森井 浩太 副院長の独自取材記事
森井歯科医院
(小田原市/緑町駅)
最終更新日:2024/07/05
小田原市中町、伊豆箱根鉄道大雄山線の緑町駅から歩いて5分ほどの場所にある「森井歯科医院」。1950年の開業以来、70年以上にわたり同地で診療を続ける、歴史あるクリニックだ。現在は3代目となる森井浩太(ひろたか)副院長を中心に予防を軸とした診療を展開。「予防の大切さを伝え続けるうちに、患者さんの意識も変化したように感じます。この変化に、スタッフ一同改めてやりがいを感じています」と、森井先生は笑顔で語る。精度にこだわった治療の選択肢を幅広く用意し、充実した予防的ケアとともに、将来を見据えてより良い口腔環境の維持をめざすという森井先生に、クリニックや診療のことなどについて、詳しく話を聞いた。
(取材日2024年3月28日)
トラブルを起こさないための予防をすべての診療の軸に
予防に力を入れていらっしゃるのですね。
当院は昔からある歯科医院で、以前は痛みが出た方の突発的な受診に対応する、いわば野戦病院のような慌ただしい診療が中心でした。短いスパンで定期的に来院される患者さんはほとんど見かけず、虫歯ができたら来院して、またしばらくして虫歯ができたら来院しての繰り返しの患者さんが中心でした。予防に力を入れるようにシフトしていったのは、私がここで勤務を始めた2015年頃からです。虫歯や歯周病が進行してから治療するのは、金銭的にも負担が大きく、時間も労力もかかります。だったら最初から虫歯を作らないのが患者さんのためになると考えました。予防を行わなければ治療をした意味を損なってしまうため、当院で治療した人に新しい虫歯ができるのは避けたいという思いから予防を重視しています。
患者さんに変化はありましたか?
現在の体制となって5年以上が経過して、予防を目的に来院される患者さんが増えたと思います。もともとお口の中に興味を持っていなかった方も、徐々に予防意識が根づいてきたのならうれしいですね。もちろん、強制的に患者さんの意識を変えることはできませんから、私たちが続けてきたのは予防の大切さを伝え続けること。基本的なことですが、繰り返し伝えることで行動変容につなげられるような診療を心がけています。
手術にも対応できる個室もあるそうですね。
増築により5台だった診療ユニットを7台に増やし、うち1台はマイクロスコープもある個室に導入しました。おかげでインプラントの手術などにも対応しやすくなりました。当院では噛み合わせを考慮した全顎治療(咬合再構成)を大切にしています。その実現のためにインプラント治療、歯列矯正、歯周組織再生療法、精密な総入れ歯の作製など多彩な治療方法を用意しています。どの治療方法も共通して、治療の中心に予防という考え方を置き、歯科衛生士によるケアとアドバイスに力を入れています。増築したことにより予防ケア専用のユニットも増強することができて、さらに充実した診療を提供できる環境が整いました。
スタッフの意欲が、患者との間に好循環を生み出す
歯科衛生士さんをはじめとしたスタッフの皆さんも、患者さんに対して意欲的に取り組まれているのですね。
予防的アプローチの継続により、スタッフもさらに意欲的に取り組めるようになっています。患者さんの反応がスタッフのやる気につながり、さらに患者さんの意欲を引き出すという良い循環が形成されてます。少し前から必要に応じて歯科衛生士の担当制を導入したのですが、より詳しく経過を追うことでさらに適切なケアにつなげたいという歯科衛生士サイドからの提案で始まったことです。特にリスクの高い患者さんに対して、担当歯科衛生士がついて継続的に対応するようにしています。また、直接診療に関わらない受付スタッフも、患者さんの気持ちの変化に手応えを感じているようです。
予防歯科は歯科衛生士さんが負うところも大きいのですね。
はい。当院のスタッフはみんな、より良くしたいという思いを共有して、意欲を持って学び続けるメンバーです。その上、コミュニケーション能力に長けたスタッフ、スケーリング技術に優れたスタッフ、指導やアドバイスが得意なスタッフといった、それぞれに違う個性を持った人がそろっています。そうした長所を生かし、必要に応じて補い合う良いチームですね。チームを信頼しているので、私も必要以上に口を出さないようにしています。意欲を保つためには余裕も必要ですから、休みを長めに取れたり、勉強会などに参加しやすかったりという勤務体制の整備には気を配っています。歯科助手として入職し、学び直して歯科衛生士にステップアップするケースもあるんですよ。
患者さんに予防の大切さを理解してもらうために、工夫されていることはありますか?
