星野 千代江 院長の独自取材記事
ほしの小児クリニック
(横浜市都筑区/中川駅)
最終更新日:2024/06/14
「子どもが生まれてくるのは、ある意味、奇跡ですから。授かった子どもを大切に育ててほしいのです」と語る「ほしの小児クリニック」星野千代江院長。子どもの神経疾患や行動異常なども幅広く学んできた経験を生かし、成長に伴う心の不調や発達障害の診療にも力を入れる。また栄養医学に基づく視点を取り入れ、子どものより良い成長サポートをしているのも特徴だ。「病気を診るだけでなく、自分の経験も生かして、子育て全般の応援をしたいと考えています」。若いファミリーが多いニュータウンの中で、子育ての悩みやつらさを理解し、母親たちの力強い味方と慕われる星野院長に、診療の特徴や、子どもや小児科診療への思いを聞いた。
(取材日2024年5月21日)
栄養指導、乳児の視力検査など独自の診療で親子を支援
栄養指導をはじめ独自の取り組みをされていると聞きました。
ただ病気を診るだけではなく、お母さんたちの迷いにも耳を傾け、子育て全般を応援できるクリニックをめざしてきました。病気以外にも、成長に伴う心の不調や発達障害の診療にも対応し、そのお子さん一人ひとりにとって最適な医療を取り入れたいと考えて、西洋医学や漢方、栄養を整えることなどに取り組んでいます。中でも栄養に着目した考え方に可能性を感じて力を入れています。また、子どもの斜視や屈折異常を早期にスクリーニングできるよう機械を導入して、2歳頃からの視力検査を行っています。従来の視力検査は3~4歳にならないと受けられませんでしたが、目の機能は3歳くらいまでが感受性が高く、6歳を過ぎたくらいで発達が止まってしまうといわれています。そのため、できるだけ早い段階で弱視や異常を見つけて、改善への取り組みを始めていけるようにしたいと思っています。
栄養指導とは、どういったものなのでしょうか。
栄養医学は、栄養を整えていくことで、さまざまな体の不調の改善に取り組んでいこうというものです。子どもは成長していきますので、この時期に栄養状態を改善し体の土台を作ることはとても大切なのです。偏りのない適切な栄養摂取は、子どもの体と心の成長にとても大きなメリットがあります。例えば、ほとんどの子どもは鉄不足の状態にあります。この時期に鉄を補うことでその子の可能性を大きく引き出すことができると思います。体の土台を作る時期だからこそしっかり向き合っていっていただきたいですし、栄養を整えていくために家族の食事を変えていくことで、親御さんをはじめ家族全員が健康に近づけるのも大きなメリットだと考えています。
オンラインセミナーも始められているとか。
そうなんです。栄養を整えることの重要性をもっと知ってほしい、広めたいと考えて、乳児健診の際の指導や、嘱託園医をしている保育園や幼稚園での講演に加えて、最近、オンラインでのセミナーも始めました。発達障害をテーマとしたセミナーも行っています。また栄養指導を求めて来院される方が増えてきましたので、診療日も増やし、予約制で毎日対応しています。
発達障害の子どもへの栄養指導や心のケアにも取り組む
こちらは発達障害の患者さんも多く来院されるそうですね。
発達障害の子どもは、アレルギーの次に多いといわれるほど有病率は高いのですが、発達障害を専門的に診ることができる医療機関は患者数から考えると十分ではありません。次の診察が半年後から1年後になることも多いので、その間、お子さんと親御さんを当院で栄養改善をしつつサポートしたいと考えて診療を行っています。実はそれが、栄養指導に取り組んだきっかけでもありました。栄養と発達障害の関係は欧米では注目されていましたからね。
具体的にはどのような診療を行うのですか。
例えば、発達障害のある子どもは学校で叱られてしまうことが多いため自信をなくして自分を否定しがちであり、一方、親御さんも子どもにどう接すればよいのかと悩みます。そこで、専門的な病院で受ける診療と診療の間に当院に通っていただき、栄養指導で体を整えながら、お子さんの心のケアと親御さんへの指導を行うのです。発達障害のお子さんは偏食などが多く、栄養が偏っていることが多いので、栄養を改善することもとても大切です。薬を使うわけではなく、足りない栄養素を補うことで本来の力を発揮できるようにしていくわけですから、安心して取り組んでいただけると思います。
