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伊藤祐成 院長の独自取材記事

伊藤医院

(世田谷区/三軒茶屋駅)

最終更新日:2021/10/12

伊藤祐成院長 伊藤医院 main

まるで昔のお医者さんのような畳敷きで、熱帯魚もいる待合室がある『伊藤医院』。同じく医師であった父親の意見を取り入れて設計したと話すのは、院長の伊藤祐成先生だ。長いキャリアを積み、東京都皮膚科医会理事もつとめる多忙な院長。しかし質問の一つひとつに丁寧に答えていただき、この誠実さも人気の理由だろうと感じた。皮膚科・泌尿器科・性病科・肛門科など幅広い診療を行っている。これらの診療科目に共通するのは"デリケートな分野"。これらの関連性や、日本の世相や価値観の変貌など、興味深い話をうかがった。

(取材日2010年6月16日)

密接にリンクする幅広い診療科目

皮膚科・泌尿器科・性病科・肛門科。じつに幅広い診療科目ですね。

伊藤祐成院長 伊藤医院1

私は皮膚科の専門医なので、メインとなるのはやはり皮膚科です。泌尿器科・性病科・肛門科については、同じく医師であった父からたくさんのことを学びました。ちょっぴり想像してみてください。梅毒などSTD(性行為感染症)の多くは皮膚のトラブルを伴います。おそらく読者の方の中には「デリケートな部分が痒いけど、皮膚科? 婦人科? それとも泌尿器科?」と迷った経験のある人は多いのではないでしょうか。実際に性病科の病気は皮膚科の教科書に載っていることが多いんです。ところが大学病院などの大きな病院では性病科・肛門科などを標榜しているところは少なく、患者さんにとってわかりにくいのが現状だと思います。そこで当院ではこのようにはっきりと看板に書いています。例えば陰部が痒い場合、皮膚が痒いのか、それとも中の方にトラブルがあるのかなど、自分ではどうにも判断のつかないことがありますよね。そのような場合でも、当院のような標榜の仕方であれば、患者さんも安心して受診できると思います。

医院の歴史はとても古いと聞きましたが。

もともと父は静岡で診療していたのですが、私が小学校2年生のときに三軒茶屋に引っ越してきました。父の代を含めると、もう40年の歴史がありますね。父の頃は現在とは違う場所で開業しており、このビル内に移ってからは25年になります。父は皮膚科・泌尿器科・性病科・肛門科、さらには婦人科まで標榜していたので、父から教わったことはたくさんあります。治療のことだけでなく、患者さんへの接し方なども学びました。当時はホームドクターという言葉はありませんでしたが、父は患者さんたちといろんな世間話を交えながら診療していました。患者さんの中にも親子代々通ってきてくれている人がいます。親子5代にわたってお付き合いしている患者さんもいらっしゃいます。「息子さん、元気?」「お父さん、どうしてるの?」などと、いつしか私も父と同じようなセリフを口にするようになりましたね。

やはりお父様の影響で、医師になったのですか?

伊藤祐成院長 伊藤医院2

そうですね。私は3男1女の3番目ですが、男兄弟全員が医師になりました。今もなお静岡にも『伊藤医院』はあり、長兄が引き継いでいます。代々医師の家系で、私で6代目、あるいは7代目ぐらいではないでしょうか。先祖が医業に携わっていた記録をさかのぼると、たしか1819年頃にまで辿り着くようです。といってもピンと来ませんよね。歴史上の大きな事件でいえば、ナポレオンのロシア遠征が1812年ですから、その後ぐらいです。といってもますますわかりませんよね(笑)。とにかくそんな大昔から医療に従事していました。医師の世界というのはとても狭く、ともすれば世間知らずになりがちです。なので私自身は、できるだけ医師以外の人々と交流するようにしています。この三軒茶屋の町は小学校2年生以来関わり続けている、いわば第2の故郷です。小学校や中学校、高校の同級生も近くにおり、そんな異業種の友人たちとできるだけ会うようにしています。患者さんとして友人はもちろん、奥さんやご両親、ときにはお孫さんが来られることも増えました。

デリケートな部分だからこそ、話しやすい雰囲気に

もう33年のキャリアを重ねてこられましたが、患者さんの意識などは変わりましたか?

