全国のドクター9,208人の想いを取材
クリニック・病院 159,001件の情報を掲載(2024年3月19日現在)

アレルギー症状 PC用画像

(公開日2015年11月26日)

アトピー性皮膚炎や花粉症など、「アレルギー」という言葉を日常よく耳にするようになりました。アレルギー専門の窓口を設けるクリニックも増え、子どもから大人まで、アレルギー症状に悩まされている人も増加しているようです。でも一口に「アレルギー」といっても、その内容は多岐にわたります。正しい知識を得るべく、アレルギーを専門にしている相良博典教授にお話を聞いてきました。

大切なのは、まず自分の症状が
「何のアレルギーによるものか」を知ること。

多様化するアレルギー原因物質には現代ならではのものも

近年、アレルギーは原因も症状も多様化していて、大人も子どもも患者さんが後を絶ちません。そんな中、「アレルギー」という言葉が一人歩きしているのではないかと感じることがあります。実際、何となくわかっていても、本当のところはよくわからないという人が多いのではないでしょうか。 それもそのはず、アレルギー症状は目に見えても、原因は見えにくいからです。 簡単にアレルギーのメカニズムをご説明しますと、まずアレルギーを引き起こす原因物質のことを「抗原」、あるいは「アレルゲン」と呼んでいて、皆さんがよくご存じの花粉症ではスギやヒノキなどの花粉がこれにあたります。抗原が体内に入ると、それを有害と誤認した細胞たちが活発になり「抗体」を作って、いずれくしゃみや鼻水などの不快な症状となって表面化します。本来、抗体は体を守ってくれる、いわば「防衛軍」のような働きをするのですが、過剰反応してしまうと体を攻撃するという皮肉な特性があります。 抗原は私たちの暮らしの中にも潜んでいます。例えばペットアレルギー。屋内で動物を飼うようになって増えた現代ならではのアレルギーで、垢やフケのついた動物の毛を吸い込むと咳などの症状が出ます。またダニアレルギーも、かつては春から夏にかけて繁殖し、寒くなる秋や冬には死んでしまったダニが、密閉性が高く室内温度がほぼ一定の現代家屋で年中生息できるようになり、アレルギーを引き起こしています。 このようにアレルギーは住環境とも大いに関係があり、加えて人それぞれの体質に左右されます。ここでいう体質とは、抗体の許容量(しきい値)を指し、よくコップの大きさに例えられます。

食物アレルギーはまず原因物質を知ることが重要

食物アレルギーはたいへん重大な問題です。場合によってはアナフィラキシーショックと呼ばれる急激なアレルギー反応を起こし、時には命に関わるケースもあるからです。 大切なのはまず、アレルギーを引き起こす原因物質が何かを知ること。それにはアレルギー検査を受け、しっかりと診断をつけてもらうことが必要です。原因物質がわかったら医師の指導のもとで治療を受けてください。世の中にはアレルギーに関する情報がたくさんありますが、自己判断はとても危険です。治療法は原因物質を体内に入れない食物除去が主流ですが、最近はあえて摂取し徐々に体を慣らしていく減感作療法(免疫療法)という方法もあります。ただしこれは原因物質の違いによってアプローチが変わってくるので、必ず専門の医師のもとで行いましょう。また、小さい頃は卵アレルギーの症状が出ていたのに、いつのまにか症状が出なくなって食べられるようになったというケースがままありますが、これは成長過程で体質が変わり、原因物質に対して抵抗力を持ったからと考えられます。子どもの頃にアレルギー反応を起こした食べ物は大人になってもそのままなのかというと、そうとも限らないのです。

