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百々 秀心 院長の独自取材記事

こどもの木クリニック

(横浜市都筑区/江田駅)

最終更新日:2022/08/30

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江田駅から徒歩約15分の「こどもの木クリニック」は、咳や鼻水、発熱や嘔吐などの急性疾患、腹痛や下痢などの急性胃腸炎、湿疹や発疹といった皮膚疾患など幅広い内容に対応する小児科クリニック。日本小児科学会小児科専門医であり、特に小児循環器を専門に30年以上の経験を持つ百々秀心(どど・ひでみ)院長は、カナダやアメリカでも研鑽を積んだ小児科のエキスパート。小児科領域一般の疾患はもちろんのこと、予防接種や乳児健診、地域の幼稚園や保育園の健診にも注力。欧米医療の良い点を取り入れながら、明快な口調と言葉で丁寧に説明してくれる百々院長。子どもの循環器疾患の診療を受けるために遠方から通う親子もいるのだとか。小児医療への思いや診療に対する向き合い方について百々院長に話を聞いた。

(取材日2022年7月06日)

欧米で培ったスキルを日本の地域医療に還元

開院までの経緯を教えてください。

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大学院で博士号を修得し、卒業後は東京大学小児科の助手をしていましたが、より深い研究を行うことを目的にカナダのトロント大学で経験を積みました。その後、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校でも研鑽を深めました。帰国後は、国立小児病院を経て、国立成育医療研究センターの医長に。大きな病院や先端医療の現場など、多様な経験それぞれに、その組織でしかできないことがあり興味深かったのですが、逆に組織だからこそできないこともある。考えた末に、自分は患者さんとじっくり関わっていくのが好きなのだと気がつきました。そこで、より患者さんと近い場所で医療が提供できる地域医療に携わろうと、2006年4月に開業に至りました。

診療で大切にしていることを教えてください。

幼稚園や保育園の健康診断は結構ばたばたしますが、必ず聴診します。聴診には職人的なところがあって、ポンポンとやっているだけに見えますが、その間に大きく分けて心音と心雑音を聴かなくてはいけない。心音にもいくつかの種類があるし、タイミングも聴かなくてはいけないんですね。自覚症状がなくても、重大な心臓疾患が隠れている場合もありますから、心音は非常に大事にしています。もう一つ大事にしているのは、子どもたちの面倒を責任を持ってみるということです。僕がわかる範囲のこと以外は専門の先生にきちんとつなぎ、その子の病気が良くなるまで診ようというのが僕のポリシーです。

今後は小児皮膚科にも注力していきたいとお考えだそうですね。

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同じ小児科の中でもそれぞれ専門分野があり、その領域の知識や経験の深さは桁違いです。専門家に診てもらうことによるメリットは計り知れないので、これまでも精神科を専門としている先生をお迎えするなど、患者のニーズに合わせて、柔軟に診療体制を変更してきました。僕の専門は心臓ですが、当院にはアトピーなどの皮膚トラブルで来院する子どもが増えており、小児皮膚科の専門家に相談したいと考えました。子どもの皮膚トラブルは、大人の皮膚科診療とは異なる知見が必要なので、小児皮膚科の経験を積まれたプロフェッショナルである先生に来ていただきたいと調整中です。患者さんにとってより良い医療を提供できることが楽しみです。

困っている患者に対し、何ができるかを考える

児童精神科にも対応されているそうですが、現状をお聞かせください。

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精神科は、診療に時間がかかることが特徴です。そのため、風邪などの内科診療に比べて、1人の医師が診ることができる患者の人数に限りがあります。このような事情もあり、精神科での診療を求める人数に対して、専門の医師の数が足りていません。新型コロナウイルス感染症流行以降、休校、イベントの中止、給食の黙食など、さまざまなことが積み重なって、子どもたちが心のバランスを崩していき、それが体の変調につながっているケースもあると思います。実際、当院の児童精神科の外来も来院数が増えています。初診を予約しても約3ヵ月待ちで、遠方から来院する患者も多い状況が続いていたので、金曜と土曜の週2日に診療日を広げました。その結果、今は初診の予約は約1ヵ月待ちまで短縮されました。

児童精神科の診療を行う理由はなんですか?

