井上 裕子 院長の独自取材記事
イノウエ矯正&歯科
(箕面市/石橋阪大前駅)
最終更新日:2024/07/03

石橋阪大前駅から徒歩3分の場所にある「イノウエ矯正&歯科」。大学病院で研鑽を重ねた井上裕子院長が1990年に開業。豊富な症例経験を生かし、矯正をメインとするクリニックとして、人生100年時代を支える治療後も安定する矯正治療をめざす。現在は口腔機能の改善を目的とした口腔筋機能療法(MFT)にも注力し、小児の不正咬合の予防にも役立てている。明るい笑顔が印象的な井上院長に、診療への思いや患者への接し方などについて、たっぷりと話を聞いた。
(取材日2024年5月20日)
人生100年時代を支える安定する矯正治療をめざす
初めに、クリニックの歴史を教えてください。

当院は1990年4月に開業しました。最初は駅前にあるビルでチェア3台から始めて、しばらくしてすぐ近くに移転。そこが手狭になってきたため2022年2月に現在の場所にリニューアルオープンしました。開院当初から「美しい笑顔と生涯にわたるお口の健康を提供する」ことを使命にしています。矯正治療を希望される人の多くは「見た目をきれいにしたい」という動機で初診相談にいらっしゃいます。しかし、だからといって、見た目だけをきれいにするのが、矯正治療ではありません。きちんと噛めて、治療後も安定し、全身の健康を支えていける、美しくて正しい歯並び・噛み合わせに導くことが矯正治療なのです。
治療後も安定する矯正治療とはどんなものなのでしょうか。
一言で言うと、「患者さんと矯正歯科医が最善を尽くして勝ち取るゴールの高い矯正治療」でしょうか?「限りなく理想の咬合に近ければ近いほど安定する。」これは、私の長年の経験から得た答えです。そして、この理想の咬合のためには、的確な診断・治療計画・歯を排列する技術だけでなく、不正咬合の原因の一つとなっている口唇や舌の機能の問題を克服することが重要です。機能の問題を改善するために、MFT(Myofunctional therapy/口腔筋機能療法)というレッスンがあり、当院では必要に応じて患者さんにこのレッスンに取り組んでいただきます。この機能の問題の克服は、かなり大変なのですが、矯正治療やレッスンを通して、患者さんご自身に、ご自分の歯を大切にしたいという気持ちを育んでいただけると考えています。当院の治療ゴールのレベル、治療後の安定は、患者さんご自身の歯に対する愛情によって導かれるものだと思います。
現在の診療体制を教えてください。

歯科医師は私を含む矯正歯科担当3人、一般歯科担当1人、非常勤の口腔外科担当1人によるチーム医療を行っています。矯正歯科専門の歯科医師1人だけだと、どうしても考えが凝り固まったり、気づけない部分があったりするのですが、複数の視点で診ることにより、お互いに意見を交わして、より良い方針を見つけ出すことができます。また、他科の歯科医師が加わることで、虫歯や歯周病の診断レベルが上がり、治療がスムーズになるだけでなく、矯正治療後の歯の修復やインプラントなど、よりレベルの高い包括的な治療計画の立案ができるようになります。また、犬歯が骨の中に埋まって萌出できない症例では、口腔外科で歯茎や骨を取り除き歯が見えるようにする手術を行い、矯正装置をつけるということが必要ですが、以前はわざわざ他の病院へ出かける必要がありましたが、今では院内でできるので、患者さんにとってもクリニックにとっても負担が少なくなりました。
保護者の目線で成長期の子どもの気持ちに寄り添う
井上院長のご経歴を教えてください。

