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東京女子医科大学病院 中村 かおる 先生

こちらの記事の監修医師
東京女子医科大学病院
中村 かおる 先生

しきかくしょうがい(しきもう・しきじゃく)色覚異常(色盲・色弱)

概要

色覚異常は、多くの人と色の見え方が異なる状態をいい、先天色覚異常と後天色覚異常があります。先天色覚異常は遺伝的な特性で、日本人男性の約20人に1人、日本人女性の約500人に1人存在します。特定の色を識別しにくいことがあり、日常生活に支障を来すこともありますが、自分では気づきにくく、学校や職場で受けた色覚検査で発見されて驚く人も少なくありません。一方、後天色覚異常は目や頭の病気などに伴って色の見え方が変化する症状で、加齢によっても起こります。

原因

目の網膜には杆体(かんたい)、錐体(すいたい)という2種類のセンサーがあり、このうち錐体が色を感知しています。錐体には赤の光に主に反応する「L-錐体」、緑の光に主に反応する「M-錐体」、青の光に主に反応する「S-錐体」がありますが、先天赤緑色覚異常では生まれつきL -錐体またはM -錐体が欠損、あるいは機能不全になっていることから、特定の色が区別しにくくなります。色覚関連遺伝子はX染色体上にあり、劣性遺伝します。男性はX染色体を1本しか持っていませんので、異常のある遺伝子を受け継ぐと必ず異常が表れますが、女性は2本あるので片方だけ異常遺伝子を受け継いだ場合は表に出ず、保因者となります。男性が女性より多いのはそのためです。一方、後天色覚異常は白内障、網膜疾患、緑内障などに伴う症状です。網膜疾患や緑内障などでは錐体の機能が低下して、白内障では水晶体が変色するために、色を識別しにくくなっていきます。

症状

先天赤緑色覚異常では、L-錐体やM-錐体の異常により、赤と緑が似て見えるほか、黄緑と橙、緑と茶や灰色、青と紫、ピンクと灰色、ピンクと水色なども混同しやすくなります。また、L-錐体の異常では赤が薄暗く見え、これを「1型色覚」と呼びます。M-錐体に異常がある場合は「2型色覚」です。程度にも個人差があり、強度では時々色を間違えますが、弱度で問題になることはほとんどありません。一方、後天色覚異常では、網膜疾患や緑内障に伴う色覚異常は初期には青みや黄色みを感じにくくなり、病気が進行して視力が低下すると他の色もわかりにくくなっていきます。白内障によるものは黄色みや茶色みを感じにくくなります。

検査・診断

先天色覚異常の検査には、通常、色覚異常があると見分けにくい数色の組み合わせで文字や図形が描かれた石原色覚検査表やSPP標準色覚検査表第1部先天異常用で、異常があるかどうかをスクリーニングします。色覚検査表で異常が疑われたら、少しずつ色の違う色票を似ている順に並べてもらうパネルD-15という検査で、その並び方により、異常の程度が強度か弱度かを判定します。色覚異常の型と程度の最終診断にはアノマスコープという特殊な器械が用いられますが、この器械を備えている施設は数少なく、通常は眼科でも色覚検査表とパネルD-15で判定しています。後天色覚異常の検査には、SPP標準色覚検査表第2部後天異常用とパネルD-15が用いられます。

治療

先天色覚異常は生まれつきの感覚で、治療して治るものではありません。しかし色覚異常があると、特に強度では、黒板の字が読めなかったり、肉の焼け具合がわからなかったり、左右違った色の靴や靴下を履いてしまったりするなど、学校生活や日常生活に不便を感じることがあります。また、遠方では信号機の色が識別しにくいなどの理由で色覚に基準を設けている職種もあり、その他の職種でも微妙な色の見分けが必要なときに支障を来すこともあるため、できるだけ早いうちに自身の色覚異常について医療機関で診断を受け、いろいろな場合に備えていくことが重要です。対策を講じることで間違いを減らすこともできます。最近では、学校や社会でも色のバリアフリー化が進んでおり、色覚異常とわかっていれば配慮やサポートを受けることもできます。一方、後天色覚異常は、目の病気などから色覚異常が起こっている可能性がありますので、原因疾患の診断と治療を受けましょう。

予防/治療後の注意

現在、学校でも、保護者の同意を得た上で積極的に色覚検査を行っています。もし、色覚異常の疑いを指摘されたら、早めに眼科で精密検査を受けてください。子どもが色を間違ったり、絵を描いたときの色使いが変わっていると感じたりしたときも、眼科を受診してみましょう。色覚異常のタイプや強度によって、日常生活ではどのような注意をしていくべきなのかという対応も変わってきますので、先天色覚異常、後天色覚異常、いずれの場合でも、眼科医師に相談してアドバイスを受けることが重要です。

東京女子医科大学病院 中村 かおる 先生

こちらの記事の監修医師

東京女子医科大学病院

中村 かおる 先生

1983年東京女子医科大学卒業。所沢中央病院、三楽病院にて眼科の外来を担当。専門は色覚。1998年から東京女子医科大学病院眼科で色覚の外来を担当している。