困っている患者さんに対して最良のアプローチを提供したいからですね。子どもを取り巻く環境はここ10年、20年で大きく変化し、子どもの心の問題も多様化しています。僕は小児の心臓の専門家ですが、開業してからは心の悩みを患者さんから相談されることが多くなりました。心の問題は精神科の医師に診てもらうことが患者にとって、とても大事だという考えから、紹介できるクリニックを探したのですが、精神科は数が少ないため紹介先が見つからなかったのです。しかし、困っている患者さんや親御さんを放っておけなくて、もともとつながりのあった羽田紘子先生をお招きしました。児童精神科の専門家である羽田先生をお迎えし、「心の外来」として2010年から診療をスタート。まず身体的な原因がないかを僕が確認し、検査が必要な場合やそれ以上のことは羽田先生にお任せしています。

「心の外来」を受診してほしいタイミングや目安となるポイントはありますか?

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一つの目安として、お子さんが朝起きられないことが続いたら、受診を考えてもいいかもしれません。朝なかなか起きられないと学校に行けない日が増え、成績が落ちるなど影響が出て、ゆくゆくは不登校につながってしまうことがあります。例えば、朝起きられない原因が低血圧だとすれば、投薬などで治療できますが、症状が治まったとしても長期間欠席したことにより学校との壁ができてしまい、不登校から抜け出せないケースも多いです。だからこそ、その悪循環が発生する前に、早期に専門家に相談することが大切だと考えます。他にも「だるい」「貧血」などの症状がある場合、まずは甲状腺の病気を疑って診察します。数値上問題がない場合、心の問題で体の症状が出ているケースもあります。自己判断は難しいので、まずは気軽に受診していただきたいですね。

これからも子どもの心と体の健康を支えたい

起立性調節障害の患者が増えていると聞きました。

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起立性調節障害とは、簡単にいうと自律神経をうまくコントロールできない状態のことです。具体的には、立ち上がると調節がきかずに倒れるなどの症状が出ます。自律神経とは全身の機能をコントロールする神経のこと。血管は無意識のうちに収縮と拡張を繰り返すものですが、人間が立ち上がる際、血管は縮まり血圧が上昇します。その際、体は無意識のうちに下半身に血液が勢いよく流れることを防ぎ、頭に血流を確保します。自律神経の異常でそれがうまくいかないのが、起立性調節障害と考えられています。心臓・血管に関連する循環器系の病気なので、心臓の専門家として起立性調節障害の診療経験は豊富です。しかし、循環器系そのものに原因があることもありますが、心の問題が隠れていることも少なくありません。起立性調節障害の患者は増えていますが、診療できるクリニックが少ないため、遠方から受診する患者も多いです。

モチベーションの維持はどのようにされていますか。

読書が好きでエネルギーの元になっています。ジャンルは、物理、エッセイ、心理学、伝記などです。日本語で書かれた本は日本語で、英語で書かれた本は英語で読むのがこだわりです。原文で読んだほうが意図がわかって面白いですから。毎朝5時に起床して1時間半の読書を365日。あとは健康管理法として、週2日の休診日は、スポーツジムで運動しています。継続は力なりといいますが、これらの趣味は何年も続いている大事な習慣です。

保護者の方へ向けたアドバイスがあればお願いします。

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子どもに対して、忍耐と愛を持って接してほしいと思います。例えば、起立性調節障害の場合、朝起きれない子どもに対して「起きなさい」「学校に行きなさい」と言いたくなると思います。しかし、怒られても子どもは起き上がることができません。子どもが学校を休むと、「このまま不登校になったら……」と親御さんが焦る気持ちはわかります。しかし、親が焦って「怠けるんじゃない」などと言ってしまったり、良くなったり悪くなったりを繰り返す子どもにがっかりして諦めてしまったり、といったことは良くありません。親御さんの苦労も重々承知の上で、子どもへの愛情をぶれずに持っていただくことを願っています。子どもたちは一生懸命頑張っていて、子どもはどんな状況でも親を頼るしかなく、宝である子どもを守れるのは親御さんです。われわれ医療従事者もできる限りのサポートをしたいと思っています。

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