親御さんへはどのようなアドバイスをされるのですか。
発達障害と診断されると、お子さんの将来について悩む親御さんが多いようです。しかし、子どもを授かって育てられるというのは、それだけで奇跡であり、大きな幸運です。発達障害だからといって悲観するのではなく、特性の一つとして親御さんがその特性を受け入れてほしいと思うのです。そして、子どもの特性はある程度遺伝子で決まりますが、そのスイッチを入れるのは日々の栄養と環境です。子どもの多様な特性を受け入れて、栄養と環境を整え、その子の能力をどう引き出すか、どう生かしていくかを考えていっていただきたいと思っています。
ところで、先生は、どうして医師を志されたのですか。
そもそも「人間とは何か」という問いが原点でした。人間について知りたいという気持ちが強く、人間を知るには、まずはその体を知ることが必要と考えて、体について学ぶことのできる医学部に進学しました。その後、人間の原型である子どもを診ることのできる小児科へと進みました。その中でも哲学書を読んだり、心の問題について考えたりしましたが、結局、「人間とは何か」の答えに少し近づくことができたのは、私自身が子どもを産み育てたことからです。子育てをしていたら現実に引き戻されて、毎日をきちんと生きていくことこそが学びなのだと感じました。子どもを育てることで、人間がどう成長していくか復習ができたと思います。
社会にとっても重要な子育てを小児科医としてサポート
開業から四半世紀を経て思われることは?
たくさんのお子さんの成長を見てきて「小児科ってすごくいいな」と思います。うれしいのは、お子さんだった患者さんが成長して、ご自分のお子さんを連れてきてくれること。小児科の醍醐味(だいごみ)ですね。奇跡の連鎖で命が生まれ、すべてのお子さんにはあふれるほどの可能性があります。一人ひとりの能力をできるだけ伸ばすためには、体力や免疫力など土台となる部分を底上げしていくことがとても重要であり、そのためには栄養指導や漢方などが役に立つことも多いと感じています。また、子どもたちにいろいろな機会を与えてあげたいと思い、私が音楽好きであることからチャリティーコンサートの開催にも取り組んでいます。小さいお子さんが泣いても構わない、お母さんも遠慮なく楽しめるそんなコンサートを開きたいと思っているんですよ。
クリニックとしての展望はありますか?
当院の隣に、横浜市北部地域療育センターが新たにスペースを設けましたので、発達障害のお子さんのサポートなど、今後は連携していきたいと思っています。そして、そろそろ、一般の診療は他の先生方に任せて、私は栄養や発達障害など自分のライフワークに特化していきたいと思っています。この分野は取り組む人が少ないですし、私のような経験の長い医師が手がけるほうがいいと思うんですよ。頭を固くせずに、良いと思うものを積極的に取り入れて、医師としてより多くの引き出しを持っていたいですね。子育ては社会にとっても重大なプロジェクトです。子育てというチャンスに恵まれたら、責任を持ってしっかり育ててほしいと願っていますので、小児科医として、ぜひそのお手伝いをしていきたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
まずは、お子さんが嫌がらず、親御さんもいろいろ相談できる、そんな小児科のかかりつけ医を見つけてください。また、しつけの面では、必要なときにはお子さんをしっかり叱ってあげてください。駄目なことは駄目と教えないと、将来困るのはお子さんですし、愛情があれば叱られてもお子さんはわかってくれるはずです。親の責任は、衣食住を提供することと、物事の善悪を教えることだと思います。礼儀正しく、人の心を理解できるような子どもに育ててほしいですね。将来的にその子が幸せになるように、しっかり育ててほしいと思います。これは国や世界の発展のためにもとても大切なことです。子育て中の親御さんは一生懸命で余裕がないとは思いますが、できればもっと子育てを楽しんでください。私自身、子育て中はなかなか楽しめなかったのですが(笑)、ぜひお子さんとの貴重な時間を楽しんでいただきたいと思います。