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稲見 誠 院長の独自取材記事

いなみ小児科

(世田谷区/三軒茶屋駅)

最終更新日:2024/08/27

稲見誠院長 いなみ小児科 main

世田谷区下馬の閑静な住宅街にある「いなみ小児科」。駐車場の壁一面に描かれたカラフルな動物のイラストを前に、子育ての悩みにうなだれがちな親も思わず顔を上げずにはいられないだろう。院長の稲見誠先生が下馬に開業したのは1988年にさかのぼる。2015年にこの場所へ移転し、地下1階から地上3階、延べ800平米の広さに拡充した。院内には、病児保育施設、産後ケア専用ルーム、子どもと一緒に訪れることができる子育て支援施設などを併設。幅広い面から親子をサポートするクリニックとして、多くの近隣住民から親しまれている。悩める母子の居場所づくりを追求し続ける稲見院長。にこやかな表情の内に秘めた熱い思いをじっくりと聞いた。

(取材日2024年6月10日)

多角的に子育てをサポートするクリニック

今年から新たに母乳に特化した外来を始めたそうですね。

稲見誠院長 いなみ小児科1

これまで産後ケアを担当していた助産師から「母乳に関する相談が多いので、専門的な外来をつくってはどうか」という提案があり、新たに始めることにしました。もう1人ベテラン助産師を迎え、産婦人科を専門とする女性医師2人とともに、母乳に関する相談に幅広く応じています。火曜と金曜の9時から11時30分までと週に2回の試みですが、母乳マッサージに通われているお母さんも少なくありません。今は働きながら母乳育児に挑む人も増えているので「いかにして母乳を途切れさせないか」手を尽くします。完全母乳はもちろん、混合栄養にも対応可能です。ミルクを禁止しないのはお母さんを追い詰めないためです。お母さんの不安を取り除くのが何よりも大切ですからね。

さまざまなかたちでの子育て支援に乗り出したきっかけは何だったのでしょうか。

お母さんたちの涙です。開業してから私の目前で泣いてしまうお母さんによく会い、大学病院時代にはなかったことなので非常に驚きました。仕事と育児の両立に困っている方もいれば、誰かに悩みを聞いてほしいという方もいて、それぞれが切実な状況です。どうにかしなければという一心で、このビルへの移転を機に、多角的な機能をクリニックにプラスすることにしたんです。例えば、産後ケアルーム「Mama’s room」では、お母さん方が一息つける時間と空間を提供できるよう、助産師やセラピストが工夫を凝らしてプログラムをつくっています。親子で通える子育て支援施設「ひょっこりひろば」では「季節の病気」「手作りおもちゃ」などいろいろなテーマで勉強会を開いています。乳幼児が楽しそうに遊ぶ姿やお母さん同士が交流している様子を見かけると、私もうれしいです。

病児保育施設「ハグルーム」についても教えてください。

稲見誠院長 いなみ小児科2

病児保育施設「ハグルーム」は、2003年に世田谷区の委託事業として立ち上げました。利用するためには、まず世田谷区保育課で事前登録をしておく必要があります。熱が出たときなど、利用したい日の前日もしくは当日の朝に予約をしてもらいます。その後、一度診察をし、空いていたら利用可能です。もちろん、流行性の疾患については隔離部屋で過ごしてもらうようにしているのでご安心ください。私は病児保育に関しては比較的早くから取り組んでいて、当院には病児・病後児保育について専門に学んだスタッフが10人ほどいます。研究大会にも参加して、日々より良い保育のためのスキルアップを怠らない、自慢のスタッフたちです。

安心して受診してもらうための工夫が多彩

育児相談にも力を入れていますね。

稲見誠院長 いなみ小児科3

産後ケアルームの「Mama’s room」も世田谷区の委託事業で行っていて、4ヵ月未満の子どもを持つ人のみを対象としています。でも、5ヵ月目からいきなり子育てが楽になるわけではありません。対象期間を過ぎた親子も引き続き見守っていきたいという思いで育児相談窓口を設けました。月に1回の予約制で、当院独自の事業なので区外からでもご利用いただけます。さらに、発達障害や不登校などの子どもとその親への臨床心理士によるカウンセリングも行っています。1組あたり1時間をかけ、親子一緒でも別々でも対応可能です。臨床心理士は「前向き子育てプログラム」という参加体験型の学習会も開催していて、こちらはどなたでも参加できます。

