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松前 博文 院長の独自取材記事

松前歯科医院

(名古屋市千種区/千種駅)

最終更新日:2024/04/10

松前博文院長 松前歯科医院 main

千種駅と今池駅の中間に位置する「松前歯科医院」は、どちらの駅からも徒歩約10分以内の交通至便な場所にある。飲食店が並ぶ広小路通の南に位置し、戸建てには昔から住んでいる住民が多い。「患者さんは、1953年に父が開業して以来のお付き合いで高齢の方が多いですね」と話すのは、2代目院長の松前博文先生。先代院長が行ってきた地域住民のかかりつけ医としての医療を引き継ぎ、1981年から院長を務めている。昭和の時代に建てられたレトロな建物は、玄関で靴を脱いで上がり框(かまち)から待合室へと入る。こぢんまりとした待合室は、長椅子が置かれ、どこか懐かしい感じ。この歯科医院で一人で治療に専念する松前院長に、歯科医院の歴史や診療に対する思いを聞いた。

(取材日2019年10月31日)

地域のかかりつけとなる歯科医院を父から継承

開業して67年だそうですね。建物も昭和レトロな雰囲気で趣があります。

松前博文院長 松前歯科医院1

当院は1953年に私の父が開業し、その数年後に建て直したので、昭和30年代の建築になります。窓もサッシではなく木枠なんですよ。自宅に隣接していたので、私は父が夜遅くまで働いているのを見て、大変そうだなあと思っていました。母も手伝っていましたが、基本的に父が治療も歯科技工もすべて一人で行っていたので、どうしても時間がかかっていたのでしょう。診療時間も決まってはいましたが、急に痛くなったという患者さんも診ていたので、地域のかかりつけ医として立派に役目を果たしていたと思います。

先生が松前歯科医院を継がれたのはいつですか?

1981年の10月に父が他界してすぐに院長となりました。院長に就任する前は、松本歯科大学を卒業後、1年間大学病院で補綴を学びながら勤務し、その後名古屋に戻って一般の歯科医院に勤めていました。父が行っていた地域のかかりつけ医としての医療もそのまま引き継ぎ、診療も予約では受けていません。患者さんに予約にしたほうがいいかを聞いたところ、予約でないほうがいいという意見が多かったので、患者さんの意見を尊重しています。ご自身やご家族のお口のことで気になることがあれば、いつでも気軽に相談に来ていただければと思います。

大学では、入れ歯やかぶせ物などの補綴の勉強をされたそうですね。

松前博文院長 松前歯科医院2

義歯を使った治療について詳しく学びました。病院では補綴の技術を用いてさまざまな治療を行ってきましたが、中でも印象深いのは「毎日、耐えられない」と苦痛を訴えていた顎関節症の患者さんです。この方には、義歯の修理をしてほんの少しずつ高さを調整し、上下の歯がきちんと噛み合うように治療を行いました。噛み合わせは体全体から見てもとても大事です。例えば顎関節症などで下顎の位置がずれると噛み合わせが悪くなり、そうすると体の重心の位置がずれ、姿勢が悪くなり腰痛の原因になることも。アメリカではスポーツ歯学というのがあって、歯の噛み合わせを正常にして重心を正し、運動パフォーマンスを上げることを目的とした研究も行われています。アメリカの陸上アスリートがパフォーマンスを上げるために歯の矯正をしたという話をご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。補綴を通して噛み合わせがいかに大切かをじっくりと学びました。

口の中を清潔に保ち、悪い菌から守っていくことが重要

クリニックに来られるのは、どのような患者さんが多いのでしょう。

松前博文院長 松前歯科医院3

この地域に住む方がほとんどです。今も父の代から来ていただいている高齢の患者さんは多いのですが、その方のご家族であったり、地域のお子さんたちも診療しています。小さいうちから歯の成長を観察し、上手な歯磨きを身につけることは、その子の将来において非常に重要だと感じますね。もちろん入れ歯の作成や修理などもしていますが、一番多いのは歯周病治療です。当院には歯科衛生士がいないので、歯磨き指導も歯の掃除をするスケーリングもすべて私が行っています。

歯周病の治療が多いのですね。予防歯科はやはり大切だとお考えですか?

