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東邦大学医療センター大橋病院 婦人科 田中 京子 先生

こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター大橋病院 婦人科
田中 京子 先生

ぜんちたいばん前置胎盤

概要

胎盤が正常よりも低い位置(腟がある側)にあるために、子宮の出口(内子宮口)を一部、もしくはすべて覆ってしまっている状態をいう。子宮のどの位置に胎盤があるかによって3つに分類され、胎盤が内子宮口を完全に覆っているものを「全前置胎盤」、一部分のみ重なっているものを「部分前置胎盤」、胎盤の端が内子宮口の出口に達しているものを「辺縁前置胎盤」と呼ぶ。経膣分娩では、胎児、胎盤の順に出てくるのが通常だが、前置胎盤では胎盤のほうが先に出てしまう。すると大量出血を起こしたり胎児に酸素が届けられなくなくなったりして母子ともに危険が及ぶため、「全前置胎盤」ではほぼ100%の確率で帝王切開での出産となる。

原因

前置胎盤が起こるメカニズムはわかっていない。しかし、リスクを高める要因は明らかになってきており、高齢での妊娠、多産、多胎、帝王切開の経験、過去に妊娠中絶手術、子宮筋腫の手術などを受けたことがあるといった場合は注意が必要といわれている。また喫煙が原因になるという指摘もある。近年は晩婚化の影響から高齢出産が増え、不妊治療を受ける人や帝王切開での出産となる人も多くなっている。それに伴い、前置胎盤も増えているといわれる。中でも帝王切開は、数を重ねるほどリスクが高くなることが知られている。ちなみに前置胎盤の場合、胎盤が子宮にくっついて剥がれなくなる「癒着胎盤」を起こす可能性が高くなり、これを「前置癒着胎盤」と呼んでいる。胎児が生まれた後、胎盤が自然に剥がれて膣から外へ出てくることがなく大出血を起こす危険があり、出産時に子宮ごと取り除くことある。

症状

特に自覚症状はない。ただ妊娠後期に、腹痛がないにもかかわらず性器からの出血が見られる。これは子宮が大きくなって胎盤が剥がれることで起こるもので、パターンとしては少量の出血が数回続くことが多い。しかし、最初から大量の出血が見られることもあり、基本的には出血が見られた時点で入院となる。子宮収縮によっておなかが張ると出血しやすくなるため、妊娠28週以降に起こることが多いが、それよりも少ない週数でも注意が必要。妊婦健診で前置胎盤である可能性を指摘された上で性器から出血があった場合には、特に腹痛がなくても速やかに医師の診察を受ける必要がある。

検査・診断

経腟超音波(エコー)検査または腹部超音波検査を行い、胎盤の位置や血流を確認する。診断する時期は一般的に妊娠30週以降。この理由は、妊娠の早い時期で前置胎盤が確認されても、31週頃までは子宮が大きくなるのにしたがって胎盤が正常な位置に動くことがあるためで、妊娠32週の段階で前置胎盤が見られれば診断確定と考える。また前置癒着胎盤が疑われる場合には、MRI検査を行うこともある。そして診断が確定したら、帝王切開の日を決める。出産予定日に近いと手術前に陣痛が来てしまう可能性があるほか、おなかの張りが強く出血の危険も高くなるため、早めの日付に設定することが多い。さらに、輸血のために自分の血液を保存しておく「自己血貯血」により、分娩時の大量出血に備えることもある。

治療

前置胎盤そのものを治す、つまり胎盤を正常な位置に戻すことはできない。そのため、できる限り出血のリスクを下げ、無事に出産を終えることをめざす。基本的には安静にして過ごし、無理な運動や性交渉は控える。出血が見られた場合はそのまま入院し、おなかの張りを抑えるために子宮収縮抑制剤を投与する。貧血が見られる場合は、服薬や点滴で鉄剤を投与して治しておく。もし予定していた帝王切開の日よりも早く出血してしまった場合は、出血の状況や胎児の成長の具合を確認した上で、安全を考慮して緊急帝王切開を行うこともある。また、前置癒着胎盤の場合は手術時の出血量が多くなるため、あらかじめ大量出血に備えた処置を施しておくことが重要となる。具体的な方法としては動脈内にバルーンを入れる方法があり、いざというときに膨らませて子宮へ流れる血液をせき止めることで、出血量を抑える。

東邦大学医療センター大橋病院 婦人科 田中 京子 先生

こちらの記事の監修医師

東邦大学医療センター大橋病院 婦人科

田中 京子 先生

慶応義塾大学卒業後、同大学病院、国立病院機構埼玉病院産婦人科医長を経て、東邦大学医療センター大橋病院の准教授へ就任。日本産婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医の資格を持つ。