アトピー性皮膚炎の治療の柱は
軟膏と毎日のスキンケア
こどもの木クリニック
(横浜市都筑区/江田駅)
最終更新日:2021/10/12


子どものデリケートな肌にはトラブルがつきもの。小児科医師として30年以上の経験を持つ「子どもの木クリニック」の百々秀心院長は、子どもの肌に関する相談は非常に多いと話す。中でもアトピー性皮膚炎は、かゆみや炎症などの症状が悪化と寛解を繰り返すことから、長期間にわたる悩みの一つだ。アトピー性皮膚炎は、気管支喘息や食物アレルギー、花粉症などと同じアレルギー疾患の一つ。百々院長は「アトピーの語源はギリシャ語でatoposといって、由来がわからない、原因が複雑に絡み合うという意味になります」と語る。赤くなる、熱感、腫れる、痛みなどの炎症反応を起こすアトピー性皮膚炎。この捉えどころのない病気を百々院長にわかりやすく解説してもらった。
(取材日2020年7月6日)
目次
アトピー性皮膚炎は外からのアプローチが基本。メカニズムを理解し治療法と正しいスキンケアを学ぶ
- Qアトピー性皮膚炎とはどのようなものなのでしょうか?
-
A
▲免疫反応が体にとって有害な反応に変わるのがアレルギー
まずアトピー性皮膚炎というのは、アレルギー疾患だということを頭に入れておいてほしいと思います。アレルギーの語源はギリシャ語でallos(変わった)とergon(反応)の組み合わせといわれています。病気を逃れるはずの免疫反応が、体にとって有害な反応に変わるという意味です。アレルギーには、IgE(免疫グロブリン)が、皮膚や粘膜などに分布するマスト細胞の表面に付着、そこに抗原がついてヒスタミンやセロトニンなどを放出し腫れやかゆみなどの反応が起こる即時型反応と、リンパ球という免疫細胞が中心になって起きる非即時型反応があり、即時型反応では物を食べて30分以内、遅くとも2時間以内にじんましんなどが出ます。
- Qアトピー性皮膚炎のメカニズムを教えてください。
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A
▲アレルギー反応が出るのは皮膚のごく浅い深さのところ
皮膚というのはバリア、外からの異物が入って来るのを抑え、刺激から守ってくれる防波堤や壁のような役目があります。そこが破壊されて異物や抗原が侵入し、抗原抗体反応、いわゆるアレルギー反応が出ます。その反応が起きているのは、皮膚のごく浅い1ミリほどの深さのところで、赤ちゃんの場合は0.5ミリ、大人でも4ミリ以内といわれています。ですから、治療には軟膏が有用なんですね。外からのアプローチをきちんとするということが、アトピー性皮膚炎を治す基本になります。皮膚から入って来る異物、抗原にはダニやカビ、花粉、ちり、汗などがあり、悪化させる因子である皮膚に常在するブドウ球菌が関与するとかゆみの症状が出てきます。
- Qどのような症状が出るのでしょうか?
-
A
▲アトピー性皮膚炎には幅広い症状がある
先ほどお話ししたようにかゆみが出て、それをかき続けてしまうと、皮膚が破壊され薄くなってどんどん悪化していきます。それから、真っ赤になったり、逆にカサカサになったり、ブツブツやぐじゅぐじゅ、ごわごわになったりと、いろいろなタイプの湿疹が現れます。典型的な症状が一つだけあるというわけではなく、幅広い症状が出るのがアトピー性皮膚炎の特徴です。また、年齢によって症状が出る部位が異なります。乳児は顔に出ることがほとんどで、他には耳、腕、足の外側に出ます。もう少し年齢が高い幼児になると、首、ひじ、手首、膝の裏、もちろん全身にも症状が出ます。
- Qどのように治療していくのですか?
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A
▲原因となるダニやほこりを取り除くことが必要
治療には3本の柱があります。第一に原因を取り除くこと、第二に軟膏治療、そして毎日のスキンケアです。まず原因となるダニやほこりなどを掃除する、布団を干すといったことが重要です。布団は高温の乾燥機で乾かせば良いと思われるかもしれませんが、死んだダニにも反応するので、布団を干した後は掃除機で吸い取るか、布団カバーをアレルギー用のものに変えるなどすると良いでしょう。軟膏にはいくつかありますが、やはりステロイドをお勧めします。副作用を心配するお母さんもいますが、飲み薬や注射のステロイドを長期間使うような場合は慎重になる必要があるものの、皮膚に塗るステロイドであればそこまで心配はしなくてよいかと思います。
- Qステロイド軟膏の塗り方についても教えてください。
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A
▲しっかりと塗り方を説明してくれる
ステロイドは部位によって吸収率が異なり、吸収率が良いとされる顔には弱いステロイドを使います。少しの量を塗っても意味がないので、しっかり塗ることも大切。症状が良くなったら回数を減らして持続するプロアクティブ療法で、先を読んで予防することが特に重要です。1週間に1~2回、半年から1年は毎日続けても副作用が出ることはほとんどないというデータもありますから、赤みが消えても続けて塗ってください。また、欧米では長年使われているタクロリムス軟膏があるのですが、日本では2歳以下には使えません。ただ症状の出ている皮膚でしか吸収されず、正常な皮膚からは吸収されない特徴があることは知っておいていただきたいですね。