間1回以上排尿のために起きるといわれている。就寝中頻繁にトイレに行くことで、睡眠の質が落ちて疲労感を感じるなど、QOL(生活の質)に大きな影響が出かねない。「頻尿自体が病気ではありませんが、病気の何らかのサインの場合もあるため注意が必要です」と話すのは、京都市伏見区にある「ふじのもり腎泌尿器科クリニック」の奥野博院長。年齢のせいと放置せず、早めに相談し、治療をして改善を図っていくことが大切だ。今回は夜間頻尿の症状や原因、放置することのリスク、その治療方法などについて取材した。
(取材日2024年11月25日)
目次
夜間頻尿は病気が隠れている可能性も。「年のせいだから」と諦めず専門の医療機関に相談を
- Q夜間頻尿とはどのような症状のことをいうのでしょうか?
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A
▲早めに相談し、治療をして改善を図ることが大切
夜間頻尿の定義としては「夜間に1回以上、トイレに行くために起きる。かつそれに困っている」という状態です。ただ実際のところ夜間に1回くらい起きても、それが翌日の生活に支障になる人はさほど多くありません。臨床的には夜間2回以上の排尿は良好な睡眠を阻害して、生活の質を阻害するといわれています。また夜間にトイレに行ったとしても、すぐに入眠できればいいのですが、トイレのために起きることで眠りが浅くなり疲れがたまる、パートナーが何回もトイレに行って隣で寝ているご家族がぐっすり眠れないといった、ご本人または周囲の人が「つらい、困っている」と感じている場合に、治療の適応となります。
- Q夜間頻尿はどのような原因で起こりますか?
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A
▲京都泌尿器科医会会長を務めている奥野院長
主な原因は大きく3つに分かれます。1つめは、過活動膀胱や前立腺肥大症などにより、膀胱に尿をためる膀胱蓄尿機能が低下することで頻尿となります。2つめは多尿です。通常だと24時間均一に尿が作られますが、過剰に水分を摂取したり、加齢により脳からの抗利尿ホルモンの分泌が低下するなど、さまざまな理由から夜間睡眠時にたくさん尿が作られることが原因となります。3つめは睡眠障害で、中途覚醒や早期覚醒してしまうためトイレに行ってしまう状態です。また女性の場合は出産や加齢、肥満などによって骨盤内の臓器を支えている筋肉や靱帯が緩み、子宮など骨盤内の臓器が下がり膀胱を圧迫することで頻尿となる骨盤臓器脱も挙げられます。
- Q受診をためらいがちですが、早めに相談することが大切ですね。
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A
▲夜間頻尿が病気の何らかのサインの場合もあるため注意が必要
夜間暗い中でトイレに何度も往復することで転倒、ひいては骨折してしまうこともあり、たいへん危険です。また夜間に2回あるいは3回以上トイレに行く人は、そうでない人に比べて死亡率も増加するという研究報告があります。頻尿が原因で死亡率が高くなるわけではありませんが、夜間頻尿は病気の一種の表現だと考えます。高血圧症や糖尿病、脳血管障害、心疾患、肥満症を含めたメタボリックシンドロームなど、いろんな病気のリスクファクターをたくさん持ってる人ほど夜間頻尿になりやすいですね。検査することでいろいろなことがわかってくることがありますので、夜間頻尿は年のせいだと思わずに、早めに病態を調べてもらうことが大事です。
- Q夜間頻尿の検査にはどのようなものがありますか。
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A
▲膀胱炎の有無などを確認するため尿検査を実施する
問診、身長、体重、血圧測定、膀胱炎の有無などを確認するための尿検査を行います。必要に応じて、腎臓の機能や糖尿病の有無などを調べる採血、男性の場合は腹部超音波検査装置を使った前立腺肥大症の診察を行います。泌尿器科は陰部の視診や触診されるのではと羞恥心や、「痛そう」といった不安から受診をためらう方が多い印象ですが、超音波検査は下腹部にプローブを当てて調べるだけなので下着を脱ぐ必要がなく、痛みもありません。女性で骨盤臓器脱が疑われる場合は、女性看護師立ち合いのもとで内診をする場合もあります。また排尿日誌に、何時に寝て、何時にトイレに行ったかなどを記録していただき、夜間頻尿の診断や治療に役立てます。
- Q診療に際しては、どのようなことをされていますか?
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A
▲患者一人ひとりに合わせて、生活習慣の改善へのアドバイスを行う
生活習慣の改善への指導やアドバイスをしたり、お薬を処方したりしています。生活改善については、「夕方に軽い運動をしましょう」「昼間は日光を浴びましょう」「寝る数時間前はアルコールやカフェインの入った飲料を控えましょう」といった、生活の中で取り組めることを具体的にお伝えしています。お薬を処方する際は、前立腺医肥大症の治療薬、尿をためる機能を高めるための薬など、一人ひとりの状態に合わせて選びます。それでも改善が見られない方には、前立腺肥大症手術、骨盤臓器脱手術などもあります。神経因性膀胱、尿失禁の方には干渉低周波治療が有用なケースもあり、当院では保険診療で干渉低周波治療を受けられます。