
こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター 大森病院
瓜田 純久 病院長
かんぴろばくたーちょうえんカンピロバクター腸炎
最終更新日:2021/11/25
概要
一般的に家畜や野鳥、野生動物の消化管に存在しているカンピロバクター属の細菌が、食品や水などから人の消化管に感染し、下痢などを引き起こす病気。特に鶏の保菌率が高く、市販されている鶏肉が汚染されている確率はかなり高いといわれている。ほかの細菌と比べて少ない菌量の摂取で感染することが特徴である。飲食店などでの生肉の摂取による感染のほか、キャンプ場などでの野外活動で生焼けの鶏肉などを摂取することにより感染するケースも多い。ほかの細菌による腸炎の発生がピークを迎える夏期(7~9月)よりやや早い5~7月にピークを迎え、冬期にも発生している。
原因
牛、羊、豚、鶏などの家畜や野鳥、野生動物の消化管に存在しているカンピロバクター属の細菌が、その排泄物で汚染された食品や水などを介して人の消化管に感染する。鶏肉などの肉類はカンピロバクター腸炎の主な原因になっており、生や加熱不足で食べることにより少量でも感染する。鶏刺し、レバー刺しなどの生肉の摂取のほか、バーベキューで生焼けの鶏肉などを摂取することにより感染するケースも多い。この菌は乾燥に弱く、通常の加熱調理で死滅するが、低温には強いため、冷蔵庫の過信は禁物である。調理前の手洗いが不十分であったり、調理器具の洗浄、乾燥が不十分であったりすると感染が広がりやすい。また消毒が不十分な井戸水などから感染する場合や、感染した人や動物からの接触感染もある。
症状
細菌と接触した2~5日後に症状が出始め、約1週間続く。下痢、腹痛のほか吐き気や嘔吐、発熱、頭痛、悪寒、倦怠感が起こる場合もある。下痢はほぼ100%の患者に見られ、血便が見られることもある。重症化すると脱水症状に陥る。発熱は約90%の患者に見られ、38~40度程度。腹痛も約90%に認められる。多くの場合は数日で症状が治まるが、子どもや高齢者、抵抗力が低下している人は重症化する可能性が高い。まれに敗血症や髄膜炎などの合併症を起こすことがある。また近年、感染後約10日を経てギラン・バレー症候群が発症するケースがまれにあることが知られてきた。ギラン・バレー症候群は両手足に力が入らなくなり、急速にまひが全身に広がる。重症になると呼吸困難に陥ることもある神経疾患である。
検査・診断
問診で数日前からの食事の内容や生活の状況、海外渡航歴などのほか、発症してから受診時までの症状の推移について詳しく話を聞いた上で、便の肉眼観察、グラム染色をして顕微鏡による観察を行う。また、病原体診断のために便の細菌培養を行う。そのほか、血液検査で腸内の炎症の程度を確認したり、超音波検査で腸管のむくみがみられる部位やその程度を判断したりすることもある。検査の結果、便中にいるカンピロバクター属細菌が確認できれば診断を確定できる。
治療
ほとんどの場合、特に治療をしなくても1週間以内に治るため、対症療法が基本。経口補水液やスポーツドリンクなどにより、水分補給、塩分補給をこまめに行い、症状が安定するまで食事は極力控えめにする。また、食事を口にする場合は、おかゆなどの消化の良い食べ物を中心に少しずつ摂取するとよい。脱水の程度によっては、点滴による治療が必要になる場合もある。また、自己判断で下痢止め薬を使用すると、細菌を体外に排出できなくなる可能性があるため避けた方がよい。医療機関で診察を受けると、腸内環境の改善のため整腸剤を処方されるほか、高熱、出血を伴った下痢、重度の下痢がみられる場合や症状が悪化している場合には抗菌薬を用いた治療が行われることもある。
予防/治療後の注意
調理の前に手をよく洗うこと、調理器具を清潔に保つとともに水分を残さないよう十分乾燥させることが重要である。また、生肉の調理後は十分に手洗いをしてからほかの食材に触れる、生肉の調理に使う調理器具とそのほかの調理に使う調理器具は別にするなどの工夫により、ほかの食材に細菌が付着するのを防ぐことができる。調理においては、肉の中までしっかり加熱し細菌を死滅させることが重要。また、鶏刺し、レバー刺しなどの生肉料理の食事を避けることで感染リスクを軽減できる。ペットとの接触による感染を防止するためには、ペットの衛生管理も重要である。

こちらの記事の監修医師
瓜田 純久 病院長
1985年、東邦大学医学部卒業。関東労災病院消化器科を経て、地元青森県で瓜田医院を開業。東邦大学医療センター大森病院総合診療・救急医学講座教授、院長補佐、副院長などを経て2018年より現職。専攻は内科学、総合診療医学、機能性消化器疾患、内視鏡医学、超音波医学、栄養代謝など。
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