意外と知らない歯周病の基本
正しくケアして健康寿命をより長く
祐森歯科医院
(京都市左京区/八幡前駅)
最終更新日:2022/08/01
- 保険診療
歯や口の中に対する意識が高まり、メンテナンスや予防のために歯科医院に定期的に通う人が増えている昨今。しかし「自分は定期的にメンテナンスを受けているから」と安心して日々の歯磨きを怠っていると、歯周病の影がすぐに忍び寄ってくる。そんな事態に警鐘を鳴らすのは、地域のかかりつけ歯科として2代にわたって歯科医療を提供し続けている「祐森歯科医院」の祐森善彰院長。「私の医療の目的は皆さんに健康に生きてもらうこと」と、健康寿命との関連が深い歯周病の診療には特に力を入れている。そんな祐森院長が評価する同院の歯科衛生士の中から、今回は森杏樹(もり・あんじゅ)さんに代表してもらい、歯科衛生士の立場から歯周病についてじっくり解説してもらった。
(取材日2020年9月4日)
目次
あらゆる治療の基本ともなる歯周病への取り組み
- Qそもそも歯周病とはどのような疾患ですか?
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A
歯周病を一言で言えば、口の中の歯茎に細菌が感染して起こる病気で、日本では成人の約8割がかかっているといわれています。歯を支えている骨が気づかぬうちに破壊されていくのが特徴で、歯茎から出血する、硬いものを噛むと痛いなどの自覚症状が出る頃には、中等度から重度に進行していることが多いものです。また歯周病は完治が難しく、糖尿病や高血圧と同様、一定の治療法や薬ですぐに治るというものではありません。多くの皆さんは歯科医院での定期メンテナンスを予防のためと思っておられますが、実は歯周病のケアをしていることがほとんどなんですよ。普段から気をつけながら、根気強く気長に付き合っていかねばならないのです。
- Q歯周病を放置していると、どのようなことになりますか?
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A
歯を支えている骨が溶けるわけですから、そのまま進行すると最終的には歯が抜けてしまったり、抜かなければならない状態になってしまいます。さらに口の中のことにとどまらず、歯周病菌が全身の血管に回ると心臓病や動脈硬化などを引き起こしたり、妊婦さんの場合は早産や低出生体重児の遠因になったりすることもあります。また、歯周病は糖尿病とも関連性が強く、歯周病が悪化すると糖尿病も悪化する場合があることもわかっています。全身の健康にも影響するということを、ぜひ覚えておいてください。口の中のメンテナンスをしっかり行っていれば重度への進行は防いでいけますので、気になることがあれば早めに診てもらうことをお勧めします。
- Q逆にしっかり行うと、どのようなメリットがありますか?
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A
「8020(はちまるにまる)運動」という、80歳で20本の歯を残す運動が提唱されていますが、ご自身の歯を1本でも多く残すには、歯周病をケアして口腔内を良好な状態に保つことが必須です。歯周病のケアをすれば、全身の健康や健康寿命の実現に大いにつながることも大切なポイントですね。歯がたくさん残っておられる方は高齢になってもお元気で、楽しく生活されている方が多いと感じます。当院ではきちんと検査をした上でスケーリング(歯石除去)などの基本ケアを行い、必要に応じて歯周組織再生療法や結合組織移植術などにも対応しています。どのような歯科治療をする場合も、まず歯周病から、ということを知っておいてください。
- Q説明や治療で気をつけているポイントは?
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A
いくら丁寧に説明しても、言葉だけではよく伝わらないことが多々あるものです。そこで当院では歯周病ケアや流れをアニメーション動画で説明し、患者さんの口の中をカラー写真で撮影して経過を確認してもらっています。「これが自分の歯?」と、良くなっているのがわかれば受診のモチベーションも上がるでしょう。あとは声かけですね。ケアの最中は皆さん、目をつぶっていることが多いので、機器から水を出したりチェアを倒したりする時は必ずひと声かけるようにしています。ご高齢の方の場合はなるべく耳元で話したり、子どもを怖がらせないように拡大鏡を普通のゴーグルに変えたり、そうしたちょっとした心遣いを常に忘れずにいたいですね。
- Q歯周病にならないために必要なことは?
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A
メインはあくまでご自身で行う日々のブラッシングです。毎食後を基本に、就寝前は特に入念に磨いてください。歯ブラシで落とせないような歯と歯の隙間の汚れはデンタルフロスや歯間ブラシを併用するといいでしょう。一方で歯科でのメンテナンスですが、当院では歯周ポケットの深さの測定から歯石を削るなどは歯科衛生士が担当しています。歯石は歯ブラシでは落とせませんので超音波などを使って取り除きます。ブラッシング指導や、患者さんに合ったケア商品の紹介も私たちの大切な仕事の一つです。通院は短い方で1〜3ヵ月に1回、歯周病がなくても半年に1回を推奨しています。