実は利用しやすい
歯科訪問診療による口腔ケア
八木歯科
(大津市/唐橋前駅)
最終更新日:2022/11/11
- 保険診療
平均寿命の延伸に伴って介護が必要な高齢者も増えており、高齢者施設はもちろんのこと、自宅などで家族の介護を受けながら暮らす人も多いだろう。「八木歯科」の近隣でも自宅やサービスつき高齢者向け住宅で暮らす介護を要する高齢者が増加しているというが、「日々の介護では食事や排泄のケアに追われ、歯磨きなど口腔ケアはどうしても手薄になりがちです」と八木正樹院長は懸念する。そこで、ぜひ利用を考えてほしいというのが歯科の訪問診療だ。同院では以前から実施しており、簡単な治療のほか、歯科衛生士による口腔ケアを提供している。そこで口腔ケアを行う意義や訪問診療のメリットについて、八木院長に解説してもらった。
(取材日2021年11月23日/情報更新日2022年10月19日)
目次
自宅で行う歯科治療や専門的な口腔ケアが、高齢者介護の一端を担う
- Qなぜ高齢者の口腔ケアが大切なのでしょうか?
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A
高齢になると食べ物を飲み込む力である嚥下機能が低下します。汚れているお口の中を通った飲食物が誤って気管支や肺に入ると、口腔内の菌も一緒に入り込み、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。肺炎は高齢者の大きな死亡要因ですから、普段から口腔内を清潔に保って感染症を予防することが大事です。またそれだけなく、口腔ケアを続けてご自身の歯や入れ歯を使える環境を保ち、食べ物をしっかりと噛むことで、胃腸への負担が減りますし、認知症の予防にもなるといわれています。またバランスを崩したときに歯をぐっと食いしばることは、転倒の予防にもなります。噛むことと清潔の維持は、高齢者では全身の健康に直結しているのです。
- Q訪問歯科診療のメリットは、どのようなところにありますか。
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A
今お話ししたように口腔ケアは重要ですが、たとえ施設でスタッフによる介護を受けていたとしても、食事や排泄、着替えなどのお世話に追われ、歯磨きまではなかなか手が回らないのが実情です。ましてご家族やご夫婦間での介護、特にご主人が奥さんを介護しているような場合には、口腔ケアはとても難しいものです。しかし、週1回でも歯科衛生士によるプロのケアを受けて口腔内の状態もチェックできれば、大きく状況の改善が図れますし、不調の早期発見にもつながります。これからの時代の高齢者介護は、多くの人が関わりチームで支え合うものだと思いますので、手が足りないようであれば、ぜひ歯科の訪問診療を気軽に頼ってほしいと思います。
- Q具体的には、どのようなことをしてもらえるのですか。
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A
1つは歯の治療です。院内で行う治療とまったく同じようにはできませんが、ポータブルの診療機器を持っていきますので、初期の虫歯や歯周病の治療はできますし、特に高齢者では入れ歯の調整を依頼されることが多いですね。それからもう1つは、歯科衛生士による定期的な口腔ケアです。歯ブラシやスポンジブラシを用いての清掃や、食べ物を飲み込む力である嚥下機能を促進するためのマッサージなどを20〜30分ほどかけて行っています。訪問診療というと、費用がかかりそうなイメージがあるかもしれませんが、口腔ケアは週1回、月4回までは介護保険も使えますので、外来受診と同等か、より負担を抑えながら利用いただける方も多いと思います。
- Q申し込み方法や、準備しておくことがあれば教えてください。
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A
当院であれば、こちらへ直接ご相談いただくこともできますし、訪問診療をされている医科の先生、訪問看護師など日頃から介護に関わっている方やケアマネジャーを通じてご連絡いただくこともあります。いずれにせよ、ケアマネジャーを通じて状況や日程を調整し、治療なら歯科医師と歯科衛生士が、口腔ケアなら歯科衛生士がご自宅に伺います。治療は通常、ベッドで行っていますが、口腔ケアだけなら椅子で行うこともあります。コンセントをお借りしたり、入れ歯や歯ブラシを洗うために洗面所などを使わせてもらったりすることもありますが、他に特別な準備は必要ありませんよ。
- Qこちらの訪問診療の特徴があれば教えてください。
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A
私の叔父が鍼灸師なので、これまではそちらを通じてご依頼いただくことが多かったですね。あるいはこれまで当院に通院されていた方が、自宅での生活が難しくなって施設へ入るので、訪問診療で引き続き対応してほしいという依頼も増えています。訪問診療自体は以前から行っていますので診療機器やノウハウはありますし、歯科衛生士もよく勉強している専門のスタッフがいますので、機能訓練も含め安心してご利用いただけると思います。また、このほど管理栄養士を採用しましたので、いずれは介護食や嚥下食などのアドバイスもできればと考えています。