母子ともに通い慣れた場所になれば、いざ受診となっても不安を軽減できますね。

子育て支援施設「ひょっこりひろば」には、子育ての悩みに対応するベテランママ、保育士などが待機していて、必要があれば助産師や医師につなげるようにしています。小児科や母乳に関する外来は敷居が高いと感じているお母さんも多いので、まず「気楽に相談していいんだよ」という場所をつくり「相談力」も育めればと思いました。もし、受診が必要になっても、待合室でも通い慣れた「ひょっこりひろば」のようにリラックスして過ごせるよう、遊具やおもちゃを置いたり、壁一面に絵を描いたりしています。名前を呼んでもお子さんが遊具から離れないなんてこともあるんですけれど(笑)。

感染症対策にも引き続き注意なさっているとか。

稲見誠院長 いなみ小児科4

待合室は2つあり、咳や熱があって感染症が疑われる方とそうでない方が接触しないようにしています。「クリニックで感染症をもらいたくない」と、受診をためらう気持ちもよくわかりますが、当院ではしっかりと感染症対策をしているので、どんな小さなお悩みでもためらわずに受診してほしいです。現在も新型コロナウイルス感染症は流行していますが、5類に分類され、あまり重症化していません。しかし、今後鳥インフルエンザなどが流行してもおかしくない状況であることに変わりはありません。新型コロナウイルスの流行中は発熱患者さん用のプレハブ小屋を建て、その中で診察や検査を行っていましたが、現在も取り壊さずに残しています。万が一、何かしらの新型感染症が発生したとしても、皆さんの不安に寄り添い地域の健康を守っていきたいです。

母子の気持ちを肯定し思春期まで寄り添う

診察の際にはどのようなことを心がけていますか?

稲見誠院長 いなみ小児科5

まず「お母さんの気持ちを認める」ということを大切にしています。例えば「子どもが泣くたびに母乳を飲ませているが、体重が少しも増えない」と困っているお母さんに、頭ごなしに「泣くたびに母乳を飲ませるだけでは駄目」と言っては「こんなに苦労しているのに……」と心を閉ざしてしまうかもしれません。「とても大変でしたね」とお母さんの行動をまず受け止めて、「母乳の量が十分に出ているか調べてみましょう」とその先のポジティブな解決策を提案していきたいと思っています。また、お子さんに対しては、どんなに小さくても1人の人間として見て、積極的に声かけするようにしています。大きな声で泣いてしまっても何の問題もありませんが、やはり、少しでもリラックスして受診してほしいですからね。

今後の展望についてお聞かせください。

私1人で診療にあたっていた時代もありましたが、これからはチーム医療を大事にしていきたいと思っています。常勤の女性医師2人、非常勤でも大学病院に勤務する若い先生方が診療にあたってくれていて、少なくとも3人は医師がいる体制を整えました。大学病院レベルの診療を身近なクリニックで受けられるのは患者さんにとってもメリットだと思いますし、私自身、先生方のカルテを読むだけでも発見があり刺激を受けています。また、国立成育医療研究センターで思春期の子どもの診療を担当していた女性医師が新たに加わってくれたのも、頼もしい限りです。今後は当院にも思春期の子どものための外来を設け、これまで手薄だった思春期の悩みに関してもサポートしていきたいと思っています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

稲見誠院長 いなみ小児科6

乳幼児期から思春期まで、すべてのフェーズで成長を支えるクリニックでありたいと考えています。現代社会において小児科医の使命は「お子さんたち、お母さんたちが寄り添える存在であり続ける」ことに尽きるでしょう。昔は近所のおじさんやおばさんが叱ってくれたりごはんを食べさせたりしてくれたものですが、今の地域社会では難しい。祖父母に頼れない共働き家庭も増えています。だからこそ、小児科医が祖父母や近所の大人の役割を担い、いつでも頼りにしてもらえる存在になりたいと思っています。もし、私に話しにくければ、女性医師、看護師、助産師、臨床心理士などに声をかけてください。「こんなこと話していいの?」と悩まずに、どんな些細なことでもご相談ください。

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