墨 尚 院長の独自取材記事
墨歯科医院
(一宮市/尾張一宮駅)
最終更新日:2024/07/05

「歯科医療は科学である」という考えを軸に、専門のインプラント治療をはじめ、虫歯・歯周病治療といった一般歯科、審美歯科などを手がける「墨歯科医院」の墨尚(すみ・たかし)院長。特に得意とするインプラント治療は、長きにわたり数多くの症例を手がけてきたが、キャリアを積んだ現在も研鑽を怠らず、常に精度が高く、患者にとって負担の少ない治療の提供をめざす。穏やかな語り口と柔和な笑顔が印象的で、何より記事には収まりきらないほど話題が豊富な墨院長に、診療方針や歯科医療に対する考えを聞いた。「歯科医療は科学」とは一体どういうことなのか? その真意に迫る。
(取材日2016年10月17日/再取材日2024年5月10日)
基礎を徹底し、「再現可能」な歯科治療を行う
歯科医師になられて30年近くたちます。先生が治療において大切にしていることを教えてください。

歯科医療は科学、つまり再現可能なものでないといけないと考えています。再現可能とは、どの患者さんにも同じ精度の治療を提供すること。歯科医師の技量によって、提供する治療のクオリティーにばらつきがあってはならないと思うのです。いろいろと飛び道具を使ったり、その先生にしかできないテクニックというものがあったり、それはそれで素晴らしいことだけれども、でもやっぱりどの患者さんにも同じクオリティーの治療を提供できるというのは本当に重要だし、「自分の中で見通しが立っている状態の医療」を提供できるわけですよね。だから、再現可能であることはものすごく大切だと思っています。
なるほど。再現可能な治療を行うために必要なことは何でしょうか?
再現可能な治療を行うためには「基礎」が大事。経験を積むほど、基礎の大切さを実感していますし、基礎でできないことはないと思っています。私は20代の頃、歯科先進国であるスウェーデンのイエーテボリ大学で勉強したのですが、そこで身につけたのが「Back to the REAL BASIC」というスタンス。歯学部で学ぶ基本に立ち返りつつ、リアルな現場に合わせて腕を磨いていくというプログラムを通して、ほとんどの症例は基礎がきちんとしていれば対応できることがわかりました。ただ、ベーシックな治療に持っていくには、先進の技術、アドバンスが必要です。
それはどういうことですか?

例えば私が専門とするインプラント治療の場合、十分に骨がある状態でインプラントを入れるのがベーシックなかたちとなります。ですが、骨量が少ない場合はインプラントがしっかり埋入できる状態を整えるために骨造成を行います。ここまでがアドバンスで、状態が整ったらあとはベーシックにインプラントを埋めて上部の義歯をかぶせるだけ。私が治療で大切にしているのは、最終的なかたちをいかにシンプルにするかということ。インプラント治療でも、治療結果がかぶせ物治療のようにシンプルだと、患者さんにも負担が少なく、毎日のメンテナンスもしやすいわけです。これが複雑な治療の末の「すごく複雑な修復装置」になってしまったら、毎日の歯磨きも精神的に気を使って大変です。そうならないよう、基礎的な技術でシンプルに仕上げていく。そこは経験と技術があってこそできることだと思います。
歯科医師としてキャリアを積まれた現在も、基礎を大切にされているのですね。
院長に就任して以来、すべてのインプラント手術を録画し、毎回見返しています。手術を振り返ることで、俯瞰(ふかん)であらためて手術を振り返ることができますし、録画を見て気づいたことを次の治療で生かすこともできます。2010年の院長就任から撮りためた録画データは、すでに膨大な数に上り管理が大変ですが、それだけの症例を見返すことが学びになりますので、今後も続けていきたいと考えています。講演会や講習会に参加しなくても、日々の診療から基礎に立ち返り学ぶことがありますね。
経験と先進機器を駆使し、精度の高い治療を追求
開業から50年以上の歴史があるそうですね。歯科医院の歩みを教えてください。

