久富 勘太郎 院長の独自取材記事
久富医院
(世田谷区/田園調布駅)
最終更新日:2025/10/01
東急東横線の田園調布駅から徒歩約8分。都道311号、通称・環八通り内回り沿いのわかりやすい場所にあるのが「久富医院」だ。開業から70年以上の歴史があり、3代目の久富勘太郎先生が2020年から院長を務めている。医療を通じて地域貢献を志した父であり先代院長の遺志を受け継ぎ、「患者を路頭に迷わせない」ポリシーを貫く。その実現は、患者の利便性を優先した立地内の専用駐車場、院内処方、充実した設備、訪問診療にとどまらない。受け入れ窓口が少なかった時期に感染症疑いの発熱患者を断らなかったのも、そのポリシーゆえのこと。そんな厳しい経験も当たり前のように、やわらかい口調で語る久富院長。近年は胃や大腸の内視鏡検査など、定期検診の重要性も患者に伝えているとか。「柔よく剛を制す」の言葉が似合う久富院長に話を聞いた。
(取材日2021年9月30日/情報更新日2025年8月4日)
一般診療から内視鏡検査まで、充実の設備で対応
こちらの特徴を教えてください。

当院は祖父が開業し、70年以上がたちました。2代目院長だった父の「病院並みの医療で地域貢献したい」という強い意向で、時間をかけて検査機器をそろえてきました。そのため、一般的な医院より検査項目が多いのが特徴かなと。喘息やアレルギーの検査に使う呼気一酸化窒素検査のできる機材も導入しています。それと、週1回の訪問診療や院内処方も特徴ですね。また、環状八号沿いに立地し、駐車スペースをしっかり取っています。高齢の患者さんをご家族が連れて来られるときは車が便利ですし、院内処方ならワンストップで通院が終わります。患者さんにとっての利便性を念頭に置いて、診療を行っていきたいと考えています。
力を入れている診療についてはいかがでしょうか。
僕自身は消化器内科が専門ですが、地域の一次診療医療機関の役割を担うため、専門分野以外の勉強もしながら総合的に診療を行ってきました。多くの疾患で早期発見と早期介入が重要と考え、より正確な診断のために検査機器の充実を図っています。診断に基づいた過不足ない治療のために、当院でできる治療は当院で、できない場合は連携先の病院を紹介します。例えば、食道がんや胃がんは早期発見が早期治療につながりやすく、多くの方が紹介先の病院では内視鏡での治療をされています。一方で大腸がんについては、検便で潜血が出てからの内視鏡検査では、手術が必要な段階に進んでいる方の割合が増えます。早期大腸がんでしたら、当院で治療を完了できる場合があります。今後は大腸がんの早期発見にも力を入れていきたいと考えています。
大腸内視鏡検査にも対応されていますね。

検便は進行がんの発見につながるため、毎年受けることを推奨しています。一方、早期の大腸ポリープを見つけるためには、大腸内視鏡検査が適していますね。40歳や50歳などの節目でも良いですし、まずは1回の大腸内視鏡検査を受けるのもお勧めしています。その結果から患者さんの状態やリスクに応じて、適切な次の検査のタイミングをお伝えしたいなと。しかし、一般的に大腸内視鏡検査は「怖い」といったイメージをお持ちの方も少なくありません。そのため、当院ではやわらかいスコープを用いて、痛みに配慮した検査を行っています。基本的に痛み止めは使用しませんが、その理由は痛みが危険のサインだと考えているから。例えば、癒着があれば痛みを感じますし、そうした腸管のサインこそが大切かなと。とはいえ、実際に痛がる患者さんはほとんどいません。当院ではスコープの挿入から観察まで丁寧に行っていきますので、安心して受けてもらいたいですね。
スタッフや地域との連携を強化し、地域医療の底上げを
患者の主訴にはどのようなものがありますか。

