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井上眼科成田クリニック 井上 順治 院長

こちらの記事の監修医師
井上眼科成田クリニック
井上 順治 院長

みじゅくじもうまくしょう未熟児網膜症

概要

未熟児の網膜の血管が異常に増殖すること。早産の影響で在胎週数が短く出生体重が少ないほど発症率が高く、重症になりやすい。在胎週数34週未満、出生体重1800g未満の未熟児に起こりやすく、発症率は出生体重1500g未満で約60%、在胎28週未満ではほぼ100%に達する。比較的進行の遅いⅠ型と、進行が速いⅡ型(重症未熟児網膜症)に分類される。I型は自然に治ることも多いので、経過を見ながら治療の必要性を判断する。II型は急速に網膜剥離へと進行する可能性が高く、早急な治療が必要となる。

原因

網膜の血管は在胎14週頃から成長を始め、36週頃に完成する。予定より早く生まれた新生児は、網膜血管が未完成で血液が不足しているため、新しい血管を作ろうとして血管内皮増殖因子と呼ばれる物質が過剰に生産される。その物質が新生血管と呼ばれる病的な組織の発生を誘導し、増殖した組織によって網膜が引っ張られ、網膜剥離を引き起こす。近年では周産期医療の進歩に伴い、体重が極端に少ない未熟児でも生存できるようになったが、その一方で重症な未熟児網膜症も増加。現在では小児の失明原因として最も多く、全体の40%に達している。

症状

通常は生後数週で発症するが、外見に症状が現れないため医師の診察と検査なしで症状に気づくことはできない。徐々に進行するⅠ型は、進行の程度によって5つの病期に分類される。第1期には網膜内に新生血管が作られ、第2期には網膜血管の先端部と血管の伸びていない部分の間に境界線と呼ばれる組織が形成される。第3期に入ると境界線が増殖して硝子体内部に伸びていく。第4期には増殖組織が網膜を引っ張って部分的な網膜剥離を引き起こし、第5期には全網膜剥離へと進行する。一方で在胎週数が少ない超低出生体重の新生児に起こりやすいII型は急速に網膜剥離へと進行し、失明する危険が高い。網膜剥離を起こすのは生後2か月以降で、生後3〜4か月頃が最も多い。網膜症が進行している時期は活動期、進行が停止してからの時期は瘢痕期と呼ばれる。

検査・診断

出生後2〜3週頃から定期的な眼底検査を行ない、発症の有無や進行の程度を観察する。現在は乳幼児用の接触型広角眼底カメラが開発されたことで、従来よりも簡便に眼底撮影が可能になった。蛍光眼底造影検査も、未熟児網膜症の眼底所見を的確に捉えて病型と病期を診断し、治療の必要性と開始時期を判断するために行うことがある。検査の結果を踏まえ、眼科医師による診断が行なわれる。

治療

I型は自然に治ることも多いので、第2期までは定期的な検査を続けながら経過観察を行なう。自然に治る傾向のない第3期以降の網膜症に対しては治療が検討される。II型は進行が速いため、診断がつき次第治療を開始する。治療の第一選択はレーザーによる光凝固術で、血管が伸びていない部分の網膜にレーザーをあて、血管内皮増殖因子の放出を抑える。治療は1度だけでなく経過を見て複数回行なうこともある。それでも症状が進み網膜剥離が生じた場合は、強膜バックリング術(強膜輪状締結術)といって眼球を外側から当て物で圧迫し網膜を戻す手術や、眼球内に精巧な手術器具を差込んで網膜を引っ張っている新生血管などの組織を取り除く硝子体手術を行う。

予防/治療後の注意

発症しても自然に治った場合は視力への影響は小さいが、脳の疾患を持っている場合は、視力の発達が妨げられることがあるため、定期的に眼科検診を受けることが望ましい。発症後治療を行なった場合は、症状の進行程度によって視力に影響が出ることが多い。ものを見る中心である黄斑部に影響が及んでいなければ視力は良好なことが多いが、黄斑部まで病変が及んでいたり、網膜剥離を起こしていたりする場合は、程度に応じて視力に障害をきたす。また、治療後も白内障緑内障、硝子体出血、網膜剥離といった合併症を起こす可能性があるため、長期に渡って慎重な経過観察が必要になる。

井上眼科成田クリニック 井上 順治 院長

こちらの記事の監修医師

井上眼科成田クリニック

井上 順治 院長

2001年順天堂大学医学部卒業後、同大学医学部附属順天堂医院眼科入局。2003年順天堂大学医学部附属浦安病院眼科勤務。同病院で約10年間、網膜硝子体を専門に手術を行う。2005年からは2年間ハーバード大学スケペンス眼研究所に留学。2012年から西葛西・井上眼科病院勤務。副院長を経て2016年院長に就任。