弓倉 威己 院長、笹森 智絵 先生の独自取材記事
弓倉歯科医院
(大阪市此花区/千鳥橋駅)
最終更新日:2021/11/02

阪神なんば線千鳥橋駅から徒歩7分ほどの場所にある「弓倉歯科医院」。パステルカラーを基調とした院内は、窓も多く明るい雰囲気。同院は、弓倉威己院長の母親が開業したという歴史あるクリニック。院長自身、既に40年以上にわたって診療しており、16年ほど前からは娘である笹森智絵先生も加わった。診療においては、できる限り患者の歯を残すよう尽力する弓倉院長。「根管治療の際にラバーダムを使って感染を防ぐなど、基本的な処置をしっかり行えば歯を残すことにつながります」と優しく語る。笹森先生は障害者歯科の分野でも研鑽。車いすで来院する人や全身疾患を持つ人などを診療する際、その経験が役に立っているという。親子で力を合わせて診療にあたる2人に、開業の経緯から今後の展望まで幅広く聞いた。
(取材日2018年8月9日)
地域に根差して診療。数世代にわたって通う家族も多い
開業の経緯を教えていただけますか?

【弓倉院長】私の母が「弓倉歯科医院」を開業しました。母はもともと和歌山県で歯科医院を開業していたのですが、災害の影響で大阪に出てきまして。すぐ近くの交差点の向こう側で開業した後、現在の場所に移転してきたんです。かつて此花区は大阪有数の工業地帯で、駅前の商店街もにぎわっていましたね。私は大阪歯科大学を卒業後、先輩のクリニックでの勤務を経て、ここで診療するようになりました。その傍ら、週1回は矯正を専門とする先生の所に通い、矯正の勉強もさせていただいたんです。ここで診療を始めてもう40年以上になりますね。35年ほど前に院長を引き継いだ後も母と2人で診療してきました。母は80歳ぐらいまで診療していたんです。102歳になる今でも元気にしていますよ。
クリニックの患者層についてお聞かせください。
【弓倉院長】歯科医院が少なかった頃は、西淀川のほうからも患者さんが来ていました。母の代から長年通ってくださる患者さんもおられます。そうした方のお子さんやお孫さんなど、数世代にわたって通ってくださるご家族も多いですね。近くの小学校の校医を務めていた時には、子どもたちの顔を見ただけで、「この子は私が治療した患者さんのお子さんだ」とわかったものです(笑)。以前に比べると子どもたちは少なくなってきたかもしれません。かなり前から予防にも力を入れてきましたので、メンテナンスのために通ってくださる患者さんも多いですね。
【笹森先生】基本的にはご近所の方が多いですね。「〇〇さんから聞いて来ました」など、患者さんからの紹介で来られる方も多いんです。
お二人はどうして歯科医師をめざされたのですか?

【弓倉院長】もちろん母の影響も大きいですが、私自身興味のある分野だったからです。中高生の頃から生物が好きで生物クラブにも入っていました。顕微鏡をのぞいたりするのも好きだったので、歯科医師だけでなく獣医学にも関心を持っていましたが、最終的に母と同じ歯科医師の道をめざしましたね。
【笹森先生】祖母が歯科医師だった影響が大きいですね。私が高校生ぐらいの頃まで、祖母は現役で働いていまして。「女性でも手に職をつけて長く活躍できる場があるんだ」と感じていたんです。祖母や父から「歯科医師になるように」と言われたことはないのですが、自然と歯科医師をめざすようになっていましたね。
患者の歯を残すため、基本的な処置をきちんと行う
院長は歯学部生の頃に大変な経験をされたそうですね。

