百々 秀心 院長、羽田 紘子 先生の独自取材記事
こどもの木クリニック
(横浜市都筑区/江田駅)
最終更新日:2025/09/01

都筑区荏田南の幹線道路沿いに拠点を構え、2006年の開業以来すでに20年近く診療を続ける「こどもの木クリニック」。小児循環器を専門に、小児科診療で豊富な経験を持つ百々秀心(どど・ひでみ)院長を中心に、児童精神科を専門とする羽田紘子先生、小児皮膚科を担う馬場直子先生ら、多彩な専門性を持つドクターが集まり、子どもたちの健やかな成長を支える診療を担っている。診療室、隔離室に加え、通りに面して大きく窓を取った明るい待合室は、空間を分けた中待合ブースが設けられた設計。診療は予約制を取っており、感染症の流行期や複数の幼い子どもを連れての受診でも、気兼ねなく来院できそうだ。今回は百々院長と羽田先生に、同院の診療方針や各診療科の特徴などを詳しく聞いた。
(取材日2025年7月4日)
経験に基づく専門性を武器に、子どもの心身を見守る
クリニックの特徴を教えてください。

【百々院長】小児科全般の診療と、乳幼児健診や予防接種を担う、地域密着型のクリニックです。咳や鼻水、発熱など感染症が疑われる急性症状や、腹痛や下痢をはじめとした胃腸症状、湿疹や発疹といった皮膚症状など幅広く診ています。加えて、私が国立成育医療研究センターなどで循環器を診ていた経験を生かし、小児循環器の専門的な診療も枠を設けて対応しています。また、開業以来ニーズの高まりを実感してきた心の問題については児童精神科を専門とする羽田紘子先生に、小児に多く見られる皮膚トラブルは、神奈川県立こども医療センターに30年以上勤め、皮膚科医長・部長を歴任された馬場直子先生に、それぞれ診療をお願いしています。
【羽田先生】児童精神科の外来を持つクリニックは希少だと思いますし、当院には児童心理に詳しい看護師、心理士も在籍しているため、お子さんの心の問題にチームで取り組めるのも強みだと考えています。
どのような方針で診療されているのですか。
【百々院長】丁寧な聴診に、客観的な検査での確認を重ね、見落としなく診断すること。そしてそれぞれに適した治療を提供することです。私は、経験によってのみ磨かれる診療での「嗅覚」や「感覚」があると思っています。長く病棟で術前術後の子どもたちを24時間見守り、聴診器を当ててきた経験により、音を聴くことでおおよその判断がつくと自負しています。当院でも胸側、背中側の双方から部分に分けて肺と心臓の音を丁寧に聞き、さらにエックス線、心電図、エコーや血液検査などの検査も重ねて、状態を詳細に把握するよう努めています。
【羽田先生】児童精神科でも状態を正しく把握することは大切にしており、男女3人いる心理士がWISC-IV、新版K式発達検査などの心理検査を実施します。また、初診では30分の枠を用意していますが、本人の話に注力するため、診療に先駆けて専門知識を持った看護師が親御さんの話を聞く機会も設けています。
どのように適切な治療につなげていらっしゃるのでしょうか。

【百々院長】子どもの病気は刻一刻と状態が変わりますから、必要に応じて毎日、あるいは午前午後と受診していただき、胸の音や酸素飽和度、熱の出方などを確認して、薬を変えたり、細かく調整したりすることもあります。また、当院で対応が難しいと判断されるようなケースでは、必ず私自身が信頼するドクターを見つけ、事前に直接お話しして情報を共有した上でご紹介するようにしています。羽田先生の児童精神科や馬場先生の小児皮膚科を開設したのも、もとは地域で適切な治療につなげることが難しかったのがきっかけです。
生きづらさを抱える子どもを、少しでも生きやすく
児童精神科ではどのような子を診ていらっしゃいますか。

