
こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター大橋病院 婦人科
田中 京子 先生
しきゅうふっこふぜん子宮復古不全
最終更新日:2021/12/24
概要
妊娠・出産によって、大きくなった子宮が元に戻らなくなってしまうこと。通常、産褥期(出産後の回復期)には、子宮は元に戻るために収縮し始め、約6週間で妊娠前の大きさになる。しかし、子宮復古不全の場合は、さまざまな原因によって子宮の収縮状態が悪くなり、子宮の大きさや硬さなどが元の状態に戻らない。これにより、出血や悪露が長引くなど、母体の回復が遅れてしまうほか、お腹の痛みがあったり、新たな感染症の原因になったりと、負担が大きくなるケースもある。そのため、子宮の大きさや形を元に戻すための治療が不可欠となる。
原因
さまざまな原因により、子宮復古不全は引き起こされるのが特徴。例として、「本来ならば、分娩後に子宮から排出されるべき胎盤や卵膜の一部が子宮内に残存しているため、子宮の収縮を妨げていること」や「多胎分娩や羊水過多・巨大児分娩などにより、子宮が過剰に大きくなってしまったこと」、「分娩に時間がかかり過ぎたため、子宮が疲弊して働きが悪くなってしまったこと」、「子宮筋腫や感染症などの病気を患っていること」、「出産後、子宮を収縮させる作用を併せ持つ授乳を行っておらず、子宮への刺激が足りないこと」などが挙げられる。また、排尿や排便を我慢し過ぎることにより、膀胱や直腸に内容物が充満し、子宮の収縮を妨げてしまうケースもある。そのほか、難産や分娩時の大量出血、早産や帝王切開などが、子宮復古不全の原因となるといわれている。
症状
分娩後、正常よりも「子宮が大きく、やわらかい」「子宮底が高い」などといった特徴を持つ。また、分娩時に切れてしまった子宮内の血管は、子宮の収縮とともに塞がれていく。そのため、子宮の収縮状態が悪くなってしまうと、出産後の出血が止まりにくくなることに。この結果、自覚症状としては、長引く血性の悪露(産後に出るおりものが血液のような状態となったもの)や、ときに大量出血などが挙げられる。さらに、長引く悪露を放置すると産褥感染症を引き起こし、産褥熱という発熱や全身の症状悪化につながる可能性もあるため、注意が必要。
検査・診断
問診では、悪露の状態などをチェック。産後約4週間以上経っても、悪露の量が減らなかったり、多かったりする場合、子宮復古不全が疑われる。その場合、内診や触診、超音波(エコー)検査にて、子宮の大きさや硬さ、子宮底の高さ、子宮内に残っている悪露の量などを調べていく。また、超音波検査では、子宮内に胎盤や卵膜の一部が残り、子宮の収縮を妨げていないかなどの確認も行う。場合によっては、より詳しく状態を把握するために、MRI検査を行うことも。さらに、子宮復古不全に伴う産褥感染症が疑われる場合、全身の状態を診断するための血液検査や、細菌の培養検査なども行われる。
治療
まずは、子宮収縮剤を投与。これにより、子宮の収縮が促されるほか、子宮内にある胎盤や卵膜の一部などの残存物の排出にもつなげることができる。また、産褥感染症の危険がある場合など、必要に応じて、抗生剤の内服や点滴も行う。並行して、貧血の症状がある人には、鉄剤も投与していく。子宮収縮剤だけでは子宮内の残存物がすべて出し切れず、子宮が元に戻らない場合は、手術によって残存物を除去することに。しかし、産後1ヶ月以内は子宮がやわらかく、非常に傷つきやすい状態であることから、手術はなるべく避けるべき最終手段として考えられている。そのほか、排尿・排便を我慢することが子宮復古不全の原因の一つにもなるため、排尿・排便を促すための治療や、子宮の収縮にもつながる授乳をサポートするための母乳指導なども行い、治癒をめざしていく。
予防/治療後の注意
授乳は子宮の収縮を促すため、できるだけ産後の早いうちから授乳をスタートすること。また、排尿や排便を我慢しないことも、子宮復古不全の予防につながる。可能な限り睡眠を取って体を休め、十分な栄養を取ることも大切。また、医師の許可が出たら、無理をしない程度に早期に歩行を開始すること。

こちらの記事の監修医師
田中 京子 先生
慶応義塾大学卒業後、同大学病院、国立病院機構埼玉病院産婦人科医長を経て、東邦大学医療センター大橋病院の准教授へ就任。日本産婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医の資格を持つ。
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