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斉藤 栄造 院長の独自取材記事

駒沢 風の診療所

(世田谷区/駒沢大学駅)

最終更新日:2019/08/28

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東急田園都市線の駒沢大学駅そばにある「駒沢 風の診療所」は、一般内科の他に関節リウマチを含む膠原病の治療を得意とするクリニックだ。斉藤栄造院長は勤務医時代に長く膠原病の治療に携わり、東邦大学の教授も務めた経歴を持つ。こうした専門性や穏やかで飾らない院長のもとには、膠原病やそれと近い領域である甲状腺の疾患、そしてアレルギー疾患の患者が遠方からも訪れる。その一方で、消化器内科と呼吸器内科を専門にする医師3人も診療し、地域の患者の身近な悩みにも応えようとする体制を敷く。「患者さんに生かされた医師人生。これからも自分のできることをやるのみ」と話す斉藤院長に、診療時の取り組みや膠原病を専門にした経緯などを聞いた。
(取材日2018年12月12日)

せめて誰か一人にとっての一つの風になりたい

まずはこちらに開院された理由と現在の患者層についてお聞かせいただけますでしょうか。

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私は開業する前に長く東邦大学医療センター大橋病院に勤めていました。この病院の最寄り駅が池尻大橋駅でしたから、そこから近い場所に開業すれば患者さんも通いやすいだろうと思ったのです。私の専門は関節リウマチを含む膠原病で、これらの病気の治療は長期にわたることが多いので、患者さんにとっても良いだろうと考えたんですね。現在いらっしゃる患者さんは膠原病や甲状腺疾患、アレルギーの病気の方が7割ほどで、生活習慣病などの一般内科の領域の患者さんが3割ほど。比較的に特殊なご病気をお持ちの患者さんが多いですから、電車を使って遠方から訪れる方が多いのが特徴とは言えるでしょう。

変わった院名だと思ったのですが、「風」にはどんな意味が込められているのでしょう。

著名な歌からインスピレーションをもらいました。その歌は、大切な人を失い、深い喪失感の中で悲しんでいた人々に生きる勇気を与えてきました。また、生きている私たちにも勇気を与えてくれています。私達の人生は決して無駄なものではなく、死んだ後も、残された人々の心の中に存在しうると語ってくれています。しかしこのことは同時に、私たちに厳しく問いかけます。死んだ後に多くの人にとっての風になれるかどうかはその人の生き様を表すからです。私はとてもそんな風にはなれない。せめて誰かにとっての一つの風となれるように生きたい、というのが私の希望です。こうした願いを込めて「風の診療所」としました。

開院してから11年。先生は今までどんなクリニックをめざして日々の診療に臨んできたのでしょうか。

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大そうなものはなくて、自分のできることをやるに尽きるのかなと思っています。その結果、少しでも患者さんのお役に立てたらうれしいです。その意味で言うと、当院では院外活動としてウォーキングの会も開業当初から毎月開いています。これは患者さんやご家族と一緒に都内のあちこちを7~8kmほど歩くもの。歩くことは体に大きな負担をかけずに健康維持や健康増進を図れますし、私自身、歩くことが好きなんですね。春は桜並木を、夏は涼しげな緑を、そして秋は紅葉を眺めながらといった具合で。患者さんの中にはこの会がきっかけで歩くことが好きになり、四国のお遍路を巡った人もいるんです。ささやかなことかもしれませんが、こんな活動を通しても患者さんのお役に立てたなら、と思っています。

膠原病は特殊な疾患。専門の医師が適した治療法を探る

膠原病の患者が多いことが大きな特徴だと思います。膠原病とはどんな病気なのでしょうか。

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漢字だけ見てもどのようなものか想像しにくいでしょう。膠原病というのは病気の総称を意味していて、あえて一言で表現するなら「全身の結合組織に炎症や変性を起こす病気」です。循環器や消化器、呼吸器など、体のあらゆる部位に病変が起きる可能性がある非常に複雑な病気で、関節リウマチやシェーグレン症候群、全身性エリテマトーデスなどが含まれます。関節リウマチやシェーグレン症候群は1000人に数人、そして全身性エリテマトーデスは1万人に数人と、とても珍しい病気とされています。専門的に勉強や臨床を重ねて来た医師でないと有効な治療を行うための情報を持っていない可能性が高いです。また治療が長期に及ぶことが多いので、患者さんの精神的なケアも重要になってきます。