中等症までの喘息は薬による治療でコントロールできる

喘息に関しては格段に重症ケースが減ったものの、病気自体は依然としてなくなりません。ただ薬の急速な進化で、軽症から中等症レベルまでなら長時間作用型の拡張薬や抗炎症薬でコントロールできるようになってきました。 とはいうものの、わが子に小児喘息の診断が下った親御さんの動揺は言うまでもありませんし、ましてや治療薬が吸入ステロイドだと知ると、誤った認識から抵抗感を持つ方が少なくないのが事実です。ステロイドは正しく使えばたいへん有効な薬ですし、厚生労働省のガイドラインでも喘息は炎症性の疾患とされているように、気道の収縮を引き起こす炎症を抑えるには吸入ステロイドが欠かせません。 またステップダウンという考え方で、症状に応じて吸入ステロイドや併用薬の量を減らす方法もありますが、喘息の治療はやはり継続的な抗炎症治療が基本。ただし、コントロールはできているものの、特に成人喘息は治癒まで持っていけていないのが課題です。ちなみに小児喘息では患者の80%程度が思春期までに治癒していると報告されています。

この先生に聞きました!

相良博典教授画像

昭和大学病院
呼吸器・アレルギー内科 診療科長

相良 博典教授

獨協医科大学卒業。同大越谷病院呼吸器内科で主任教授を務める。 2013年4月より昭和大学病院で現職。
日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本アレルギー学会専門医ほか。

身近にあるアレルギー原因物質

アレルギーと一口にいっても、その原因物質はさまざま。その物質に反応しやすいかどうかは個人差が非常に大きく、自分が何にアレルギー反応を起こしやすいか、あらかじめ知っておくことで対策が取りやすくなります。ここでは、私たちの身近にある「アレルギーの原因になり得る物質」をピックアップして紹介します。

アレルギー症状の原因には実はこんな物も!

くしゃみや鼻水、発疹、目のかゆみなど、突然起こるアレルギー症状。花粉や食物など、比較的ポピュラーな原因物質から、金属や昆虫など、意外なものまで、あなたの症状は実はこれが原因かも?
生活の中で自覚があるものは注意をし、気になる人はクリニックで検査を受けましょう。

スギやヒノキだけじゃない!?樹木や植物の花粉

日本人の15~20%の人が発症しているともいわれる花粉症。そのうち約8割がスギ花粉が原因と言われています。日本ではスギだけでなく、ヒノキやブタクサ、ブナなど、時季によってアレルギー原因物質になり得るさまざまな花粉が飛んでいます。樹木の花粉だけをイメージしがちですが、実は、イチゴやオリーブ、バラなどの植物が原因になることも。また、タンポポなどのキク科植物のほか、梅や桜などに反応する人もいます。まずは、どの樹木や植物に反応するのか、ドクターに検査の相談をしてみるとよいでしょう。

花粉症についてもっと詳しく見る

ネコやイヌのフケ・上皮

イヌやネコ、ハムスターなどのかわいいペットたち。でも残念なことに、これら小動物に反応を起こす人もいます。ペットの毛、垢や角質化した細胞(フケ)、唾液などが原因だとされています。特にこれらペットのフケは0.001㎜と非常に小さく、床に落下せずに空中を浮遊しているため、知らずに吸い込んでしまっているケースが多いのです。まだアレルギーが発症していなくても、空気清浄機などで早めに対策をしておきたいものです。

牛乳、小麦、卵、魚…食餌性アレルゲン

原因となる食物を摂取することでアレルギー症状が起こります。種類によってはアナフィラキシーショックを引き起こし、時に命にも関わるほどの重篤な症状となる場合もあるので注意が必要。0~6歳の乳幼児の食物アレルギー原因物質は、ワースト1位が鶏卵、2位が乳製品。成長するにつれて甲殻類、魚介類、ソバ、小麦など、さまざまな食物がアレルギーの原因になります。とはいえ、アレルギーの原因食物の中には子どもの成長に欠かせない栄養素が豊富なものもあり、単に原因食物を除去すればよいとは言えません。必ずドクターのアドバイスを受けましょう。

食物アレルギーについてもっと詳しく見る

肌だけでなく口腔内にも!?金属アレルギー

金属アレルギーは日本国内では10人に1人程度だといわれていますが、近年はさらに増加傾向に。金属製のアクセサリーや腕時計、さらには歯科金属が原因による発症例も。歯の詰め物など、同じ金属が長く口腔内にあると、溶け出した金属イオンが体内に吸収され、それを異物と認識してしまうのです。「アマルガム」「金属パラジウム合金」などは、保険適応の詰め物素材として一般的ですが、治療前に歯科医師に相談することが大切です。

