長谷川 朋也 院長の独自取材記事
ソフィアレディスクリニック
(相模原市中央区/淵野辺駅)
最終更新日:2024/04/11
JR横浜線淵野辺駅南口から徒歩2分の場所にあるのが、「ソフィアレディスクリニック」だ。2023年6月に現名誉院長である佐藤芳昭先生から、長谷川朋也先生が院長を引き継いだ。2001年から不妊治療を中心に、女性のためのかかりつけ医として地域に貢献してきた同院。体外受精に対応できる設備を用意し、高度な不妊治療も行う。長谷川院長は地元・相模原市の出身。東京医科大学を卒業後、日本生殖医学会生殖医療専門医としてクリニックや総合病院で経験を積み、2019年にはアメリカ・ハーバード大学でも2年間学んだ経歴を持つ。院長就任後、新たな取り組みも始めているという長谷川院長に、クリニックの変化や不妊治療についてなど、詳しく聞いた。
(取材日2024年2月27日)
不妊治療歴20年以上のクリニックを承継
どういった患者さんがいらっしゃいますか?
当院にいらっしゃる患者さんの7割が不妊症の方で、3割が不正出血や更年期障害などの一般的な婦人科疾患の方です。佐藤先生の「女性の四季を診る」というポリシーを踏襲していきたいと思っています。女性は思春期・妊娠期・更年期・老年期と、内分泌ホルモンが四季のように変化します。その変化に伴う不調やトラブルをすべて診られるクリニックでありたいですね。不妊症は35~40歳の方が最も多く、次いで多いのは40代の方です。仕事と不妊治療を両立される患者さんがほとんどなので、患者さんが通いやすいよう、採血や検査の時間を臨機応変に対応できるようにしました。ウェブやSNSを通じて予約していただけます。
2023年6月に院長に就任されましたが、経緯など教えてください。
実は、私の父も橋本駅近くで「長谷川レディースクリニック」という産婦人科を開業していまして、前院長の佐藤先生は父の先輩でした。私が当院の院長となったのは、佐藤先生が後継者について父に相談されたことがきっかけです。両院の距離も近いことや「長谷川レディースクリニック」で勤務している兄弟の協力もあって、父と佐藤先生の意志を引き継いで、両院を運営していく決意を固めました。
不妊治療は、どういったプロセスで治療が行われますか?
初診時には、まずは妊娠のメカニズムから説明するようにしています。妊娠のメカニズムはとても複雑なのですが、知識がない患者さんも多くいらっしゃるので、基本的なところから理解していただかなければなりません。不妊治療のステップとしては、男女双方の検査を行いながら、同時並行でタイミング法・人工授精・体外受精の順に進みます。大切なのは、男女ともに治療をスタートさせることです。初診の患者さんには、最初から男性も一緒に来院してほしいとお願いしています。妊娠は、精子と卵子の遺伝子が50%ずつ合わさって受精卵になるので、女性側だけ治療をしていても意味がありません。過去にも女性のタイミング法だけ行っていて、精子を検査したところ無精子症だったという事例もあります。ですので、不妊治療は男女ともに行うことが大切です。
痛みに配慮した治療や検査を心がける
日本の不妊治療において、長谷川院長が懸念されていることは何でしょうか。
不妊治療を開始する年齢が高いということですね。欧米に比べても初診の年齢が高いことがわかっています。それは、妊娠に関する教育が行き届いていないことにも原因があります。卵子は出生したときに作られ、その後は新しく作られることはありません。さらに、毎月1000個程度自然消滅していきます。つまり卵子の無くなるスピードは個人差があり、生まれたときに作られた卵子がなくなったら、妊娠できなくなるということです。そうした基本的な教育が行き届いていないことが、不妊治療に対する理解不足にもつながっていると思います。
診療において大切にしていることを教えてください。
痛みに配慮した治療を心がけています。私は男性なので、女性の痛みはどこまでいってもわかりません。わからないからこそ、治療ではできるだけ痛みが少ないようにと思っています。不妊治療には、「採卵」といって膣から針を卵巣に刺して卵子を取り出す治療がありますが、その際にも麻酔を積極的に使用しています。使用する麻酔は、患者さんの意向で、局所麻酔・ガス麻酔・静脈麻酔から選択可能です。採卵後にゆっくりお休みいただけるよう、ベッドも用意しています。不妊治療が保険適用になり、コストを見直す過程で麻酔使用を控えるという考え方も一般的にはあるとは思いますが、患者さんの身体的苦痛が少しでも和らぐなら使うべきだと当院では判断しました。痛みがトラウマとなる場合もあるので、苦痛を少しでも和らげることは重要だと思います。
苦痛を和らげるために、他に具体的に取り組まれていることはありますか?