骨粗しょう症の予防にも力を入れていると聞きました。

ええ。関節リウマチは骨の破壊が進んでしまうという特徴があり、また膠原病の治療に使うことがあるステロイドは骨がもろくなってしまう副作用があるので、骨の状態を診ることは大変重要です。膠原病に限らずとも、加齢によって骨はもろくなっていきますから、高齢化が進む中で骨の健康はますます大切になります。当院では大腿骨や背骨などを含めた全身を測れる大型の骨密度測定装置を備えており、これは小型の機器に比べて測定できる部位が広いだけではなく正確性も高いもの。導入した開業当初は病院を含めて世田谷区内には数施設しか保有していないと言われていました。最近は普及しつつありますが、それでも備えているクリニックは多くはないでしょう。

消化器内科と呼吸器内科の診療も行っているそうですが、専門の医師が在籍しているのでしょうか。

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はい。消化器内科では慶應義塾大学医学部の消化器内科医2人がそれぞれ火曜日と金曜日の午前に診療をしていて、胃と大腸の内視鏡検査を行うこともできます。呼吸器内科を担当しているのは東海大学呼吸器内科で教授をしていた阿部直先生で、月曜日の終日にわたって診療してくれています。当院では生活習慣病などの一般内科も診ていますが、今まで話したように私の専門性が特殊なものですから、専門性の間口をより広くしてより多くの地域の患者さんのお役に立てるようにしたいとこうした体制を取ることにしました。

自分の方こそ患者に「ありがとう」と言いたい

ところで、先生はなぜ医師を志されたのですか? 膠原病を専門にした理由を合わせてお聞かせいただければ。

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小さな頃から理科が好きで、トンボや蝶々などを追いかける子どもでした。高校の頃も自然科学が好きでしたので、自然と医師が将来の選択肢の中に入ってきました。膠原病を専門にしたのは、実は大きな勘違いだったんですよ。研修医として内科の各部門を回っていた時に、膠原病の診療科もありました。偉ぶっている教授が多い中で、膠原病の教授だけは、廊下で会うと「おっ斉藤君!」なんて声をかけてくれたんです。ある日、教授から「うちに来ないか?」と声をかけていただき、思わずうれしくて即決してしまいました。ところが実際に入ってみると、教授は驚くほど厳しくて(笑)。といっても入った以上は抜けられない……。そんな経緯でこの道を進んだわけですが、選択を後悔したことは一度もありません。結局どんな分野に進んでも、その中に自分のやるべきことがあると思うんです。

お忙しい中、休日はどんな風に過ごされてますか?

私は歩くことだけではなく歌うことも好きなので、母校である慶應義塾大学のOBが集まる合唱団に所属して、合唱の練習をしたり発表会で歌ったりしています。ちなみに高校生の頃も合唱部に所属していました。歌うことの魅力を語るのは難しいですが、個人ではなくみんなで一緒に何かを表現することが楽しいのではないでしょうか。それに私たちがやってるのは男声合唱なので、練習終わりに一緒にお酒を飲みに行くのもいいんです。あまり大きな声では言えませんが、一人で晩酌をするのも好きです。

最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

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私は71歳になりますが、今まで医師を続けて来られたのは患者さんのおかげです。診療の場ではよく患者さんから「ありがとう」と言われますが、私の方こそ「ありがとう」と伝えたい。東邦大学で教授を務めていた時にスランプに陥り、研究が思うように進まないことがありました。他にも苦しい場面はいくつもありました。しかしながら、患者さんの存在が、患者さんの役に立てられる可能性があることが、私を支えてくれました。患者さんが私を生かしてくれたと思っています。力の源です。医師でいられるのはあと数年だと思いますが、その間に自分にできることを引き続き行っていきたい。そして最後は患者さんが路頭に迷わないで済むような手配をした上で身を引きたいと考えています。

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