歯周病は簡単には治らないので、治療期間も長くなり、必然的にその処置が多くなっているのだと思います。昔は人生が短かったこともあって、歯がなくなる頃には人生が終わっていたのですが、今は人生100年といわれている時代ですから、歯周病をきちんと治さないと歯がもたないですよね。現代の歯科医療では、口の中の環境が悪くならないよういかに管理できるかが課題だと思っています。私の長年の経験から感じることなのですが、口の中がきれいな人はあまり病気にならず、そうでない人は早く亡くなっていることが多い印象です。口腔内の環境と内科的な病気の関係は、最近、医科でも話題になっていますし、アルツハイマーや糖尿病との関係も深いといわれています。歯周病になると糖尿病の悪化を招き、逆に歯周病が治ると糖尿病の改善につながることがあるというデータもあります。

高齢の患者さんも多いということですが、患者さんへの接し方ではどんなことに気をつけていますか?

松前博文院長 松前歯科医院4

高齢者に対する歯科治療についての講演会もたくさんありますので、積極的に参加しています。高齢者への対応の仕方など学ぶことは多く、一人で実践するのは難しいのですが、できる限りの配慮はしています。当院は最初バリアフリーではなかったので、玄関には手すりを設置しました。それから、高齢の患者さんはほかの病気をされている方も多いので、どんな病気にかかっているのかを必ず伺うようにし、治療や薬の処方の際に配慮を加えています。

オーラルフレイルを予防、健康寿命を延ばすサポートを

口腔衛生を大切にされていますが、歯を削らないということも大事なのですか?

松前博文院長 松前歯科医院5

もちろん、自然の歯に勝るものはありません。虫歯治療において、歯が白濁している程度の初期の虫歯であれば、削らなくてもフッ素とキシリトールで歯を再石灰化に導くことができます。フッ素塗布をして、毎日の歯磨きでフッ素入り歯磨きを使い、なおかつ虫歯菌の増殖を防ぐキシリトールの摂取を続ければ、半年ぐらいで処置を終えることは可能だと考えます。気をつけていただきたいのは、せっかくフッ素入り歯磨き粉を使っても、何度もうがいをすると、フッ素が歯に定着しないということ。うがいは軽くして、その後30分ぐらいは何も口に入れないで過ごしてください。

うがいの仕方も重要なのですね。日常生活の中でほかに気をつけたほうが良いことはありますか?

毎日の飲み物にも気をつけてほしいですね。日常的に炭酸飲料や健康酢を飲むという方も多いと思いますが、そういった飲み物を飲むと、酸によって歯の表面が溶かされます。スポーツドリンクも糖分が多いので注意が必要ですね。飲むだけなのでたいしたことはないだろうと思われがちですが、運動している人、特に部活動やクラブチームに所属するような子たちは飲む量が多くなりますし、毎日口に含むとなると歯や体への影響は大きいです。

最後に、今後の展望をお願いします。

松前博文院長 松前歯科医院6

私自身も健康に気をつけて、今の診療を続けていきたいと思います。病気ではないけれど、噛んだり、飲み込んだり、話したりという口腔機能が衰えるオーラルフレイルの高齢者が増えています。食べられなくなると、体も弱ってしまいます。高齢になれば体力が落ちるのは当然ですが、口腔機能を維持して毎日の食事をきちんとおいしく食べていれば、体が衰える速度を緩やかにすることができると思うのです。そうすることで、ひいては日本の医療費も下げられるでしょうし、介護に労力を費やすことも減るのではないかと考えています。今後も高齢者のオーラルフレイルを予防することに力を注ぐとともに、一生健康な歯を保てるよう、子どもの頃からの予防、正しい歯磨きの指導もしていきたいです。

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