村田 琢彦 院長の独自取材記事
あざみ野メンタルクリニック
(横浜市青葉区/あざみ野駅)
最終更新日:2021/10/12
「あざみ野メンタルクリニック」は、1998年4月に昭和大学藤が丘病院の精神神経科で経験を積んだ村田琢彦先生が開院した精神科専門のクリニックである。「うつを訴える患者さんの中には、本当にうつ病の方もいれば、環境や性格的な理由で気分が沈んでいるだけという方もいます。その見極めをしたり、患者さんの気持ちのわだかまりを整理したりする最初の相談窓口となっていきたい」と話す村田院長。診療室のほかに2つのカウンセリングルームがあり、精神的な症状だけではなく、どんな悩みにも応じてくれる。この地に開業してから15年以上、地域のかかりつけ医として多くの患者の不安に寄り添ってきた村田院長に、これまでの道のりや、今後ますます増えていくと見られるうつ病治療について話を聞いた。
(取材日2014年2月18日)
1998年、明るく開放的な診療をめざして開院
精神科の医師をめざしたきっかけを教えてください。
私が医師になることは父の希望でしたが、その中でも精神科をめざしたのは、子どもの頃に読んだ本がきっかけです。精神科の医師が主人公の小説で、それが強烈に印象に残って、憧れを持つようになりました。医学部でも精神科の勉強に力を入れていました。
大学卒業後の経歴とクリニックを開院した理由をお聞かせください。
昭和大学医学部を卒業後は、同大学藤が丘病院の精神神経科に入局し、大学病院で診療を行いながら、民間のクリニックに勤務してきました。病院とクリニックそれぞれの臨床経験を重ねるうちに、病院では患者さんの待ち時間が長いことと、その割には診療に思う存分時間をかけられないことに疑問を感じるようになったのです。それから精神に病を持つ人こそ、病院のような場所ではなく、もっと明るく開放的な環境が必要だと考えました。そこで患者さんが快適に通いやすいクリニックを開院しようと思いました。
この場所を選んだ理由を教えてください。
いくつか理由はありますが、まず1つは勤務していた昭和大学藤が丘病院から近いということです。開院するのなら病院と連携が取りやすい場所が良かったのです。私は今も藤が丘病院に籍を置いて外来を担当しており、病院の医師が診療に多くの時間を必要とする場合に当クリニックを使うこともあります。もう1つは開院した1998年当時には、田園都市線の下り方面ではメンタルクリニックが少なかったことです。さらには横浜市営地下鉄線も通っていますし、アクセスが便利だったことですね。日当たりが良いことも決め手になりました。
薬物療法が必要か、気持ちの整理が必要かを見極める
どのような悩みで来院する患者さんが多いですか?
ほとんどは近隣の方ですが、知人に精神科に通っていることを知られないように少し遠くから来院される患者さんもいらっしゃいます。女性であれば30代から50代の主婦の方が多く、子育てが落ち着いてからうつの症状を訴えるケースが増えています。例えば、「家事ができない」のは病気のサインでうつ病の可能性があります。
男性についてはいかがでしょう。
男性であれば20代以上の会社員の方が多く、「会社に行きたくない」と言っておみえになります。その理由が「上司が厳しい」「仕事が合わない」とはっきりしている場合は病気とは限らず、環境がその方に合っていないだけということもあるので、産業医に相談する必要があるかを考えていきます。また、「どこの会社に行っても合わない」という方は、環境ではなくその人の思い込みや性格的なことが原因である可能性も。その場合は物事に対する受け止め方などのアドバイスとカウンセリングをじっくり行います。カウンセリングでは、患者さんごとに合ったオーダーメイドのカウンセリングを心がけています。対話を通して、患者さんご自身が自己理解を進めていけるようサポートをするのが基本ですが、砂箱に家や人形を自由に並べることで心の世界にアプローチする箱庭療法や、描画などを使った表現療法、リラックスを目的とした自律訓練法の指導も行っています。
診療にあたって心がけていることは何ですか?
患者さんにとって何が必要かを見極めることです。うつ病などの精神疾患には薬物療法が必要ですが、環境や思い込み、性格的な問題であれば病気ではないので薬は必要ありません。近年、メディアでうつが頻繁に取り上げられるようになり、病気の知識が独り歩きしている状態です。気分の落ち込みをうつ病と位置づけ薬を使っても何も状況は変わりません。ただ、その判断は患者さん自身ではできないことが多い。だからこそ、医師の正確な診断が必要だと思います。治療対象となる症状なのか、カウンセリングが必要なのかを患者さんのお話の中から導いていきます。ヒアリングのポイントは「一日の中で気分の変動があまりない」「眠れない理由を自分でわかっている」「仕事のときは気分が沈むけれど趣味には熱心に取り組める」の3つで、これらがイエスである場合、精神疾患の可能性は少ないので、薬物療法で改善されるとは限りません。
うつ病と診断された場合はどのような治療を行うのですか?
症状に対応する薬やカウンセリングで治療を進めていきます。現在も週1回は昭和大学藤が丘病院で外来を担当しているので、MRI、脳波、CTなどの検査が必要な場合は病院に紹介することもあります。治療には平均6ヵ月から1年ほどを要しますが、患者さんによってその期間は異なります。また、うつ病は治っても再発することが多い疾患ですが、早期発見することで治療期間が短くなり、普段の生活を維持することも可能なので、少しでも不安を感じたら診療を受けていただきたいと思います。
海外認可薬の治験で日本の精神疾患治療の発展に貢献
クリニックならではの特徴を教えてください。
欧米で使用が認められている薬の治験を行っていることも当院の特徴といえます。現在は双極性障害(躁うつ状態)の臨床治験を実施しており、院内には診療室やカウンセリングルームのほか、治験に使う診療室を備え、検査の設備も用意しています。治験の参加者は新聞広告による募集をかけることが多いですが、今回の双極性障害の治験についてはホームページの広報などから希望される方が多かったです。参加基準を満たしている方は参加していただけますのでご希望の方は医師までご相談ください。
今後の展望をお聞かせください。
うつ病は体の痛みとして現れることがありますので、病院や地域の内科医師との連携を深めていきたいと考えています。精神疾患を持つ患者さんの中には体の不調を訴えて内科を受診する人も多く、その中に精神疾患の薬物療法を必要とする方が埋もれてしまっているんです。こういったことを減らすためには個々のクリニックで診療を行うより、多角的にあらゆる側面から診断を行う必要があると考えます。今は製薬会社を中心に内科の医師と精神科の医師が集まる勉強会を検討中です。それから、先ほど言った臨床治験を実施し、現在海外で行われている治療を日本でも行えるようにすることに貢献していきたいと思います。また、患者さんによりわかりやすい心の整理のお手伝いができるように日々研鑽を積んでいきたいですね。
先生の休日の過ごし方をお聞かせください。
休日は土曜の午後と日曜で、自宅でのんびりすることが多いです。趣味はランニングで、遠出はせずに家の周りを走っています。学生時代はよく六本木で飲み歩いたものですが、そういうことももうありませんね(笑)。今は行くとしても映画館くらいです。
最後に読者へメッセージをお願いします。
小さなことでも悩み事や心配事があれば、クリニックを受診していただきたいと思います。なお、当院は完全予約制となっています。初診の時にはゆっくり時間をかけてお話を聞くため、必ずお電話で予約を取ってから来院してください。来院されても治療が必要ないと診断されることがあるかもしれませんが、心のもやもやを解決するお手伝いもクリニックの役割ですので、症状があるないに関わらず、ご自身が生活しやすい環境づくりのための手がかりとして、気軽にお越しください。