コロナ禍を経て、近年はインフルエンザやマイコプラズマ、百日咳、りんご病などの感染症が流行るようになりました。コロナ禍に感染が少なかったのが原因かなと。当院も一時期はインフルエンザやマイコプラズマの患者さんが多く来院されました。なお、内科全般に対応していますので、幅広い症状の患者さんが来院されます。高齢の患者さんの全身管理も多いですね。消化器内科に関しては、「お腹が痛い」などの軽い症状から「検査してほしい」というものまでさまざま。必要に応じて、胃の内視鏡検査や大腸がん検診も行うようにしています。
胃の内視鏡検査について詳しく教えてください。
最近は、胃の内視鏡検査を受けた患者さんの多くがピロリ菌陰性のきれいな胃袋ですが、一方で逆流性食道炎などが増えている傾向があります。そのため、今後は胃と食道のつなぎ目であるバレット食道がんなどが増えてくるかなと。胃がんや食道がんのリスクが高い方はもちろん、気になる方は内視鏡検査などの定期検診を推奨しています。
診療方針もお聞かせください。

地域の方々が健康に安心して過ごしていける、そのお手伝いをするのが一番大切だと思っています。皆さんの健康を守るために診断の精度を上げ、その手段として検査や健診を充実させていきたいなと。患者さんとしては、かかりつけ医院をどこにしたらいいのか、自分では判断できない方も多いと思います。当院はどんな症状の患者さんでも診察します。とりあえずご相談いただければ、患者さんにとってベストな道に導けるよう努力します。また、地域的にも患者さんが高齢化していますので、ライフステージに合わせた道案内役として、地域の先生方や近隣の病院だけでなく、ケアマネジャーさんや訪問看護ステーションとの連携にも努めています。
スタッフの皆さんも長く働いているそうですね。
看護師、受付、薬剤師など、父と一緒に長く働いてくれた方が多かったのですが、少しずつ代替わりしました。今ではほとんどのスタッフが若い世代です。大きな求人広告は出さず、近所の方や紹介などで当院に入ってくれて、自転車や徒歩で通えるほど近所のスタッフばかりです。あらかじめ人柄をわかって採用しており、実際にみんなが責任感を持って仕事をこなしてくれるので、本当に助かっています。
患者を路頭に迷わせず、笑顔になれる診療をめざす
そもそも先生が医師を志したきっかけは何でしょう?

僕は奥沢が地元で、八幡小学校を卒業しました。中高は港区の麻布学園を経て、筑波大学医学部に進学しました。祖父の代から家業が診療所だったので、特に疑問も抱かず、自然の成り行きで進路を選んだ感じです。大学卒業後は研修医として関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)に入り、そのまま17年勤務。内視鏡的治療を中心に研鑽を積んでおり、それが今の医院での診療に役立っています。父からも祖父からも、後を継いでほしいと言われたことは一度もありません。ただ、祖父や父が患者さんに感謝され、喜んでもらっている様子を見てきたことで、志を強くしたかなと。僕自身は医師として、たくさんの患者さんに育ててもらいました。また、患者さんのご期待に沿えないこともありました。その分、今診ている患者さんに感謝し、恩返しするつもりで診療に臨んでいます。
診療で心がけていることはありますか。
まず何よりも、電子カルテのほうばかりを見ないで、できるだけ患者さんのほうを向いてお話を伺うこと。診療の準備や後片づけの時間も使って、患者さんの症状を詳細に聴取することを大切にしています。それでもモニターを見ていることが多いですが(笑)。そしてもう一つ、身体所見を大切にすること。地域の診療所としてバランスの取れた診療を行うことを心がけています。生活習慣病の管理などの際には、うまくいったときに一緒に喜んで、患者さんにやる気を出してもらうのが良いと思っています。
今後の展望と読者へメッセージをお願いします。

「大きな病院に行かなくても、病院並みの医療を受けられる医院にしたい」という方針のもと、院内を拡張して機材をそろえてきましたが、古くなってきたものもあり、入れ替えていきたいと思っています。併せて、きちんとした診療を続ける努力もしていかないといけません。僕自身が広く医学の勉強に取り組むだけでなく、患者さんに教えていただきながら、患者さんが笑顔になれる診療をしていきたいです。また、これからは胃や大腸の内視鏡検査など、定期検診の重要性をもっと伝えていきたいですね。当院は総合診療を通して患者さんの全身を診ています。体のどの部分でも痛みや不快感があって体調が悪いとき、ご自身やご家族の健康について疑問を持ったとき、どこを受診したらいいのかわからないときにも、お気軽にご相談ください。