【弓倉院長】大きな虫歯を放置していたため、急性化膿性歯根膜炎を発症したんです。処置を受けても、10日ほど顔の半分に耐えがたいほどの痛みを感じました。抜歯が必要な状態でしたが、現在では名誉教授になられた先生が丁寧に根管治療をしてくださったんです。おかげで、いまだに歯根膜も、修復した歯冠も45年間も良い状態に保たれています。その経験を通して、歯をできる限り残すために丁寧に治療することの大切さを学びましたね。虫歯治療であれば感染した象牙質などをきちんと除去する、根管治療の際にはラバーダムというシートを使って感染を防ぐなど、基本的な処置をしっかり行いさえすれば歯を残すことにつながります。近道をせず、遠回りに思えても基本的なことをきちんと行うように心がけていますね。
笹森先生はクリニック外でも診療されているのですね。
【笹森先生】以前勤めていた大阪警察病院の歯科口腔外科に月に2回ほどお手伝いに行っています。また、週に1回は大阪歯科大学附属病院の障害者歯科にも勤務しているんです。そこには、身体障害や知的障害、精神障害のある方などが来院されています。ほかにも、歯科治療に恐れを感じる歯科恐怖症の方や、口の中に物を入れると吐き気を催してしまう異常絞扼反射が強い方など、一般の歯科では対応が難しい患者さんに麻酔を施すなどして治療にあたっているんです。当院にも、車いすを利用される方に加えて、全身疾患を患う方もよくおみえになられます。障害のある方は全身疾患を患っていることも多いため、障害者歯科での経験は、ここでの診療の際にも役に立っていますね。
診療の際にはどんなことを心がけていますか?

【弓倉院長】矯正治療ではエックス線や口腔内写真などの資料が重要になります。矯正を学んだ影響で、普段の診療でも口腔内写真をよく用いてきました。患者さんに何十年も前のお口の写真をお見せすることもあるんです。また、麻酔を施す際には患者さんが痛みを感じにくいように工夫していますね。まだ実施している歯科が少ない頃から、タービンなど治療器具の滅菌・消毒にも力を入れてきました。
【笹森先生】図を使うなど、わかりやすい説明を心がけています。例えば根管治療をしていても、患者さんは口の中でどんなことが行われているのかわかりにくいのではないでしょうか。それで、治療前は「今日はこんな治療をしますよ」、治療後には「こんなことしました」と図に書いて説明するようにしているんです。
患者一人ひとりと長く付き合ってサポートし続けたい
お互いについてどのように感じておられますか?

【笹森先生】父は歯科医師としての経験年数も長く、治療技術の面でも私よりもはるかに優れていると思いますね。診断し、「この症状に対しては今後このように治療していく」など適切な治療方針を決める点は特に秀でているのではないでしょうか。父を尊敬していますし、見習いたいですね。少し口下手なところもあるかもしれませんが、小さなお子さんには優しいんですよ(笑)。
【弓倉院長】まだ幼い子ども2人を育てながら当院以外でも診療していますので、今は大変だと思いますね。正直なところ早く後を継いでほしいんですけど(笑)。患者さんたちへの接し方がフレンドリーで、とても良いと感じていますよ。皆さん安心されているのではないでしょうか。私が口下手なところも、うまくカバーしてくれています(笑)。
今後の展望についてお聞かせください。
【弓倉院長】ご年配の方々が長く健康を保つためには、歯の治療だけでなく口腔機能を維持することも大切です。口の周りの筋肉や噛む力が低下すると、栄養摂取が十分にできなくなるとともに、誤嚥による肺炎などにもつながりかねません。トレーニングなども取り入れて、患者さんの口腔機能が低下しないようサポートしていきたいですね。
【笹森先生】さまざまな年齢層の患者さんがいらっしゃいますので、「町の歯医者」としてどんな症例でもオールマイティーに診られるようでありたいですね。また、幼い頃から定期的に通っていただいて、ライフステージに合わせた治療をして差し上げたいとも思っています。その時々に患者さんの置かれた生活環境や経済状況に応じて、柔軟に対応していきたいのです。
読者に向けたメッセージをお願いします。

【笹森先生】ここに勤め始めて16年ぐらいになるでしょうか。当時幼かったお子さんが今では高校生ぐらいになっています。来てくださる患者さんお一人お一人を、長く診させていただければ幸いです。当院では、定期検診をお知らせするはがきもお出ししているのですが、「ここはちゃんと定期的に診てくれる」と喜んでくださる方も多いんです。
【弓倉院長】何十年も前に虫歯や歯周病の治療をした患者さんの歯が、今でも良い状態に保たれているのを見るのは喜びです。長く良い状態を保つためにも、プロによるメンテナンスを定期的に受けていただきたいですね。これからも地域の皆さまと長くお付き合いできる歯医者をめざしたいと思っていますので、気になることがあれば何でも気軽にご相談ください。