こちらの記事の監修医師
国家公務員共済組合連合会 九段坂病院
皮膚科部長 谷口 裕子 先生
はくせん白癬
最終更新日:2022/01/05
概要
白癬とは白癬菌というカビによって生じる感染症で、足にできる白癬「足白癬」は俗称「水虫」と呼ばれる。日本では10種類ほどの白癬菌が原因となるが、水虫を起こすのは主に2種類である。白癬菌の栄養源はケラチンというタンパク質の一種。そのため白癬菌はケラチンが多く存在する皮膚の角質層や毛、爪に感染する。発症する部位によって呼び名が異なり、足白癬(水虫)、爪白癬(爪水虫)、股部白癬(いんきんたむし)、体部白癬(ぜにたむし)、頭部白癬(しらくも)という。日本では水虫は5人に1人、爪水虫は10人に1人が罹患しているといわれる。
原因
白癬菌が皮膚に付着し、湿度や温度の条件がそろうと発症する。足に付着した白癬菌は約24時間で角質層に侵入する。白癬菌は靴の中や銭湯の足拭きマットなど温かく湿った環境で繁殖しやすく、水虫の人が使ったマット、スリッパ、床、畳などに素足で触れることで感染する。足以外の白癬は、本人の足白癬からうつることが多い。一方、近年レスリングや柔道などの格闘技選手の間で流行している特殊な白癬は、頭や体を直接接触することで感染する。このほか、動物特有の白癬菌があり、ペットの犬や猫を抱いたりすることで腕などに感染することもある。
症状
足白癬は、足の裏や指の間に小さな水疱ができたり、皮がむけたりする「小水疱型」、指の間が白くふやける「趾間型」、足の裏やかかとがガサガサになる「角質増殖型」がある。水虫は痒いというイメージがあるが、足白癬患者の半数以上は痒みがないといわれており、痒みは診断の根拠にはならない。爪白癬は爪が白く厚くなったり、巻き爪のように変形することがある。股部白癬や体部白癬は円形〜楕円形、あるいは環状の赤茶色の発疹ができ、縁が盛り上がったり、皮がむけたりする。頭部白癬は円形にフケがついた状態になり、毛が抜けたり、毛穴が黒く点々と見えることがある。頭部白癬に間違ってステロイド外用薬を使用すると、皮膚が赤く盛り上がり、膿や痛みを伴う「ケルスス禿瘡(とくそう)」というおできのような状態になることがある。
検査・診断
患部の角質、爪、毛を取り、顕微鏡で観察する検査(直接顕微鏡検査)によって白癬菌の有無を調べる。特殊な菌が疑われる場合は培養検査を行う。
治療
主に抗真菌作用のある外用薬を1日1回塗布する。爪白癬、角質増殖型の足白癬、頭部白癬では内服薬を用いる場合がある。足白癬の場合、症状のある部位だけではなく、すべての指の間、足の裏全体に外用薬を塗布し、最低1ヵ月、理想的には3ヵ月程度継続する。
予防/治療後の注意
白癬菌が皮膚に付着してから侵入するまで24時間(ふやけたり、傷がある場合は12時間)かかると報告されており、通常24時間以内に足をきれいに洗い流せば感染を防ぐことができる。靴は通気性の良いものを選び、乾燥させるために毎日同じ靴を履かないようにする。家族に水虫の人がいる場合、バスマットだけでなく、床や畳にも菌がばらまかれる。家族にうつさないためには直ちに皮膚科を受診し治療開始することが肝心である。治療開始後数週間で菌はばらまかれなくなる。それまでの間はバスマットやスリッパを別にし、掃除をこまめにする。
こちらの記事の監修医師
皮膚科部長 谷口 裕子 先生
1990年東京医科歯科大学医学部卒業。アトピー性皮膚炎を専門に経験を積み、医真菌学の研究も行う。九段坂病院の皮膚科顧問を務める大滝倫子先生のもと、20年にわたって動物性皮膚疾患の治療について学び、多くの診療に携わる。日本皮膚科学会皮膚科専門医。
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