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こちらの記事の監修医師
社会医療法人 芳和会 神経内科リハビリテーション協立クリニック
院長 高岡 滋 先生

みなまたびょう水俣病

概要

水俣病は「メチル水銀」に汚染された不知火海の魚介類を人が食べることで発生した公害病です。排水は1932~1968年の間に行われ、その後の汚染は減りました。1956年に患者の発生が確認され、1959年に原因物質がメチル水銀とわかり、1968年、正式にメチル水銀が原因と政府が認めました。水俣病は風邪のようなウイルスや細菌による感染症ではないため、空気感染や接触感染の危険性はありません。メチル水銀によって主に脳や神経が侵され、手足のしびれ、こむら返り、つまずきやすさ、手の震えなどの障害が起こります。現在、不知火海の汚染は軽減しており、今後新たにこの海域の魚を食べることで、重症水俣病が新たに発症する可能性はないと思われますが、低濃度水銀による影響の懸念は今なお残されています。

原因

チッソ水俣工場の排水に含まれていたメチル水銀が海に住む魚や貝などの体内に入り、それを人が摂取することで発生します。水銀には「無機水銀」と「有機水銀」がありますが、水俣病の原因となったメチル水銀は有機水銀に属し、非常に少量でも人体に影響を与えます。メチル水銀は胃腸から吸収され、血液を流れ、全身の臓器に運ばれます。特に、脳にある「血液脳関門」という毒性物質などに対する障壁をくぐり抜けて脳に蓄積され、障害を引き起こします。妊婦が汚染された魚を食べた結果、胎内にいる赤ちゃんの脳にメチル水銀が入り、水俣病になった赤ちゃんは「胎児性水俣病」として知られています。

症状

メチル水銀が脳に入ることによって、さまざまな神経症状が単独あるいは組み合わさって起こります。軽症では、こむら返りや手足のしびれがあり、症状が進むと歩行時にふらついたり、つまずきやすくなったりします。さらに重症になると、言葉が話しづらくなったり、匂いや味が鈍くなったり、周りが見えにくくなったりします。また、疲れやすい、気分が落ち込むなどの一般的な症状も多くなります。摂取したメチル水銀の量や期間などによって、症状の程度には個人差がありますが、昭和20~40年代の汚染のひどい時期に不知火海で捕れた魚介類を日常的に摂取した人は、症状が出やすい傾向にあります。大量のメチル水銀を一度に脳が取り込むと、脳の神経細胞が短期間に多数消失するために重篤な症状が表れますが、低濃度のメチル水銀を長期間にわたり取り込んだ場合は、神経細胞の消失の仕方が「間引き脱落」と呼ばれる状況となるため、症状はゆっくりと進みます。

検査・診断

水俣病は「病歴」と「診察」によって診断していきます。病歴としては、これまでにメチル水銀汚染地域に居住し、そこで魚介類を摂取した既往があるか否かが重要な判断基準になります。診察は、一般的な神経診察を行います。特に四肢末梢優位(手足の末端付近に強く症状が表れ、胴体部位に近づくにつれ症状が弱くなる状態)の感覚障害や、全身性の感覚障害は重要です。運動失調や視野狭窄などの他の症状の合併の程度や、二点識別覚などの感覚を数値化する検査などによって、重症度を推定することができます。

治療

水俣病の治療には、初期の治療法と、症状が安定して慢性期に入ってからの治療法があります。まずは、メチル水銀濃度の高い魚介類(汚染地域の魚や大型魚)のさらなる摂取を控えます。急性に発症した場合は、水銀と結合して尿中に排泄させる「キレート剤」が初期の治療として用いられましたが、現在は使用されることはありません。慢性期での治療は、細胞内の活性酸素の低下などを目的としたビタミンEや、神経系への良い作用が期待されるビタミンB12などが使用されます。こむら返りには、漢方薬の芍薬甘草湯や痙縮剤などを用いた対症療法を行います。間引き脱落機序による神経疾患であるため、日常生活でのリハビリテーションが有効ですが、日常生活でのつまずきやすさなどは注意をしていても避けられないことがあり、手すり設置や床の段差解消など生活環境の改善も必要です。また、機能の維持や疼痛の緩和を目的とした理学療法、作業療法なども有効です。

予防/治療後の注意

現時点で、不知火海産の魚介類を新たに食べ始めて、激しい症状を示す水俣病を発症する可能性はほとんどないと思われますが、継続的調査がなされておらず、真の安全性は確認されていません。定期的な魚介類摂取による症状の出現や、自覚しにくい程度の運動・感覚・知的あるいは精神的能力の低下や潜在的影響がある可能性は残されています。したがって、過去の汚染の影響が残っている地域で捕れた魚や、汚染地域でなくともメチル水銀濃度が高いとされるマグロやカジキなどの大型魚の摂取については、これらのことを考慮しなければなりません。とりわけ胎児影響のリスクは高く、特に妊婦や妊娠の可能性のある女性は、過去の汚染地域で捕れた魚や前述の大型魚やクジラなどの摂取について、国内外で避けるように指導されています。

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こちらの記事の監修医師

社会医療法人 芳和会 神経内科リハビリテーション協立クリニック

院長 高岡 滋 先生

1985年山口大学医学部卒業、1986年水俣協立病院、1991~1993年順天堂医院、1993年水俣協立病院などの勤務を経て、2002年より現職(神経内科リハビリテーション協立クリニック院長)。専門は、脳神経内科、精神科、一般内科、リハビリテーション科。