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こちらの記事の監修医師
荏原病院
感染症内科 中村(内山)ふくみ先生

ちょうちふす/ぱらちふす腸チフス/パラチフス

概要

細菌の一種であるサルモネラ属のチフス菌、またはパラチフスA菌によって引き起こされる感染症。チフス菌の感染で起こるものを「腸チフス」、パラチフスA菌の感染で起こるものを「パラチフス」と呼ぶ。主に開発途上国を中心に、東南アジア、中南米、アフリカなど世界各地で発生し、流行を繰り返している。人間のみに感染し、患者や保菌者(病原体を体内に保有しているが感染症が発症していない人のこと)の便や尿で汚染された食品や水を摂取することで拡散する。日本国内でも昭和初期から戦後にかけて代表的な感染症の一つであったが、環境が整備され衛生面の進展に伴って患者数が減少。現在、国内の患者は海外での感染によって発症するが、渡航歴のない患者や食中毒事例が報告されており国内における保菌者からの感染もある。潜伏期間は2週間前後で、発熱、下痢または便秘、まれに腸出血を起こす。法律により保健所への届け出が義務づけられている。

原因

通常、細菌を含んだ水や食べ物を介して感染する。飲食によりチフス菌が摂取されると細菌が増殖し、血流に乗って広がっていく。潜伏期間内でも人へうつす可能性もあるため、排泄後の手洗いを怠った状態で他の人へ食べ物を用意したり提供したりすることで感染が拡大していくことも。衛生設備が整っておらず、安全な水の利用ができない発展途上地域を中心に発症のリスクが非常に高く、生命を脅かす感染症として問題となっている。

症状

2週間前後の潜伏期があり、体温が徐々に上昇し38℃以上の高熱が起こる。週ごとに症状が変わるケースが多く、1週目は熱が段階的に上がり最高39~40℃くらいにまでなる。2週目は約40℃の熱がずっと続き、体力消耗によって無気力表情になる「チフス性顔貌」になったり、咳や発疹、下痢または便秘を起こしたり、重症になると意識障害や難聴を起こしたりすることも。3週目は高熱と微熱を繰り返し、腸出血や腸穿孔(腸壁に穴が開くこと)が起きることもある。そして、4週目に解熱するといったように変化していく。重症になると合併症を引き起こし、死に至る可能性も否定できない。

検査・診断

問診で過去2ヵ月以内の発展途上国などへの海外渡航歴を調べた上で、血液や便、尿、胆汁、骨髄などを培養し、チフス菌、パラチフスA菌の有無を調べる細菌検査を行う。しかし、血液や便培養検査での菌検出率は低く、疑わしい症例の場合には、繰り返し培養検査を行うことも。侵襲を伴うが骨髄培養では比較的検出率が高い。またこれまでの感染リスクや数日間にわたって段階的に熱が上昇するような症状から感染を疑い、臨床診断を行うこともある。

治療

症状の有無にかかわらず、感染した人に対しては抗菌薬が使用される。以前は第一選択薬であったニューキノロン系抗菌薬に対して耐性を持つ菌が出現してきており、現在は第三世代セファロスポリンやアジスロマイシンなどが使用されている。流行地ではさまざまな耐性を持った菌が出てきていることから、投薬前の血液培養採取、検出菌の感受性確認が重要となる。適切な抗菌薬で治療を開始しても、しばらくは発熱が続くが3~5日後から徐々に解熱する。5日以内に解熱しない場合には他の抗菌薬での治療が必要。また、腸出血の危険があるため安静に過ごすことが大切。正しい治療を行わないと、生涯にわたって保菌者になる可能性があるため注意が必要となる。

予防/治療後の注意

腸チフス・パラチフスが流行している地域へ訪れた際には、生の野菜や常温で用意または保存された食品を食べないこと。また、氷や煮沸・塩素処理されていない飲料水は安全ではないと考えるべきであり口にしないこと。家畜などに触れた場合や排泄後はせっけんを使用し、よく手洗いをすること。流行地域への旅行者や、家族に保菌者がいる人、チフス菌を取り扱う技術者については、経口ワクチンや多糖体ワクチンの接種で予防することが推奨される。しかしワクチンは日本では未認可のため、輸入ワクチンを取り扱う医療機関での接種となる。

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こちらの記事の監修医師

荏原病院

感染症内科 中村(内山)ふくみ先生

1996年、宮崎医科大学卒業。宮崎医科大学寄生虫学教室、墨東病院感染症科、奈良県立医科大学病原体・感染防御医学/感染症センターにて基礎医学・臨床の両面から感染症に携わる。2016年4月より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本感染症学会感染症専門医の資格を持つ。