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東京都立小児総合医療センター 外科医長 下高原 昭廣 先生

こちらの記事の監修医師
東京都立小児総合医療センター
外科医長 下高原 昭廣 先生

ろうときょう 漏斗胸

概要

前胸部がへこんでしまうことを「漏斗胸」といい、胸が変形する病気の中で最も多いものです。赤ちゃんから大人まで幅広い年齢層にみられますが、主に診断される時期は、乳幼児期(赤ちゃんから小学校入学前)と小・中学生で身長が急速に伸びる時期です。胸の真ん中がへこんだり、左右どちらかが深くへこんだりと、へこむ場所と程度には個人差があります。胸痛や疲れやすさなどを認めたり、精神的なストレスになったりすることも。男児に多い病気で、兄弟や親子で発症することもあります。なお、これとは逆に前胸部が前に突出するものを「鳩胸」とよびます。

原因

漏斗胸を引き起こす原因は正確にはわかっていません。肋骨や肋軟骨が長くなり過ぎてしまう、肋軟骨の形成異常、胸骨に十分な強度がないなどさまざまな説があります。心臓・肺・横隔膜の手術が影響して生じたと考えられるものや、空気の通り道(咽頭、喉頭、気管、気管支)が狭くなってしまう病気が関与しているもの、マルファン症候群などの結合組織疾患とよばれる病気に伴うものなどもあります。

症状

へこみの位置(胸の真ん中、左右のどちらか片方)、大きさ(胸の一部のみ、胸全体)、深さ(浅い、深い)は個人差が大きいですが、中学生以上の年齢になると片側に寄った非対称的なへこみの割合が増えてきます。乳幼児期にみられる他の症状としては、喘息のように大きな呼吸の音、繰り返す肺炎気管支炎などが挙げられます。小学生以降になると、胸痛や動悸を自覚したり、運動時の持久力がなかったりという症状が目立つようになり、胸の形をコンプレックスに感じて内向的になってしまうこともあります。本人や家族に自覚がなく、学校健診で指摘されて医療機関を受診することもあります。

検査・診断

胸部エックス線検査やCT検査などで胸部の形状を確認します。心臓の機能・形態を調べるために、心電図や心臓の超音波検査を行います。小学生や中学生であれば呼吸機能の低下があるかどうかを調べることもあります。こういった検査でへこみの程度や圧迫された心臓・肺の状態を評価し、精神的にどの程度の影響を受けているかどうかも踏まえて、手術等の治療を行うかどうか検討します。

治療

治療は主に手術で、大きく分けて2つの方法があります。1つは現在多くの施設で行われるナス法と呼ばれる手術です。胸の横を切って金属プレートを挿入することでへこみを矯正し、2~3年後に金属プレートを取り除く手術を行います。もう1つは胸の真ん中を切って肋軟骨の一部を切り取る手術です。この他、特別な吸盤を胸に張り付けてへこみを吸引することで矯正する治療もあります。乳幼児期には治療を行わず経過観察にとどめることがほとんどです。乳児期は喉頭や気管といった気道がやわらかいために胸がへこみやすいものの、成長とともに気道が丈夫になって胸がへこみにくくなることがあるのと、乳幼児期に手術をしても思春期に再発することがあるためです。小学生以降は少しずつへこみの深さや大きさが変化していくことがあり、特に思春期に身長の伸びが著しくなると胸のへこみも急激に進行するということがしばしばあります。高校生や成人になってくると、骨格が硬くなりいずれの治療法でも治しにくくなってくるので、本人・家族が希望していれば小学校中・高学年から中学生の間に手術を行うほうが良いとされています。

予防/治療後の注意

確立された予防法はありません。扁桃腺が腫れていていびきが大きい場合には、これを手術することでへこみにくくなる可能性があります。身長が伸びている間は胸の形が変わり得るので、術後も再発に注意が必要です。

東京都立小児総合医療センター 外科医長 下高原 昭廣 先生

こちらの記事の監修医師

東京都立小児総合医療センター

外科医長 下高原 昭廣 先生

1998年熊本大学卒業。麻生飯塚病院で初期臨床研修・一般外科研修修了。2001年より順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科、ドイツ・ハノーバー医科大学小児外科で小児外科の臨床・研究に従事。2011年からは国立病院機構埼玉病院、同東埼玉病院にて呼吸器外科診療の研鑽を積む。2017年より東京都立小児総合医療センターの外科にて勤務。専門分野は小児外科、小児呼吸器外科。