伊藤祐成院長 伊藤医院3

この33年間を振り返ると、もちろん病気について新しくわかったことなどもありますが、劇的に治療法や診断基準などが大きく変わったことは少ないと思います。ただし、当院が扱っているような診療科目は、その時代の世相や価値観を如実に反映しているように感じます。社会の流れが手に取るようにわかるというか、まるで週刊誌に出てきそうな事実に直面することもあります。くわえて患者さんの意識に関しては、やはり大きく変わったと言えるでしょう。以前は女性の患者さんの中には、症状について語るのがとても恥ずかしいと感じている人が多かったです。なので私もできるだけ患者さんから多くの情報を引き出すテクニックというか、話術のようなものを用いていました。ところが今では、女性の患者さんは臆することなく、ざっくばらんに症状について語ってくれます。このような部分については、やはり時代の流れを感じますね。

女性の患者さんも多く来られるのですね。

はい。当院では診療科目ごとのデータはとっていないのですが、全体で言えば女性の患者さんが6割ぐらいです。20代から40代の女性が多いですね。当院のメインの診療科目は皮膚科です。皮膚のことが気になるのはやはり女性。もちろんSTDなどデリケートな部分の病気で来られる女性もいます。まだ開院して間もない頃のエピソードですが、ある一人の女性の患者さんが来られました。今でこそホームページなどで私の顔写真を出しており、私の年齢などを知った上で来られる患者さんもいるでしょうが、当時はそのようなものはありませんでした。おそらくその女性の患者さんは、年配のドクターを想定しておられたんでしょう。ところが診察室に入ったら、さして自分と年齢の変わらない若いお医者さんがいる。「すみません、また来ます」と言って、そのままお帰りになりました。このようなケースはたった一回だけですが、でもまあ、その患者さんを責めることはできません。デリケートな部分を扱う診療科目ですから、こちらが下手に構えていると、患者さんは言いたいことが言えない。逆に打ち解けすぎてもダメ。ある程度の線を引きつつ、話しやすい雰囲気にすることが大事です。

若い患者さんも多いのですか?

伊藤祐成院長 伊藤医院4

ときどきですが10代あるいは20代前半の患者さんも来られます。以前、同じ科のドクターが集まる勉強会があったのですが、そこで高校生の性体験に関するデータが紹介され、驚いたことがあります。なんと高校生で性体験のない人は十数パーセントしかおらず、あらためて性体験の低年齢化の事実を突き付けられました。別のドクターの話では、小学生で性体験を持つ子がいると聞きました。実際にこのようなデータを目の当たりにすると、やはりショックです。当院の場合はここまでの低年齢化を感じることはないのですが、このようなケースを聞くたびに、子どもではなく、親の意識や態度を考えざるを得ないですね。

親と子が円滑で自然な信頼関係を築き、後先を考えた慎重な行動を

性体験の低年齢化は、親や家族との関係が大きいのですか?

伊藤祐成院長 伊藤医院5

突き詰めてしまうと、やはり親御さんの問題になるのだと思います。家庭環境が大きく影響しているのでしょう。子どもは善悪の判断基準がわかりません。してもいいこと、やってはいけないこと。そのような判断基準は、親を見て学んでいきます。わかりやすい例として喫煙があります。親が煙草を吸っていると、その子どもも煙草を吸う率は高いでしょう。最近、夜遅い時間帯に、親に連れられて居酒屋に入っていく子どもの姿を見ました。小さなうちから煙草を吸っている大人や、お酒に酔っている大人を見てしまうと、「別にこれでもいいんだろうな」と子どもは思います。煙草、お酒といったものに小さなうちから馴染んでしまうと、やはり背伸びもしたくなるでしょう。その延長線上に性行為も含まれているような気がします。子供は親を見て育ちます。古い言葉ですが、親(大人)が子供に対して『範を垂れる』ことが、大事だと思います。

親が手本を示すためにも、親子のコミュニケーションが必要ですね。

そうですね。親と子が円滑で自然な信頼関係を築くことは、とても大事なことだと思います。わが家にも大学生の子どもがいますが、なかなか忙しいようで、以前に比べれば一緒に出かける時間や会話なども少なくなってしまいました。だからこそ共通の話題や興味などを作るようにしています。じつは私は漢字が大好きで、漢字検定の準一級に合格しています。最難関といわれている一級を取りたいのですが、これが本当に難しい。私の自己満足の世界なんですが、漢字検定には子どもも興味があるようで、共通の話題になっています。一緒にゴルフに出かけることもありますよ。

漢字検定一級合格が、先生の夢のひとつになるのでしょうか?

伊藤祐成院長 伊藤医院6

そうですね(笑)。漢字検定以外の趣味では、わが家の狭いベランダを使って家庭菜園を楽しんでいます。ブルーベリーやブラックベリー、金柑、山椒、ゴーヤ、胡瓜などを栽培し、ブラックベリーや青紫蘇などは今年はすでに美味しくいただきました。バジルや月桂樹などは料理にもよく使います。花を愛でるのも素敵ですが、食べられるものはもっともっと素敵ですよ。これからの夢としては、やはり思い浮かぶのは、現在の仕事を長く続けていくことです。できることなら75歳ぐらいまでは働きたいですね。ただしどんな人でも年を経ていくにつれ、体は若い頃のようには動いてくれません。診療時間などを自分の体調と相談しつつ、それでもできるだけ長く診療していきたいです。当院には、私が新米ドクターだった頃から、変わらずに頼ってきてくださる患者さんもいらっしゃいます。そんな方のためにも、できるだけ長く診療していこうと思います。そしていつかは漢字検定一級合格と、家庭菜園以外の趣味を持てればいいですね(笑)。

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