模型を使いながら説明して、画一的にはならない対応を心がけています。患者さんのお口の中を見ながら、「この状態なら、次はこのくらいの時期に来たら良いですよ、このくらいのスパンで診療を受けるとこのような変化が望めますよ」というように、患者さんごとに適切な次回の受診の時期をお伝えするようにしていますが、こちらから強く言うことはしません。結局はご本人が選んだ行動がその方のお口の中をつくりますから。それから、曖昧な言葉を使わないようにしています。例えば目をつむって歩いている人に対して「あと少しで段差があります」と言っても、それが何歩先なのかわかりませんよね。歯科医師が患者さんに伝えなければならないのは、具体的かつ克明な事柄です。僕の頭の中にあるビジョンと同じビジョンを患者さんがイメージできるのが理想ですね。同じ映像を描けるように言葉を選んでいます。
将来を見据え、それぞれが必要とする治療を幅広く提案
歯並びや歯周病、歯を失った際の治療にも力を入れていらっしゃいますね。
どんなに予防が大切とはいえ、虫歯や歯周病がある場合、まずはしっかりと治療する必要があります。その際、原因に迫る治療で良い状態をつくることをめざし、それを維持することが重要です。歯並びや噛み合わせの問題からトラブルが起こっているケースも多いので、勉強を重ねて矯正治療の対応も始めました。重度の歯周病で歯や骨がボロボロな方も少なくないため、歯周組織再生療法も行っています。歯を失った際の選択肢としては、自由診療での精密な入れ歯やインプラントがありますが、どちらが優れているというものではなく、ケースバイケースで適切な治療が異なります。将来にわたりご自身でケアできる方には有用なインプラントですが、介護を受ける立場になるとケアが難しく、口腔環境を維持する上で障壁となってしまうこともあります。それぞれのお口の将来に必要なことを見極め、適切な診療を提供するため、常に学ぶ姿勢でいたいと考えています。
歯科医師になって良かったと思うことを教えてください。
「医科の医師は患者さんの命を救うことをめざす仕事だが、歯科医師は人生を救うことをめざす仕事だ」。先輩から言われたずっと忘れられない言葉です。私が作った入れ歯を使うことで患者さんが前向きな気持ちになってくれたり、口元がコンプレックスだった方が笑顔で帰っていかれたり、歯や口の健康への意識の低かった方が診療を通して口腔ケアに意欲的になったりしてくれたなら歯科医師冥利に尽きると思います。この職業に就いて良かったと心から思えるような診療をこれからも続けていきたいですね。
読者に向けてメッセージをお願いします。
従来の歯科医院のイメージを持たれているなら、変えていただけたらなと思います。歯医者は悪くなってから行く場所ではなく、健康な人が通う場所なんです。現時点では問題がなく、同じ生活習慣を続けていたとしても、将来的に歯や口の中が悪くならない保証はありません。加齢による免疫低下とともに、トラブルが発生するケースもあります。定期通院は悪くならないためのメンテナンスという観点だけでなく、ご自身で良い口腔環境を守るという意識を保つためにも有用だと考えます。口の中の状態が悪い方の多くが、「どうしてもっと若い頃から歯医者に通わなかったんだ」と後悔されているのではないでしょうか。本来は子どもの頃から歯科への定期通院を習慣づけてほしいのですが、まだの方も今からでも遅くありません。ぜひ、歯科の定期受診を習慣化してくださいね。
自由診療費用の目安
自由診療とは入れ歯治療/85万円~
歯周組織再生療法/10万円~
インプラント(1本)/30万円~
セラミッククラウン/10万円~
矯正治療/80万円~