祖父が歯科医師だったのですが、祖父は別の場所で開業しており、父も自分で開業することになったそうです。そこで1972年に開業したのが、当院です。2010年に私が院長に就任したタイミングで改装し、1階と2階に診療室を設けました。2階での診療が基本ですが、ご高齢の方や2階に上がれない方は1階で治療しています。
ご専門のインプラント治療についても、お聞かせいただけますか?
大学でインプラントやかぶせ物、入れ歯などの補綴の実習が始まると、先生にお願いして卒業に必要な量の10倍以上作ってしまうほど面白く感じました。初めてインプラント手術を手がけたのは27歳で、歯科医師としてはかなり早い時期だったと思います。社会的にもインプラントへの認知が進み、症例数が増えていた時期だけに、新しいケースを次々と経験できました。現在は、県内はもとより県外からも患者さんがいらっしゃいますし、他院の先生からの紹介も増え、日々多くの患者さんにインプラント治療を行っています。ですが今もアメリカの研究報告会に参加し、論文にも目を通しています。知識や技術を常にブラッシュアップして患者さんに還元できたらと思っています。
精度の高い治療を行うために、さまざまな医療機器を導入されているそうですね。

歯科用CTやデジタルのマイクロスコープ、デジタルで型採りができる口腔内スキャナーを設置しています。型採りにかかる時間が短縮できる上、精密なデータが取れる口腔内スキャナーは、患者さんの負担軽減と精密な補綴物の作製に役立てています。以前、石こう模型で行っていたシミュレーションを画面上でできるという状態ですね。ただ、それも石こう模型の基礎知識がないと、画面を見てても異変に気づけないんです。だからやっぱり、基礎は大事。基礎をもって先進の機器を使っている、ということですね。
ほかの機器についてはいかがですか?
高圧蒸気滅菌器による器具の滅菌や、各チェアにある口腔内バキュームによる衛生管理も欠かせません。また、インプラント治療を行う個室のオペ室には、頭上から照らす大きな医療用ライトがあります。医科の開腹手術でも使われるLEDのライトで、口腔内が均等に照らされるので患部や出血量がよくわかるのです。この大きさの医療用ライトを導入している歯科医院は珍しいかもしれません。
今までもこれからも、スタッフとともに患者を見守る
スタッフの皆さんも勉強熱心で、知識が豊富なのだとか。

当院では、産休・育休を取りながら10年以上勤務しているスタッフがほとんどです。入社6年目でも新人といえるほど、長く働いているスタッフが多いですね。患者さんとも長いお付き合いになり、患者さんの小さな変化にもすぐに気づいてくれます。例えば、頬にできた小さな吹き出物を見つけて、患者さんに「ストレスがたまっていませんか?」と声をかけたり、歯の食いしばりを私に報告してくれたりします。スタッフにも勉強会や講習会に参加してもらうこともありますが、すでに基本・基礎が身についていて、なおかつ十分な知識を持っているスタッフばかりです。患者さんと接する中で経験を積み、多くのことを学んでくれています。
お忙しいと思いますが、お休みの日はどのようにリフレッシュしていますか?
山登りやキャンプを楽しんでいます。気の合う先生たちと集まって、誰かが「富士山に登ろう」と言い出し、練習のため小さな山から登り始めて、富士山への登頂を果たしました。次の目標はマレーシアの最高峰とされるキナバル山に登ることですね。キャンプは、冬の雪原キャンプが楽しいんですよ。キャンプギア(道具)にもこだわっていて、自宅ガレージにこもって、キャンプギアを手作りすることもあります。実はこのガレージ自体も自分で建てました(笑)。物を作ることが好きなんでしょうね。
今後の展望をお聞かせください。

今の仕事を誠実に続けていきたいですね。長く通ってくださる患者さんとのお付き合いを大切に、今の体制でできる診療を継続していくことを大切にしていきたいです。歯科に対してマイナスのイメージをお持ちの患者さんが多いと思いますが、当院は決してマイナスイメージをプラスにしようとはしません。マイナスイメージを無理してプラスに変えるのは、非常に難しいこと。患者さんにとってもスタッフにとっても、無理をするのはお互いの負担になってしまいます。マイナスイメージを持ちながらも当院に来てくださった患者さんに、継続して治療していただけるように寄り添っていきたいと考えています。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/前歯:1歯につき合計45万1000円~、奥歯:1歯につき合計41万8000円~、GBR(自家骨のみ)(1~2歯)/5万5000円、ジルコニアクラウンを用いた補綴治療/11万円~