症状に合わせた薬選びが重要な
アトピー性皮膚炎の治療
こどもの木クリニック
(横浜市都筑区/江田駅)
最終更新日:2023/09/07


- 保険診療
大人に比べて肌が弱い乳幼児期は、アトピー性皮膚炎なども起きやすい。食物アレルギーや花粉症のほか、さまざまなアレルギー疾患が次々に起きる「アレルギーマーチ」の引き金になることもあり、「早いうちに適切に治療することをお勧めします」と、小児皮膚科での診療経験が豊富な馬場直子先生は言う。「きちんと治療をすれば、アトピー性皮膚炎の症状はほぼなくなることも期待できます。しかし、塗り薬の量が足りないと治療が長引くこともあるため、専門の医師の指導に沿って正しい塗り方で治療を続けることが大切です」。そこで専門的な治療を安心して始められるよう、馬場先生にアトピー性皮膚炎が起きる理由から、治療で大切な塗り薬の塗り方までを詳しく話してもらった。
(取材日2023年8月18日)
目次
強めに作用する薬でしっかり治療し、その後は弱めの薬に替えて継続することが大切。メリハリある治療を
- Qアトピー性皮膚炎とはどのような病気ですか?
-
A
▲症状について詳しく話す馬場先生
「皮膚のバリア機能」の低下で肌が乾燥し、かゆみが生じ、これをかくことで肌に炎症が起きて、湿疹ができてしまう。こうした症状を繰り返す病気です。赤ちゃんの時は、最初に頭部や顔に湿疹ができて全身に広がる傾向があり、乳児期の場合は表皮がすぐに剥がれてジュクジュクした湿疹になりやすいですね。その時期を過ぎると今度は乾燥がひどくなり、病気が進むと皮膚が厚くゴワゴワした感じになってきます。年齢や病気の進み具合で症状はさまざまですが、アトピー性皮膚炎の症状の基本はかゆみと湿疹です。専門家が診ればすぐにわかりますから、お子さんの肌が何かおかしいと思ったら皮膚科や小児科を早めに受診してください。
- Qどのような原因やきっかけで起こるのでしょうか?
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A
▲皮膚疾患やアレルギー疾患の相談も多いという
アトピー性皮膚炎はアレルギーを起こしやすい体質つまり素因と、環境要因が絡み合って起こります。前者の主な原因と考えられるのが「皮膚のバリア機能」の弱さで、これは遺伝的な影響も強いとされています。こうしたお子さんがダニやほこりが多い環境で暮らしていると、皮膚からアレルギーの原因となる抗原(アレルゲン)が侵入しやすく、アトピー性皮膚炎も起きやすくなるのです。いわば、家の屋根や壁が剥がれてしまって、外から雨がどんどん入ってしまうような状態。ただ、お子さんの皮膚のバリア機能をすぐに高めることはできないため、適切な治療を受けながら、ダニやほこりの少ない環境を維持して、皮膚への刺激を減らしてください。
- Qアトピー性皮膚炎の治療法を教えてください。
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A
▲スタッフの丁寧なフォローも
かゆみのもとになる炎症を抑えるための治療が有用で、塗り薬にはステロイドが主に用いられます。作用の強さで5段階に分けられた中から、皮膚の状態に適したものを選び、症状の経過とともに弱めのものに替えていくのが一般的です。薬の副作用を心配される親御さんもいらっしゃいますが、塗り薬としてステロイドを使う場合は、長期間の継続使用を避ければあまり心配する必要はないでしょう。併せて部屋を頻繁に掃除して、布団をこまめに干すなどでダニやほこりを減らし、皮膚へのアレルゲンの侵入を防ぐことも必要です。
- Q塗り方を誤ると薬がうまく作用しないと聞きました。
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A
▲薬の塗り方も丁寧に指導する
塗る量が少ないと効果が期待できず、治療が長引くケースもあります。ステロイドの1回分の適量は、大人の人さし指の先端から第1関節までの長さをチューブから押し出すのが目安。これを手のひら2枚分の広さに塗り、その繰り返しで患部全体を塗り終えます。決してすり込まず、皮膚に乗せる感じで、しっとり感が続くよう厚めに塗ってください。塗るタイミングはお風呂の後と翌朝の1日2回で、処方どおりに塗ることでかゆみや湿疹の改善が見込めます。お子さんが薬を塗った後にかいてしまうなら、長袖の服を着せるか、医師に相談してやわらかい布で覆って固定する、軟膏を塗ったガーゼを貼って包帯を巻くなどで対処をしましょう。
- Q治療の注意点や予防に役立つ肌のケアはありますか?
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A
▲小さい頃の保湿ケアが大切と話す
症状がなくなったように見えるからと治療を途中でやめると、治療が長引く可能性が高いので注意してください。医師の指導のもとで経過を見ながら薬を替え、回数を減らして塗るなど、プロアクティブ療法を続けることが大切です。また症状が落ち着いていても、一人暮らしを始めたお子さんが自分の部屋を十分に掃除できず悪化した、という話もよく聞きます。再発予防には治療の継続に加え、体を清潔にして保湿クリームなどで十分にケアすること、部屋をきれいに保つことも重要です。もしご家族がアレルギー疾患をお持ちなら、お子さんもアレルギー症状を起こしやすいかもしれません。症状がなくても、皮膚の保湿を重視したケアを心がけてください。