若林 隼人 院長の独自取材記事
駒沢腎クリニック
(世田谷区/駒沢大学駅)
最終更新日:2026/09/04
2026年4月に「駒沢腎クリニック」を継承した若林隼人院長は、循環器を専門として研鑽を積んだ後、将来の継承を見据えて腎臓・透析領域を一から学んできた。現在は、健康診断で異常を指摘された早期段階の診療から、血液透析・腹膜透析、通院が困難になった患者への訪問診療まで、病状の変化に応じて切れ目なく支える体制づくりに取り組んでいる。院長交代後も守り続けているのが、前院長の「ご機嫌で過ごせるように」という理念だ。医学的な正しさだけを優先するのではなく、年齢や生活背景、本人の楽しみを踏まえて治療を考える若林院長に、継承によって進化した診療と変わらない思いを聞いた。
(取材日2026年7月23日)
循環器と腎臓を一体的に診療できるクリニック
先生の専門領域について教えてください。

もともとは循環器を専門とし、心臓超音波検査を中心に研鑽を積みました。その後、クリニックの継承を見据えて腎臓・透析領域も一から学びました。現在では循環器、腎臓、透析などの領域を専門として診療に尽力しています。腎臓の領域では、特に腹膜透析に注力して勉強しました。腹膜透析は簡単にいうと、自宅で行う透析です。通常の透析は週3回通院し、1回4時間の透析を受けなければなりませんが、腹膜透析なら自宅で行えるため通院負担が少なく、仕事と両立しやすいことがメリットです。一方で、カテーテルを留置する手術や、ご自身で透析液を交換する必要があるため、年齢や身体機能、生活環境も含めて、適した方法かどうかを検討します。
クリニックの歴史や患者層について教えてください。
開業から34年を迎え、長年にわたって地域の腎臓病や透析医療を担ってきました。待合室、診察室の他、23床の透析室があります。患者さんは70代、80代が中心で、中には開業時から34年間通い続けてくださっている方もいらっしゃいます。外来では、転居した後も通い続けている方もいらっしゃり、それだけ前院長やスタッフとの信頼関係が長く積み重なっているのだと感じます。透析の方には無理のない範囲で通院していただくことも大切にしています。
どのような症状や相談に対応していますか?

循環器内科では、動悸、息切れ、むくみ、息苦しさなどの症状がある方を中心に診療しています。一方で、腎臓の疾患は早い段階では自覚症状がほとんどありませんので、健康診断で腎機能の数値が悪い方や、尿にタンパクや血液が混じっていると指摘されて来院される方が多いです。通院が難しい方には、訪問診療を行っています。手術や入院、より専門的な検査が必要な場合には地域の病院へご紹介し、治療後の経過観察を当院で引き受けるなど、医療機関同士で直接連絡を取りながら連携しています。
受け継いだ安心感と新たに加わった専門性
クリニックを継承した経緯を教えてください。

義理の父である前院長がご高齢になってきたため、私が継承することになりました。それまでは別の医療機関に勤務していましたが、クリニックの継承を意識するようになってから当院でも月に1回ほど診療を行い、約4年半にわたって患者さんやスタッフと関係を築きながら当院の診療体制を学びました。前院長とは家族としても医師同士としても信頼関係があり、継承後も時々診療を手伝ってもらっています。34年続いてきたクリニックを引き継ぐことには大きな責任を感じますが、これまで築かれてきた良さを守りながら、自分が学んできた循環器と腎臓の知識を生かし、地域の方により幅広い医療を届けていきたいと考えています。
継承後、診療面で変わったことは何ですか?
前院長が専門としている腎臓と、私の専門である循環器、双方を専門的に診られるようになり、診療の幅が広がったことです。心臓と腎臓はどちらにも疾患を抱えている方が多いので、両方の状態を一人の医師が把握できれば、薬の重複を避け、検査結果を見ながら種類や量を調整しやすくなります。患者さんの中には、循環器と腎臓のために2つの医療機関へ通っている方も少なくありませんので、当院で両方をまとめて相談いただくことで、通院や服薬管理の負担も軽減できます。
では、継承後も変えずに大切にしていることは何でしょうか。

前院長が大切にしてきた「患者さんがご機嫌で過ごせるように」という診療方針です。具体的な治療法を指す言葉ではありませんが、ただ病気の数値の改善を図ったり、寝たきりの状態で寿命だけを延ばすことをめざしたりするだけではなく、患者さんが元気に自分らしく過ごせる期間、つまり「健康寿命」を少しでも長くしたいという考えを今後も引き継いでいきます。また、臨床工学技士、看護師、受付、事務などのスタッフも、継承前と変わらず患者さんを支えてくれています。私よりも患者さんとの付き合いが長く、その方の性格や生活背景をよく知っているスタッフも多いですね。院長が交代しても、慣れ親しんだスタッフが変わらず迎えてくれることは、患者さんの安心感にもつながっていると思います。私にとっても、たいへん心強い存在です。
人生のステージと暮らしに合わせた医療を
診療で大切にしている考え方を教えてください。

医学的に正しい治療を行うことはもちろん重要ですが、その治療が目の前の患者さんに本当に適しているかどうかを考えるようにしています。例えば将来の病気の進行を防ぐためには、塩分や食事を厳しく制限したほうが良い場合があります。しかし、100歳の方に、5年後や10年後のために大好きな漬物を完全に我慢してもらうことが、本当にその方にとって良い治療なのかは考えなければなりません。若い方とご高齢の方では、治療によって望める利益や食事制限の意味も異なります。年齢、病状、家族構成、生活習慣、本人の価値観を踏まえ、治療の目標や制限の程度を調整するようにしています。もちろん、明らかに健康を害することは避けていただきますが、食事や趣味などの楽しみはできるだけ残したいと考えています。検査値だけを見るのではなく、生活の質を高めることにつなげ、ご機嫌に過ごせる時間を延ばすことをめざしたいです。
患者さんとはどのように関係を築いていますか?
透析で通院されている患者さんとは週3回、ほぼ2日に1回のペースで顔を合わせます。一般的な外来と比べても、医師やスタッフと患者さんが非常に頻繁に会う診療です。透析室の診察に当たる際は、患者さん全員と顔を合わせてお話をします。病気や治療の話だけでなく、日々の出来事や食事、お仕事、ご家族のことなど、何げない会話の中で「いつもより元気がない」「食欲が落ちている」「眠れていない」といった小さな変化に気づけることもあると考えるからです。長く通う場所だからこそ、患者さんが構えずに話せる、親しみのある雰囲気をつくりたいですね。
最後に、地域の方へメッセージをお願いします。

当院の強みは、症状初期、あるいは健康診断での指摘の段階から、治療や透析、さらに通院が難しくなった方への訪問診療まで、すべての段階の患者さんを継続して支えられることです。腎臓の機能は、一度大きく低下すると元の状態をめざすのは難しいため、症状がなくても健診で腎機能や尿検査の異常を指摘されたら、できるだけ早くご相談ください。早期に腎臓の負担軽減を図ることで、透析が必要になる時期を遅らせることにつながる可能性があります。日々の暮らしの中では、過度な飲酒や喫煙などを避け、十分な睡眠を取り適度に運動するなど、一般的に「健康によい」とされる生活を続けることが、腎臓の機能低下の予防につながります。もし万が一透析が必要になった場合にも、当院で治療を続けていただけます。また、循環器と腎臓を一緒に診ることで、心臓を含めた全身状態や薬を総合的に調整できることも特徴です。無理なく続けられる治療を一緒に考えましょう。

