
こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター大橋病院 婦人科
田中 京子 先生
じょういたいばんそうきはくり常位胎盤早期剥離
最終更新日:2022/01/06
概要
本来ならば、分娩時に子宮の壁から剥がれて外に排出されるべき胎盤が、妊娠中や分娩前に剥がれてしまうこと。胎児はへその緒で胎盤とつながり、母体から栄養や酸素を受け取ったり、老廃物や二酸化炭素を外に出したりしているため、常位胎盤早期剝離によって急激に状態が悪くなることに。場合によっては、胎児が脳性麻痺や死に至るケースもある。さらに、大量出血を引き起こし、母体が死亡することも。発生頻度はあまり多くはないが、母体と胎児ともに重篤な障害をもたらす危険性があるため、緊急の対応が必要となる病気。なお、数ミリの分離から完全な剥離まで、人によって症状は異なる。
原因
はっきりとした原因を特定することはできていないが、さまざまなリスクとの関連性が疑われている。例えば、過去に常位胎盤早期剝離を起こした経験のある人や高齢出産の人は、注意が必要。妊娠中に高血圧になってしまう妊娠高血圧症候群や慢性高血圧症をはじめ、胎児を包む膜に炎症が起きている絨毛膜羊膜炎、本陣痛が始まる前に破水してしまう前期破水なども、常位胎盤早期剥離のリスクを高めるといわれている。また、子宮筋腫や切迫早産、羊水過多、喫煙などにも危険性があるほか、転倒したり、お腹をぶつけたりなど、お腹への外傷も注意しなければいけない。
症状
胎盤が剥がれている面積などにより、症状は異なる。軽症の場合、自覚症状がほとんどないことも少なくない。中には、少量の不正出血が続いたり、軽い腹痛やお腹の張りがあったり、いつもより胎動が少なかったりと、切迫早産と似たような症状が出てくることも。一方、重症の場合、激しい腹痛や大量出血が見られ、お腹が板のように硬くなってしまうのが特徴。出血が激しい場合、血管に血栓が詰まってしまい、出血しやすくなる「播種性血管内凝固症候群(DIC)」を引き起こすこともある。胎動が減ったり、なくなったりと、胎児の障害・死亡のみならず、母体が命を落とす危険性もある。
検査・診断
まずは、問診・内診にて出血の有無などをチェック。超音波(エコー)検査では胎盤が剥がれている部分や面積などを確認していくほか、「胎盤が低い位置に付着し、子宮の出口(内子宮口)を覆っている状態(前置胎盤)ではないか」などを調べていく。また、胎児が酸欠状態に陥っている可能性もあることから、胎児の健康状態を把握するために、胎児心拍数モニターにて心拍数に異常がないかも確認。子宮の収縮の具合との関係性なども観察していく。さらに、母体の状態を確認するために、血圧を測ったり、血液検査を行ったりすることもある。
治療
胎児・母体ともに非常に危険な状態に陥るため、できるだけ早くに分娩を行わなければいけない。特に、胎児が死亡している場合などは、早期の分娩が不可欠に。また、短時間で経腟分娩ができそうな場合はその方法を採用するが、基本的には緊急の帝王切開となることがほとんど。大量出血による出血性ショックや播種性血管内凝固症候群(DIC)など重篤な状態であれば、分娩と併せて、それらの治療も進めていく。必要に応じて、輸液や輸血を行うことも。分娩しても子宮からの出血が止まらない場合、救命目的で子宮を摘出しなければならないこともある。なお、妊娠週数が早くて、母体・胎児ともに異常が見られない場合、管理入院をしながら経過観察をしていくケースもある。
予防/治療後の注意
高齢や肥満、持病のある妊婦などがかかりやすい妊娠高血圧症候群は、常位胎盤早期剥離のリスクを高めてしまうため、要注意。妊娠中は体重と血圧の管理をしっかりと行っていくこと。また、常位胎盤早期剝離は進行が早く、母体にいつ自覚症状が出るかで処置内容が変わってきてしまうのが特徴。「胎動が弱くなった」、「少量の出血が続いている」、「いつもよりお腹が張っている」など気になることがあれば、健診以外であっても早めに診察を受けること。

こちらの記事の監修医師
田中 京子 先生
慶応義塾大学卒業後、同大学病院、国立病院機構埼玉病院産婦人科医長を経て、東邦大学医療センター大橋病院の准教授へ就任。日本産婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医の資格を持つ。
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