新しく導入したものでは、細いタイプの硬性子宮鏡があります。硬性子宮鏡は子宮用の内視鏡のことですが、今回経口が細いタイプのものを採用したので、挿入したときの痛みをあまり感じずに済みます。今後はその子宮鏡を使用した検査も積極的に行っていく予定です。不妊の原因の1つに、子宮内に炎症があったり内膜のポリープがあったりして、着床の妨げになっていることがあります。そうした原因を、いかに痛みや負担を抑えながら診断していくかということで、新たに導入を決めました。ポリープが見つかった場合には、日帰りでの手術も可能です。通常大規模病院へ紹介して入院での手術になることが多いですが、当院では日帰りで手術ができるので、患者さんの負担は少なくなると思います。
留学での経験を生かし世界基準の取り組みの実施めざす
2019~2021年まで在籍したハーバード大学では、どういったことを学んでいましたか?
特に生殖医療の中の炎症や免疫分野に強い研究室でしたので、炎症と妊娠のメカニズムや細胞死の研究に従事していました。また、渡米していた時期がちょうど新型コロナウイルス感染症の流行下だったため、コロナウイルスの治療薬の研究にも関わりました。当時のアメリカは新型コロナウイルス感染症による死者が多く、研究室のボスには「死ぬかもしれないから、研究を断っても君には責任はない」と言われましたが、「人類のための大いなる一歩だと思って研究してくれたらうれしい」という一言で、研究することを決意しましたね。研究室には世界各国から優秀な人が集まっていて、週ごとの研究成果を発表する場では、論文が書けるのではないかという量の発表を行う人もいます。成果主義の厳しい環境でしたが、心身ともに鍛えられた2年間でした。
妊娠の準備や更年期障害の予防となるような取り組みを始めるそうですね。
はい、プレコンセプションケアを行う外来を始めました。コンセプションとは、新しい命を授かることを意味します。つまり、プレコンセプションは妊娠の前段階のことです。将来の妊娠を考えながら、女性やカップルが自分たちの生活と健康を考えることをプレコンセプションケアといい、2013年にWHOが提唱して以来世界でその考え方が広まっています。日本でも近年注目されており、妊娠前から栄養状態を気にする方も増えました。そこで、当院では将来の妊娠に向けて正しい知識をつけて準備ができるよう、生殖医療専門医と管理栄養士、妊活に特化した看護師が、カウンセリングやアドバイスを行います。妊活を考える前の学生さんや男性のご相談も可能です。また、これから更年期を迎える方には、健康で過ごすための予防的な栄養アドバイスなども行います。現在の栄養状態や、卵巣・卵子の状態も確認できますので、お気軽にご相談ください。
今後のクリニックの展望や、力を入れたいことなどお聞かせください。
日本は世界に比べて妊娠や性に対する教育が遅れていると感じます。教育の遅れが病気のまん延につながったり、不妊治療に影響したりしているのが現状です。そこで私は、妊娠や性に対する教育を広めていきたいと思っています。教育機関に出向いて講演することや、インターネットやメディアを通じた情報発信などに力を入れていく予定です。クリニック周辺には大学も多いですので、学生さんを対象とした講演などができればうれしく思います。もちろん、ライフワークの中心となる不妊治療にも更に力を注いでいきます。培養室を改築し、提携する他院からの患者さんも受け入れ、相模原地域の体外受精の拠点となれるよう計画中です。不妊治療で悩む患者さんが、できるだけ早く幸せな卒業をかなえられるようサポートできる範囲を拡大します。また、これまで同様、かかりつけ医として地域にも貢献できればと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とはプレコンセプションケアの外来/1万2000円~