【羽田先生】特に専門である発達障害のお子さんの診療に注力しています。幼児から中高生まで、幅広い年齢の子が、発達特性によるさまざまな生きづらさを抱えているのです。特に女の子の場合、症状が顕在化しづらく、本人もコミュニケーション能力などで問題をカバーしてしまうため、発見が遅れるケースも少なくありません。同じADHDでも、男子では多動性や衝動性といった一見してわかりやすい症状が出がちなのに対し、女子では集中力の欠如やケアレスミスといった不注意の症状が出ることが多い傾向にあるのです。生きづらさを抱えながら我慢や努力を重ねて日常生活を送ることは、本人にとって大きな負担になります。些細なことでも違和感があれば相談してみてください。
どのような治療が受けられますか。
【羽田先生】発達障害では、完治をめざすというよりは、症状を抑え、本人が日常生活を送りやすくするサポートを行うことが治療の軸となります。薬物療法や認知行動療法に加え、特性に合わせた環境調整も重要です。幸い、横浜市は幼少期からの療育や、教育現場での対応が充実しています。幼稚園や保育園の先生方からの指摘で受診に至るケースもよくありますし、健診時など専門家に相談できる機会も多く用意されている印象です。幼少期からサポートにつながるチャンスが多いのはとても良いことなので、診断がつくつかないは別として、気がかりがあれば見過ごさず、早期に何らかの機会を利用してご相談いただきたいです。
児童精神科は地域でどんな役割を持つのでしょうか?

【百々院長】低血圧で朝なかなか起きられず、学校を休みがちになるお子さんもいるでしょう。起きられない症状は薬などで改善がめざせても、すでに欠席が続いていたら学校に行きづらく、不登校から抜け出せないケースも多いのです。そうした悪循環に入る前に、気軽に相談できる窓口として児童精神科があることは大きいと思います。
【羽田先生】そうですね。ご家族も「ほかの子と比べてここが違う」といった悩みを抱え込むと、どんどん深みにはまると思います。児童精神科で客観的な検査や診断を受けて、お子さんの苦手分野と得意分野がはっきりすれば、こうするとうまくいくなどの対処法もわかるはずです。当院の医師やスタッフのアドバイスを受けて、「少し生きやすくなった」と感じていただけるとうれしいですね。
アレルギーの連鎖を防ぐ小児皮膚科の診療も展開
小児皮膚科の診療についてもお聞かせください。

【百々院長】私自身も小児科医として赤ちゃんからの皮膚疾患はそれなりに診てきましたが、小児専門病院で長く皮膚科診療を担っていらした馬場先生の診療は深みが違うと感じます。子どもの皮膚疾患は大人とは症状や治療法が異なる場合が多く、乳幼児期、学童期、思春期と成長に応じても対応を変える必要があります。対して、小児皮膚科を専門とする医師はごく少数。アレルギー疾患が連鎖するいわゆる「アレルギーマーチ」を防ぐには、乳児期のアトピー性皮膚炎をしっかり治療することが大切とされています。一見症状が良くなったように見えても、奥底に炎症が残っているケースも多く、適切な薬の選択や薬をやめる判断には、小児皮膚科の専門知識が必要だと強く感じています。また近年、多汗症の治療において保険適用の薬が登場しました。制汗剤の多用で我慢していた方も、ぜひ一度ご相談ください。
一院に複数の専門科を併せ持つメリットを教えてください。
【百々院長】きっかけは一般的な症状でも、専門的な見地から診断・治療を行うクリニックを受診することで見過ごされていた先天性心疾患や皮膚トラブルが見つかったり、心の問題解消への糸口がつかめたりすることもあります。診療中の対話の中で主訴とは別の問題が見えてくることもあるため、当院ではお子さんやご家族とのコミュニケーションを大切にしています。
【羽田先生】大学病院の児童精神科のように専門科を受診することは身構えてしまうこともあるでしょう。対して、こうした身近なクリニックであれば、生活と密着した環境で、子育て相談の延長のように気軽に利用していただけるという大きなメリットがあると感じています。
読者に向けてメッセージをお願いします。

【百々院長】水ぼうそう一つをとっても、発疹や熱の出方、予防接種の状況などから総合的に診断する必要があり、小児科診療には経験が求められます。お子さんに症状や気がかりがある場合には、ぜひ豊富な経験や専門性を持つ医師を頼っていただきたいですね。当院ではお子さんの体と心をトータルに診ていきますので、何でも気軽にお話しいただければと思います。
【羽田先生】専門性を持つ看護師や心理士を交えたチームで児童精神科診療にあたっています。気になることがあれば早めにご相談くださいね。