小さい頃、矯正治療を受けたことがとてもうれしかったので、歯科医師をめざしました。大阪大学歯学部卒業後、大阪大学歯学部矯正歯科学講座に入局し、そこから矯正治療一筋で歯科医療に携わってきました。臨床の傍らで、歯の移動と力の関係を京都大学工学部の生体力学の先生と研究したり、海外の医療機関で学んだりと積極的に活動してきました。今でも年に1度は、アメリカの勉強会に参加して、海外の新しい情報の習得に努めています。また、収集した知識を、子どもたちの虫歯予防、不正咬合の予防に役立ててもらいたいと思い、絵本「どうしてむしばになるの」や「お母さんたちに伝えたい!歯並びの良い子に育てよう」などの本を上梓しました。
矯正治療では保護者としての目線も大切にされているそうですね。
「複雑な装置による本格矯正は中学生がゴールデンエイジ」と教科書的にはいわれていますが、本格矯正を始めたお子さんが反抗期に入ると、突然歯磨きをしてこなくなったり、いい加減なところでやめたいと言い出したりということを、若い頃、経験したことがありました。私自身、息子のたいへんな反抗期を経験しましたので、見守る親御さんの胸中は察するに余りあるほどです。反抗期の子どもさんには、「この部分だけはやっておこう。それ以外はいいから」と理由もしっかり説明し、納得してもらって治療をしています。反抗期が通り過ぎると、急に日常のケアがしっかりしたり、遅刻もなくなったりという変化が見られるので、お子さん自身の意思を確認して、本格的な矯正治療を開始するようにしています。矯正治療のゴールを高めるには、歯科医師だけでなく患者さん本人の努力が不可欠ですから、お子さんと親御さんに寄り添った診療を心がけています。
井上院長が患者さんと接する際に意識していることは何ですか?

繰り返しになりますが、治療後も安定する高いレベルで矯正治療を成功させようと思うと、患者さんご自身の前向きな姿勢が不可欠なので、一緒に頑張ろうという気持ちを引き出すように心がけています。以前、とても難しい症例で大変な期間が長く続いたにもかかわらず、愚痴一つこぼさず、ずっと頑張り続けてくれた女の子がいたのですが、私はいつしかその子を“戦友”と呼んでいました。その子の治療が終わった時には、二人で大喜びをしました。当院には、小さなお子さんからご高齢の方まで幅広い患者さんにお越しいただいていますが、同じ目線でお話をさせていただいて、一緒に頑張りたい。と思っていただくよう意識しています。エステや美容外科とは異なって、全身の健康を支える大切な医療であることをしっかりご理解いただくことで、治療期間中に自分自身の歯に愛着を持っていただけるようになり、治療後の安定性にもつながっていくと考えています。
患者と歯科医師をつなぐスタッフはクリニックの誇り
スタッフについて教えてください。

矯正歯科の診療所に勤める歯科衛生士の大切な任務は、虫歯予防とMFTです。矯正装置をつけると、虫歯のリスクが上がってしまうので、そのリスクを下げるために、来院の都度クリーニングをしてもらいます。また、私が重要視しているMFTを担当してくれているのも歯科衛生士です。東京までMFTの講習会に行った後、優秀なトレーナーとして活躍してくれているので、患者さんに自信をもってMFTを勧めることができています。長く勤めてくれている人も多く、中には30年近く一緒に働いてくれているスタッフもいて本当に助かっています。矯正を専門とする歯科技工士も在籍しているので、迅速な対応も可能です。矯正器具の修理や新しい装置への作り替えも即日対応できるので、患者さんのメリットとなっているのではないでしょうか?
スタッフの皆さんの頼れるポイントは?
やはりコミュニケーションですね。歯科衛生士は歯科医師よりも患者さんに近い存在ですので、クリーニングやMFTの合間に、患者さんとたくさんコミュニケーションを取ってくれています。患者さんのちょっとした愚痴を受け止めてくれるので、患者さんの安心につながっていると思います。そうした会話の中で得た情報を、治療の進め方に反映することもできますね。歯科医師はどうしても患者さんと接する時間は短くなってしまうものです。歯科衛生士が、患者さんと歯科医師との懸け橋になってくれるんです。
今後の展望を教えてください。

最近、お口がポカンと開いてしまったり、しっかり噛むことができなかったりする口腔機能発達不全症が問題になっています。こういう口腔機能の発達不全は、不正咬合につながる可能性があり、ひいては全身の発育にも影響を及ぼしかねません。小さいうちから気をつけてあげることで、お口の中の環境の改善が見込め、不正咬合の予防につながります。これまで培ってきたノウハウを活用して、子どもたちのお口、そして全身の健康を守るお手伝いをしていきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは口腔筋機能療法(レッスン費用)/3300円~、小児矯正(一期治療費として)/22万円~、成人の矯正/77万円~、成人の部分矯正/16万5000円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。