
こちらの記事の監修医師
習志野第一病院
耳鼻咽喉科部長 林崎 勝武 先生
がいしょうせいこまくせんこう外傷性鼓膜穿孔
最終更新日:2022/01/04
概要
外からのさまざまな刺激によって鼓膜が破れてしまった状態のことをいう。鼓膜に穴が開くと耳に突然痛みが生じ、時には出血することや難聴、耳鳴りが起こることもある。通常、鼓膜の穴は自然にふさがるが、手術による修復が必要となることもある。耳掃除中に子どもがぶつかってきたといった事故や、飛行機に乗ったときやスキューバダイビングで周囲の気圧が急激に変化したことなどが原因で起こる。そのほか花火などでのやけどや爆発、ボールがあたるなど強い力が加わったとき、また、低い位置にある樹木の枝や昆虫などの異物が耳に入り込むことで起こる場合もある。
原因
鼓膜が破れる原因としては、直接異物があたって破れる場合、外耳道気圧の急激な変化により破れる場合、頭部の外傷で側頭骨の骨折に伴い破れる場合がある。異物が当たって破れるケースとしては、耳掃除中に子どもがぶつかってくる、転倒する、親が子どもの耳掃除をする際に嫌がって暴れる、などといった耳掃除中の事故が多い。屋外では、低い位置にある樹木の枝などが偶然耳の中に入ってしまうということもあり得る。異物が鼓膜を貫通してしまうと、鼓膜と内耳をつなぐ耳小骨の連結を脱臼させたり、耳小骨を折ったりする危険性もある。一方、外耳道気圧の急激な変化によるケースとしては、飛行機に乗ったときやスキューバダイビングの際の周囲気圧の急激な変化や、ボールが耳にあたったり、けんかなどで耳の付近を殴られて鼓膜に強い圧が加わったりしたときなどが挙げられる。
症状
鼓膜に穴が開くと、その瞬間に激しい耳の痛みを覚える。そして出血、耳鳴りや難聴といった症状が起こり、耳がふさがっているような感覚に陥ることもある。鼓膜の奥にある内耳(音を感じる器官や平衡感覚をつかさどる器官がある領域)まで傷ついてしまうと、重度の難聴や回転性めまい(動いたり回転したりしているような感覚のめまい)を伴い、平衡感覚を失ってしまうこともある。このような状態になると10日から2週間ほどの絶対安静が求められる。また、水や異物が中耳に入ったことにより感染が起きてしまうと膿が出てくる。そうなると鼓膜が再生しにくくなることもあるため、感染の予防はとても重要である。また、まったく聞こえない場合や激しいめまいが続いている場合などには外リンパ瘻の可能性があり、早期の手術が必要である。
検査・診断
専用の器具を使って耳の中の状態を確かめる耳鏡(じきょう)検査を行い、鼓膜が破れているかどうかを調べる。鼓膜の穴が小さい場合には耳鏡検査では確認できないため、顕微鏡による精密な検査が必要となる。また難聴などを併発していることもあるため、聴力検査を行うこともある。一般的には鼓膜に開いた穴が3分の1程度で、かつ感染症を起こしていなければ自然にふさがるが、2ヵ月以上たっても改善が見られない場合や耳小骨の損傷が疑われる場合には手術が必要になる。鼓膜形成手術のみなら日帰り手術が可能な場合もある。
治療
鼓膜は再生力が高いため、鼓膜の穴が小さく感染症がなければ、耳の中を乾燥した清潔な状態に保って自然にふさがるのを待つ。この場合、感染予防のため入浴や水泳などで耳に水が入らないよう注意する必要がある。一方、感染症を引き起こしている場合、またはダイビングが原因で起こった鼓膜穿孔のように感染症が疑われる場合には、抗菌薬の服用や点耳薬による治療が必要になる。通常、穴は1~2ヵ月ほどでふさがるが、途中経過をみて穴が小さくなっていないようなら、鼓膜の再生を促す治療を行う。中耳炎を起こして耳垂れが続き、自然に穴がふさがらない場合、2ヵ月以上たっても改善が見られない場合、あるいは耳小骨の損傷が疑われる場合は手術が必要となる。また、外リンパ液が内耳から中耳へ漏れることにより内耳の機能に障害が起こる外リンパ瘻によってまったく聞こえなくなっている場合、あるいは激しいめまいが続いている場合には、早期に手術による外リンパ瘻閉鎖が必要である。
予防/治療後の注意
耳掃除の際の事故による外傷性鼓膜穿孔は、子どもの手の届くところに耳かきを置かないようにすることや、嫌がる子どもに無理やり耳掃除をしないこと、また自分で耳掃除をするときには人のいない場所でするなどの注意をすることで予防できる。また、飛行機に乗ったときやスキューバダイビングなどの際の周囲気圧の急激な変化に伴う外傷性鼓膜穿孔の予防には、耳栓が効果的である。耳の付近を平手打ちされたことにより起こることも少なくないため、学校や家庭において体罰を行わないことも予防につながる。

こちらの記事の監修医師
耳鼻咽喉科部長 林崎 勝武 先生
1969年千葉大学医学部卒。千葉労災病院、旭川医科大学医学部附属病院、千葉大学講師、千葉県がんセンター頭脛科部長を経て現職。頭頸部がん、唾液腺疾患が専門。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。
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