室内に潜む!?ハウスダスト、ダニ

実は、アレルギーの原因物質としてワースト1位なのが「ダニ」。2位は「ハウスダスト」ですが、その中にはダニの死骸や糞が含まれています。ダニは気温25℃、湿度75%でもっとも繁殖しやすいと言われ、高温多湿な日本は、ダニにとってまさに天国。布団の中綿には約10万匹のダニやその死骸が潜んでいるとも言われています。ダニ対策は湿度管理が重要で、温度が25℃以上あっても、湿度が50%程度まで下がれば約11日で死滅するというデータもあります。

シャンプーや化粧水にも!?化学物質過敏症

特定の化学物質に対してアレルギー症状が引き起こされる「化学物質過敏症」も近年では問題になっています。例えば、タバコの副流煙、シャンプーや香水、芳香柔軟剤の合成香料、ペンキなど塗料に含まれる揮発性有機化合物などにより、鼻や喉の粘膜が刺激され、息苦しくなったり、直接肌に触れるものには、かゆみや発疹の症状が出たりします。自分が化学物質過敏症でなくても、タバコはもちろん、香水や柔軟剤なども、知らないうちに周りの人につらい思いをさせてしまう可能性があるので、成分や使用量に注意が必要です。

ゴキブリや蚊も!?昆虫のアレルギー

ハチや蚊に皮膚を刺されて症状が出るものと、ガやチョウなどの鱗粉、ゴキブリなどの体の破片、排泄物などを吸入したことにより起こるものと、大きく分けて2種類あります。前者の場合、特にハチなどに刺されたときは、確率は1%程度と低いもののアナフィラキシーショックに注意が必要です(攻撃性の高いスズメバチの被害は8~10月に多い)。後者は鼻水やくしゃみのほか、咳やぜんそく症状など呼吸困難を伴うことがあり、過敏な人はそうした昆虫を寄せ付けない対策を。

「アレルギー」Q&A

ドクターには面と向かってなかなか聞けないアレルギーの素朴な疑問。その中からよくある質問をピックアップし、呼吸器やアレルギーの病気に詳しい相良先生にわかりやすく教えてもらいました。ぜひ検査や治療の参考にしてください。

アレルギーの相談は何科へ行けばいいですか?

これは患者さんが迷うポイントですね。お子さんの場合、まずは小児科にかかり、あとはアトピー性皮膚炎なら皮膚科、アレルギー性鼻炎なら耳鼻科というように、症状が出ている部位に合わせるといいでしょう。大人はアレルギー科にかかるのが一番ですが、もともと非常に少ない診療科なので、事前にアレルギー科を標榜しているクリニックや病院を探しておくことをおすすめします。

アレルギーかどうかを判断するには?

アレルギーを専門に診ている医師のもとでアレルギー検査を受けてください。外来でできる検査には血液検査と皮膚テストがあり、何十種類というアレルギーの原因物質がわかります。検査方法は血液検査が採血、皮膚テストは短時間で済む即時型のプリックテスト(スクラッチテストともいう)と、24~48時間かけて反応を見るパッチテストがありますが、血液検査では反応が出なかったのに皮膚テストで反応が出たというケース、その逆もありますので、両方受けていただくのがいいと思います。

血液検査でどんなことがわかるの?

IgE(免疫グロブリンE)という免疫に関わるタンパク質の数値などで、アレルギーの有無や程度がわかります。ただし数値が高いと必ずアレルギーを発症するわけでなく、抗体の許容量にもよるので、血液検査の数値と症状は必ずしも一致するとは限りません。抗体の許容量はしばしばコップの大きさに例えられ、蓄積された抗体(抗原と結びついて増えるタンパク質)がコップからあふれるとアレルギーを発症するとイメージされています。