身近なクリニックで早期回復をめざす
鼠径ヘルニアの日帰り手術
井上外科内科医院
(世田谷区/三軒茶屋駅)
最終更新日:2025/11/25
- 保険診療
「脱腸」とも呼ばれる鼠径ヘルニアは、足の付け根から腸管などが脱出してしまう病気。痛みがないからと放置しておくと強い痛みを伴う嵌頓(かんとん)の状態となり、腸管内の食べ物が詰まったり、腐ったりすることで腸閉塞を起こし、腸管の壊死や、時には命を落とすことにもつながる。「鼠径ヘルニアは手術以外に治療法のない病気です。当院は切開による直視下手術と、小さい傷口で済む腹腔鏡手術いずれにも日帰りで対応しています。嵌頓による緊急手術となる前に、きちんと治療することをお勧めしています」と語るのは、世田谷区三軒茶屋で「井上外科内科医院」を運営する井上敬一郎院長。同院で多く手がけているという鼠径ヘルニアの日帰り手術について、詳しく話を聞いた。
(取材日2025年7月29日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q鼠径ヘルニアとはどういった病気なのでしょうか?
-
A
鼠径部と呼ばれる太腿の付け根の筋膜が薄くなったところから、腸管などが脱出する病気です。自覚症状としては、鼠径部にやわらかい膨らみができることが多いです。違和感はあるものの痛みはほとんど伴わず、押せば戻りますが、人によっては痛みを伴うことも。また、放っておくと次第に大きくなり、押しても戻らない嵌頓の状態になり、強い痛みを伴うようになることもあります。鼠径ヘルニアは薬や筋力トレーニングなどでどうにかなる病気ではなく、現在のところ治療法は手術のみ。症状や状態によっては経過を見ることもありますが、基本的には鼠径ヘルニアが見つかったら、いずれは手術で治療することが必要となります。
- Q鼠径ヘルニアを放っておくとどうなりますか?
-
A
鼠径ヘルニアを放置してしまうと、脱出した腸管がヘルニア門に挟まり込んで戻らない嵌頓のリスクが高まります。嵌頓をさらに放置すると、腸管の内容物が詰まる腸閉塞となったり、腸への血流が阻害されて壊死したりしてしまうリスクもあります。大きくおなかを切開する手術が必要となったり、時には命を落としたりしてしまうこともあります。鼠径ヘルニアは構造的な問題であり、自然治癒は望めません。そのため、鼠径ヘルニアが見つかったら、嵌頓の状態になる前に早めに手術を受けることが勧められます。
- Q鼠径ヘルニア手術の術式について教えてください。
-
A
当院では直視下手術と腹腔鏡手術の2つに対応しています。直視下手術は腹部を切開し、人工のメッシュを入れて穴をふさぎ、ヘルニアの修復を図ります。手術創が大きいのがデメリットですが、当院では一般的に5~7cmといわれる切開創を2~3cmほどに抑えて行います。手術時間が短く、体表からの手術なので、手術操作による大きな出血リスクが少ないことはメリットです。一方の腹腔鏡手術は、手術時間が少し長いですが、傷口が小さく術後の痛みも少なく、早期回復が期待できることがメリットです。抗血栓薬を飲んでいる方や高齢の方には軽い麻酔で短時間で行う直視下手術を、早期に仕事に復帰したい若い方には腹腔鏡手術をお勧めしています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1初診
-
気がかりや違和感があれば、まずはクリニックを訪れて診察を受ける。同院では予約制ではなく直接来院するシステム。来院後は受付し問診表を記入するが、待ち時間がある場合は外出もできる。初診では痛みの自覚や既往症についてなどの問診と患部の視診、触診に加え、エコーによる検査で鼠径ヘルニアを診断する。エコー検査では腸管がヘルニア門から脱出したり戻ったりする様子を、動画で確認することも可能だ。
- 2術前検査
-
鼠径ヘルニアの診断を受け、手術を受けることが決まったら、その日のうちに術前検査まで行い、術式を決定。術前検査は採血、心電図、胸部エックス線撮影の3つで、それぞれ貧血や基礎疾患の有無、感染症、血液の固まりやすさ、血液型、肺疾患の有無、心臓の異常や不整脈の有無などについて調べる。
- 3手術当日
-
前日は21時までに夕食を済ませ、飲酒は避ける。就寝までの飲水は可能だが、当日は起床後一切の飲食を避けて朝8時半に来院する。来院までに患部周辺を剃毛し、コンタクトレンズの人も眼鏡を使用する。来院したら受付を済ませた後、個室で点滴を受けながら待機。その後、医師から改めて説明を受け、承諾書にサインをしてから手術室に入る。
- 4術後病室で休む
-
全身麻酔による手術は1時間半程度で終了。目が覚めたら自力歩行で病室に戻り、夕方まで病室でゆっくりと休息を取る。個室のため家族の同伴も可能。局所麻酔の作用が弱まるタイミングで患部を確認。鎮痛剤などの処方を受けてから帰宅する。全身麻酔による手術後は車の運転が難しいため、公共交通機関や家族の送迎による来院が望ましい。
- 5術後の体調確認
-
翌日患部を確認し、問題がなければシャワー浴が可能に。鼠径ヘルニアの手術は日帰りで可能だが、術後できれば2〜3日は仕事などは休んで自宅療養することが求められる。そのため、繁忙期などを避けて術日の予約を確保すると良い。1週間後の診察で再び経過を確認し、浴槽での入浴が可能となる。その後、1ヵ月後の受診でスポーツを含む日常生活が可能となり、半年後に最終確認を受ける。

